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人生の讃歌を見た

幼稚園バス停で長女を迎えてからそのまま、近くの公園に行った。

そこのベンチには珍しい先客がいて、中3の男女。体操服と私服姿。

二人ともにこにこ、楽しそうに話している。

「いつメン」のママ友ちゃんや園児、小学生なども遊んでいる中で、異彩を放つ爽やかな二人の存在。いけないと思いつつ、チラチラ様子を見てしまうわたし。

二人の間には、明らかに親密な空気が流れていて、でもそれが艶っぽいのではなく、これでもか!というくらい、きらめいている。

お互いの事を見て、弾けそうな笑顔で会話している。
二人とも手足が細長く、本人の意思とは関係なく勝手にニョキニョキ伸びたんですってな感じ、余計なものが何ひとつ付いていない体はキュッと引き締まっていて、髪はさらさらで、肌は健康的に焼けていて、白い歯が覗いている。

相手のことがすきですきでたまらなくって、触りたくって、でもこんな状況で、どうしようもない感じ。
女の子の肩付近まで、男の子が後ろから手を伸ばしてみたり、互いの腕の形を触って確かめてみたり、腕相撲でじゃれあったり、どうにかこうにか触れ合って、溢れる気持ちを抑えている感じ。

はー。見てはいけない、見てはいけない。

心地よい初夏の風、瑞々しい青空、きらめく若者たち。

…無理っ!見たい!

子どもと遊ぶフリをしつつ、ちらちら盗み見てしまう、日焼け対策万全おばさん。

彼らはその後、鉄棒やランニングのマネをして遊んでいた。こうやってなんとなく時間を潰して、高ぶる気持ちを誤魔化しているような気がした。最後までずっと、キャッキャと笑っていた。

公園を出た直後、彼女が彼の手を引っ張り、走り出そうとした。彼は、そんな彼女を後ろから抱きしめた。満面の笑顔で。じゃれあいながら、歩いて行った。姿が見えなくなるまで、わたしは目を離せなかった。

どうしようもないんだなぁ!

わたしはもうたまらず、そこからずっと笑っていた。

いいもん見たなぁ。
好きでたまらんのだろうなぁ!

若い彼らは、全身で恋をしていた!魂を震わせ、そして燃やしていた!
人生の喜びに、満ち満ちていた!!

そんな姿がきらきらしていて、わたしはもう、胸が押しつぶされそうだった!まぶしい、まぶしい!かわいい!!

なんだろう多分、子ども達の運動会や部活の大会で、その勇姿に感動するような、パワーをもらうような…そんな気持ちに近い気がする。ときめきと、元気をもらった。異世界を見た気分。

人間って、素晴らしいなぁ。
恋する思春期の、輝きたるや。これも、すごく健全な姿なのだ。

そんな彼らが家に帰ったら、我が子の「心の炎」など想像もしていない母親が、我が子のことは何もかもわかっているつもりで、話しかけているのだろう。

彼らは、さっきまでとは別人のような仏頂面で、適当な生返事や反抗的な言葉を返すのだろう。

それもある意味で、すごく健全な姿である気がする。

さっきの公園にいたどっかのつまらん母親に、自分たちの恋路が、「奇妙な生きる力」を与えたなんて夢にも思っていないだろう。

しかし普通に考えて、若い恋人たちをニヤニヤちら見しているおばさんなんて、相当に気色悪い。

でも大丈夫、気づかれていない。だって彼らは、世界中で、恋する相手しか見えていないのだから!

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