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恋のコール・アンド・レスポンス

わたしは初めて付き合った恋人と付き合い続けてそのまま結婚し、付き合い始めから18年後に離婚した。
その後はまるで、ブロイラーから平飼いの地鶏にチェンジしたかのように、逞しくて自由な独身生活を謳歌している。パートナーはいない。

数々の恋愛経験を持つ人がパレットの中に色とりどりの色を持っているのだとしたら、わたしのパレットはパカっと開けるとドーンと一色だけ乗っている感じである。潔いといえば潔い。まったくもって地味なものである。

パレットに色が集まらないのも無理はない。
わたしは試しに付き合ってみる、ということができない人間である。相手のことをそこそこ良く知ったうえで、そのまま一生一緒でもよさそう、と思って初めてよろしくお願いいたします、と三つ指ついちゃうタイプである。
古風である。電子決済全盛の現代において、お金で例えるなら”はじめ人間ギャートルズ”に出てくる石のお金くらい古風である。古い。そして実に重たい。ハンディじゃない。

なのに、だ。
ある日の女子会でわたしは、カラフルなパレットを持つ美しきシングルマザー ナナちゃん(仮)の恋愛相談に答え、ナナちゃんの大きな目をぱちくりさせ、一同を笑いの渦に巻き込み、「その話、もう一度して」と録音メモをONにした携帯をナナちゃんから差し出された。

その時のことを、話そうと思う。

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