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【前編】ありがとう「HP」 、 よろしくね 「MacAir」。

私が自分のパソコンを初めて持ったのは、大学入学時。
父親が上京する私に購入してくれた、ノートパソコンだった。

どんなパソコンがいいのか特にこだわりも知識もなかった私と
恐らくネットで調べた結果、「Office系のソフトが入っている」かつ「お手頃価格」という条件で探してくれたのであろう父。

パソコンを選びに行きもしなかった私に父が選んでくれたパソコンの背中には「HP」と書かれていた。

これかな?

悪いパソコンではない。
買ってくれた親には感謝しかない。

ただ、入学式の後、学科のオリエンテーションで周りがパソコンを開き始めた時、私はメチャクチャな違和感を感じた。

みんなのパソコンは、とにかく軽そうだった。
そしてなんかスタイリッシュで洒落ていた。
大体、りんごか、正方形が4つ並んだマークか、8みたいなマークが背中に付いている。

自分のパソコンを改めて見てみると、背中には「HP」の二文字。
そして何よりでかい。分厚い。重い。
そして「HP」。ーーーーーー「HP」てなんやねん!!

そんな思いで、私の「HP」ライフはスタートした。

(決してHP様ディスリではありません。私がパソコンに詳しくなかっただけです。)

とはいえ、授業は楽単を選び、テニスサークルとバイトに明け暮れる日々で、パソコンを使うのはほぼレポートを書くときくらい。
なるべく「HP」は持ち歩かないようにし、図書館でカッコよく「マック」とやらを開いて作業をする人々を、羨ましげに眺めていた。

しかし、大学4年生になると、そんなことも言っていられない。
重い「HP」を抱えた私の前に、卒論という大きな壁が立ち塞がる。

背中には、でっかい「HP」を押し込んだリュック、左肩にはラケットを持ち、満員電車に乗る生活が始まった。

「なんでマックとかフジツーを買ってくれんかったんや…」

父親の選択を恨んだこともあったが、もちろん自分でパソコンを買うような金銭的余裕も熱意もなく、なんとか1万字を超える卒業論文を書き終えた。
ブラインドタッチもできない、もはや人差し指と中指しか使っていないタイピングスキルでよく書いたものだと思う。

卒論終了後、旅行と飲み会に明け暮れた私は、「HP」のことなどすっかり忘れた。
スマホがあれば何も苦労はしない。
会社でパソコンを使わなければならないことにやや不安を感じつつも、ひたすらに今を楽しんでいた。

ところが、入社を控えた2020年3月。
世の中の雲行きがおかしくなった。

3月もあと1週間というギリギリのタイミングで会社から自宅にパソコンが郵送され、入社式は、リモートで行われた。

外に出たくても出られない。
友人に会いたくても会えない。
非日常は突然に訪れた。

新入社員研修は全てリモートワーク。
朝起きなくていい楽さや、飲み会がない健康さなど、メリットはあったものの、どうしても孤独や暇さを感じてしまう。

そんな中、友人が「ZOOM飲み」に誘ってくれ、約半年ぶりに「HP」と再会を果たすことになった。

「ZOOM飲み」で、「HP」はとても優秀なパートナーとなった。
途中で固まってしまう友人もいたが、私は常にサクサク参加できたし、会話が被っても私の声が優先されることが多かった。
ネット回線が強かっただけかもしれないが、「HP」がいてくれたおかげで、不安な状況下で社会との繋がりを保つことができた。

その後も、終業後にブラインドタッチの練習をしてみたり、アマプラで『相席食堂』を見るのにハマったりと、「HP」との生活は続いた。

しかし、段々とおうち時間は減っていった。
「ZOOM飲み」も、なんだか終わりどころが難しく、やらなくなった。
「HP」は、また充電がなくなったままクローゼットの中で眠ることになった。

2022年9月。
今の仕事を続けることに悩み始めた私は、「SHE likes」というビジネススクールに興味を持ち、ZOOMでの無料相談会に参加することにした。「HP」の出番だ。

説明会当日、久しぶりに電源を入れると、なんだか立ち上がりが悪い。
操作が重く、ページが固まる。
元々そこそこすごかった「ウィーーーーーン」という音が、心なしか大きくなっている。底が熱い。

30分前に立ち上げたのに、ZOOMに繋がったのは開始2分前だった。
それでもなんとか時間に間に合ったのは、「HP」の意地だったのかもしれない。

16万円ほどの入会金にビビり、その場で入会を決めなかったものの
心の中ではその日に結論は出ていた。
1週間後、私は晴れてSHEに入会した。

そして同時にもう1つ、決心したことがあった。
「HP」を手放すことだ。

続く


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