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231219_ガンジーは何をしたか?

【インドの歴史ざっくり】
紀元前2600年頃にインダス川流域にインダス文明が栄え、気候変動で文化が滅亡したり、部族間で戦争が勃発したりしながら、ヒンドゥー教の基礎(バラモン教)を築き、ガンジス川流域へ拡大していった。
イランを中心に成立していたペルシャ帝国や古代ギリシャ人によって建国されたマケドニア王国に侵略されながらも、新しい宗教、思想、哲学を発展させて、さまざまな文化や技術が広がっていくこととなる。
紀元前4世紀後半に初めて統一王朝が誕生し、ギリシャ人をインドから追い出し、仏教が全土に広がった。
綿織物や胡椒を輸出しながら盛んに交易を行い、文学や数学、天文学が発達し、現代のカーストにつながる制度が確立し、都市と商工業の進化によりイスラム教の影響を受けていった。
17世紀、ヨーロッパを中心に各地で国際貿易が発展し、イギリスとオランダがアジア海域へ進出してきた。
ヨーロッパの戦争に巻き込まれたインドは、抵抗も虚しく、イギリスの植民地へ下ることとなる…。

【ガンジーの生涯】
1869年、イギリス占領下のインドで平民として生まれたガンジーは、イギリスで法律を学び、当時イギリス領だった南アフリカで弁護士として働いた。
国外で働くことで人種差別を経験したガンジーは、インド人としてのナショナリズムに目覚め、インド哲学やヒンドゥー教を学んでいった。
ロシアの文豪トルストイと文通を重ねたことで、非暴力運動への思想を高めていく。
第一次世界大戦を機にガンジーがインドに戻った時、インドの農民はイギリスの植民地支配により、貧困に喘いでいた。
イギリスはインド自治権の回復を条件にインド人に戦争への協力を求めたが、終戦後も約束を果たさないイギリスに対し、ガンジーは度々の投獄に屈することなく、大規模な不服従運動を広げていく。
1930年、60歳になったガンジーは、78人の弟子たちと共に25日間386キロ歩いて海岸へ向かい、イギリスの塩の専売制度に対する抗議として、違法な塩の製造を行った。
これは塩の行進と呼ばれている。
事前にメディアや外国政府に連絡していたことで、無抵抗のインド人を暴行するイギリス軍の姿は世界に晒され、注目を集めた。
1947年、第二次世界大戦終結により国力を低下させたイギリスは、ついにインド独立を認めることとなる。
しかし、国内にヒンドゥー教、イスラム教、仏教、キリスト教の複数の信者がいることで、宗教観の違いからで殺戮が発生し、ヒンドゥー教を中心とするインドと、イスラム教国家のパキスタンとに分裂してしまった。
ガンジーは両宗教の融和を目指し、宗教暴動を防ぐため非暴力の戦いを続けたが、このことがヒンドゥー教原理主義者の怒りを買うこととなる。
翌年、かつて塩の行進に加わった1人であった、ヒンドゥー教信者により暗殺された。

【ガンジー亡き世界】
ガンジーの意志は死後も世界中へ影響を与え、非暴力により革命的変化をもたらした初めての人類として歴史に刻まれている。
黒人差別と戦ったキング牧師、独裁政権へ立ち向かうアウンサンスーチー、ガンジーの徹底した非暴力の誓いを守り、行進や断食による抵抗を続けている。
しかし、平和を唱え非暴力を訴える者の多くが、ガンジーと同じく暗殺…暴力による最期を迎えている。
またガンジーを支え、ガンジーに支えられたインドの人々は、日本人が平和な時代と称する戦後70年の間に、パキスタン、中国、スリランカら近隣諸国と絶えず戦争を行い、国内でも宗教闘争を中心に紛争が続いていた。
21世紀になって文化的、経済的に爆発的な成長を遂げたインドは、ついには人口世界一の国となった。
そして、核を保有国し、ヨーロッパ諸国を抜いて、アメリカ、ロシア、中国に続く軍事国家となった。

【インドの今】
インドでは現在でも宗教、性別、身分による差別が残り、人身売買や子供の強制労働が続き、貧困格差は広がっている。
人口の半数が農業従事者であり、世界有数の農業国であるにも関わらず、14億人中2億人が栄養不足の状態にあるとされている。
これは世界で飢餓状態にある約8億人の、1/4がインドの人々ということになる。
日本は戦後経済成長の中で、食糧自給のほとんどを輸入に頼り、そのことが目下の課題として迫っている。
一方インドは生産量自体は低くないものの、収穫効率の悪さや衛生面、流通網の不足により十分に資源が行き渡らない状況にあり、生産された食糧の30%近くが廃棄されている。
IT大国として、Googleをはじめ世界の名だたる企業のトップにインド人が君臨したのは、インド独立運動の指導者、初代首相のネルーが設立したインド工科大学の成果によるところが大きい。
今、民衆の期待を一手に集めるモディ首相が、産業発展の障害となっている成長への壁を越えられるか。
人口世界一となり、平均年齢28歳という若い労働力を持ちながらも、カースト制度による職業固定化、それに伴う失業率の高さ、女性就業率の低さなど、雇用創出が追いついていない。
40年前にいち早くインドに進出し、技術教育と引き換えに労働力を得た日本の自動車会社スズキの貢献もあって、ITに続くもう一つの柱として自動車製造業が注目を集めている。
モディ首相は、製造業振興策としてメイクインインディア、衛生環境策としてクリーンインディア、キャッシュレスの普及など大胆な政策を進め、着実にインドのGDPを押し上げてきたが、一方で報道規制を敷き、ヒンドゥー教を重視し、独裁体制を強めている。

【思うこと】
ロシアとウクライナ、イスラエルとパレスチナ、アメリカと中国、北朝鮮…。
私が子供の頃、今の世界は平和であることを前提として語られていたけれど、本当の世界平和は、まだまだ遥かに遠いところにあるらしい。
平和を目指したい気持ちを持つ者は多くいるだろうけれど、想いだけじゃ目の前にある問題は解決できず、誰かが道を示してくれないことには大衆は動かない。
これからアメリカの時代は終わり、中国、そしてインドの時代が来ると言われているけれど、時代や地域を超えて、人類は同じことを繰り返しているのかもしれない。
国土、人口、軍事力、経済力、これは国という枠組みを語る上で切っても切り離せないもので、比例的に成長曲線を描く。
国がなければ法もなく、法がなければ秩序もなく、秩序がなければ平和はないのだけど、国があるから戦争が起きると言えなくもない。
20世紀のような国家間での略奪を防ぐために国際連合があるはずだが、その決議に拒否権を持つ安全保障理事会はアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の第二次世界大戦戦勝国から成り、様々な理由で戦争を続けている。
過去の遺恨から続く問題、火種は、何らかの解決を得ないと燻り続ける。
時と共に消え去ることはない。

果たして、非暴力の抵抗により、その遺恨そのものをこの世から消し去ることができるのだろうか…?
ガンジーが生きていたら、今の世をどう見るのだろうか。
平和のための戦争とは単なる茶番に過ぎないのか。
戦争なしに、犠牲なしに、遺恨を解決し、自分たちのアイデンティティーを確立し、みんなが生きやすい世の中を目指すことはできるのだろうか…。

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