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2021年よかったアルバム ベスト25

はじめに

note記事定番のアルバム年間ベストをはじめて書いてみました。
なぜ今になって書こうかと思ったかというと、僕は自分の好きなものについて人と話し合うのが好きでいつも喋りたいのですが、僕の伝え方が下手なせいで人に興味を持ってもらえなかったり、熱弁しても上手く伝わっていなかったりしていました。それでもいいかと思って懲りずに話し続けていたのですが、やっぱり俺が言ってることを知ってもらいてえんだ!という気持ちが芽生えてきて、ならば話のたたき台的なものをブログで書けばいいのではないか、と考えました。僕は文章上手くないですし表現も拙いですが、普段熱心に音楽聴いたり映画観たり本読んだりしてして何もアウトプットを残していないのは単純に虚しいと感じていますし、なんなら書くことで文章も上手くなれればとも思いました。そういうことで、まずはとにかく書いてみて飽きたらやめればいいし、と軽い気持ちで書き始めた次第なのです。
この記事では個人的ベストアルバム(一部はEP)を25枚分、ランキング形式にして感想を書きました。特に批評でもレビューでもありません。最初は20枚にするつもりだったのですが、今年は良いアルバムが多かったので5枚だけ増やしました。今年は豊作だと思います。
導入をこれ以上長く書いても仕方ないのでここまでにします。それでは


25. Dry Cleaning『New Long Leg』

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今年はUKインディーロックが面白く、いろいろある中でも特段よかったうちの一つが彼らの1stアルバムである本作。
Florence Shawのボーカル?の裏で鳴る80年代~90年代初頭のポストパンクやUSオルタナから影響を受けたであろうサウンドがカッコいい。
こういう音を鳴らす新しいバンドを僕は聴きたかったので、1曲目のScratchcard Lanyardを一聴して非常にテンションが上がったのを思い出す。


24. DIALOGUE+『DIALOGUE+1』

スマホ向け声優育成ゲームに出演していた声優から選出されたメンバーで結成したユニットの1stアルバム。
楽曲プロデュースをしているUNISON SQUARE GARDENの田淵(敬称略)の曲にMONACAの二人(田中秀和、広川恵一)やフジファブリック、瀬名航のアレンジが加わり、変態かつキャッチーな出来上がりになっているのが面白い。
こういう直球な感じのアイドルは好きよと思う。


23. 透明写真『QueSeraSera』

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2020年12月に結成された出来たてほやほやのアイドルユニットによるEP で、プロデュースはかつてクルミクロニクルの楽曲を制作していたUSAGI DISCO。
フューチャーベースなサウンドに抑揚を抑えた二人の加工された歌声がのるPerfume的な感じが奇をてらうことなく直球な感じで良い。
とにかく楽曲クオリティが高いので聴くべし。
(以下リンク先動画の曲はEP未収録)


22. Trippie Redd『Trip At Knight』

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ほぼ全編「レイジ」という、90年代のゲーム音楽を思わせるようなエモい感じのシンセにトラップ等を組み合わせたトラックで構成されているアルバム。
ラップとしてはエモラップの系譜で、リリックの内容はともかくとしてシンセがカッコよく曲として、アルバムとして、勢いを感じさせる。
ちなみに、「Miss The Rage」とYouTubeで検索すると同名の曲のAMVがいろいろ出てきて面白い。


21. YOASOBI『THE BOOK』

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説明不要のバカ売れしているボカロPとシンガーのユニットの1stアルバムである。
売り方はもちろんだが、Ayaseのボカロソング的な巧みな曲づくりとikuraのボカロ顔負け(褒め言葉)の歌唱が凄く、同ジャンルの他アーティストよりも頭一つ抜きんでているように僕は思うし、コンセプトがはっきりしてるとこも良いと思う。
2021年は『THE BOOK 2』というアルバムも出たが、「夜に駆ける」「群青」といったアンセムが入ってるこちらの方が好き。


20. For Those I Love 『For Those I Love』

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ダブリンの音楽プロデューサーDavid Balfeのソロプロジェクト、それがFor Those I Loveである。
亡き友人に捧ぐために制作されたこのアルバムの曲はほとんどがアップテンポなエレクトロで構成されているが、どこかシリアスで悲愴的な感じも漂う。
様々な感情がごちゃ混ぜになったトラックを言葉を紡ぐことによって隠れている愛の部分を露わにしていくような、そんな作品だ。


19. P丸様。『Sunny!!』

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小学生も見ているらしい人気YouTuber、P丸様。の1stアルバムである本作は、ナナホシ管弦楽団、ナユタン星人などのボカロPや、TeddyLoid、尾崎世界観、大森靖子、の子などが作曲として参加している。
TikTokでダンスが流行っていたらしい「シル・ヴ・プレジデント」をはじめとしたハイテンションでカワイイ且つ電波なポップスが彼女の声とよくマッチしているし、ほか収録曲では曲に合わせた歌い分けがされてて、楽曲クオリティも全体的に高い。
以下のリンクはアルバム発売記念ライブ配信の公式切り抜き動画。3Dモデルが格別に可愛い。


18. PinkPantheress『to hell with it』

PinkPantheressとは、彼女のTikTokのIDそのままの名前である。
全10曲で再生時間が18分程度の本作はTikTokで消費されることを意識されており、曲は90年代~00年代前半のドラムンベース、2ステップ、UKガラージの名曲を大胆にサンプリングし、そこに自身の歌をのせたものとなっている。
シンプルかつノスタルジックで、ベッドルームポップ的なチルい感じのものが若いアーティストにとって新しいものになり、ウケているということ、それ自体が面白いと思う。


17. Dos Monos『Larderello』

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Dos Monosはカッコいい。メンバーの3人(荘子it、Taitan、没)はキャラ立ちしてるし、荘子itがつくるビートも好きだ。
アルバムタイトルも含め、本作では”地下(暗渠)”がテーマとなっているが、よりアングラ的に洗練されるでもなく、むしろ彼らのディスコグラフィーの中では聴きやすい部類の曲が並んでいるという印象である。
それはもちろん意図的なのだろうが、単に”地下”に潜るでなく”蓋”を介して”地上”と”地下”を行き来するような彼らのスタンスはやはりカッコいいなと思わざるを得ない。


16. Hiatus Kaiyote『Mood Valiant』

オーストラリア出身のソウルバンドによる6年ぶりの待望のアルバム。
リズムに強烈にこだわりつつも、聴きやすいポップな仕上がり、かと思ったら変な歌詞の曲もあったり。
Nai Palmの歌唱と変幻自在のリズムで曲が構成されている部分がこのバンドの聴きごたえであり、本作でも健在である。


15. Japanese Breakfast『Jubilee』

何度も聴いてしまうお気に入りのアルバムで、ある意味これが1位。
前作までとは打って変わって明るい印象で祝祭感のある作品だが、喜びの背後の悲しみや寂しさをどこか感じさせるアルバムで、それこそが僕が何度もリピートして聴いてしまう理由なのだろう。
Japanese Breakfastは、このアルバムの他に2021年はゲーム「Sable」のサントラを全編手掛けており、アルバムもリリースされている。そちらも良い。


14. Maneskin『Teatro d'ira vol.1』

イタリアから現れた王道ロックバンド。
90年代以降のギターロックをミックスし大味にした感じで、そうそうこういうベタなのでいいのよ!と声をあげたくなる。
実際かなりキャッチーでノリが良くカッコいい曲ばかりなので、普通にどんどん出世していくバンドなのではと思う。


13. Squid 『Bright Green Field』

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今年は実力ある新生UKバンドの1stアルバムが色々聴けて(Dry CleaningやBlood Country New Roadなど)大変楽しかったが、このSquidの1stが一番良かった。
80年代ポストパンクに影響を受けたであろう荒々しくカッコいいサウンドのアンサンブルを基調とし、そこにジャズやファンク、テクノの要素も入っtて、偏差値高めな感じ。
だが、とにかく曲の展開とドラムスのOllie Judgeのボーカルが聴いてて楽しいのでそんなことは関係なく聴ける。


12. Theon Cross『Intra-I』

ロンドンのジャズチューバ奏者による2ndアルバム。
今のUKっぽくジャズをUKガラージやグライムとクロスオーバーさせ、チューバの音で巧みにビートをつくっている本作は激しく、クラブミュージックに寄せた曲ばかりが収録されている。
チューバカッコいいな!と単純に思った。


11. GRAPEVINE『新しい果実』

新しい果実

20年以上活動をしているベテランロックバンドの今年の1作。
GRAPEVINEは長年コンスタントにアルバムを出し続けていて、常にサウンドに進化があるバンドだが、本作は歌詞も含め今この時代に見事にマッチしたアルバムだと言えよう。
静かに、ときに激しく鳴らされるスリーピースのアンサンブルはステイホームで聴きながらこの時代と向き合うのにぴったりなものだ。


10. Sons Of Kemet『Black To The Future』

彼らがインタビューなどで語っている通り、本作にはBLMを経たあとの黒人コミュニティへのエンパワーメントと現状の世界に対する怒りが込められているのだと思う。
しかし、アフリカやカリブの音楽をルーツとするバンドである彼らは、それらだけを表現するにとどまっていない一聴して感じた。
Shabaka Hutchingsが関わるバンドはみんな魔術的力を持つ音を奏でていると思うが、とりわけ本作は過去現在のある種土着的な”ブラック”の力を未来へ送るような祈りであり呪いをやっているものなのかもしれない。


9. HALLCA『PARADISE GATE』

ガールズグループEspeciaの元メンバーだったシンガーソングライター HALLCAの2ndアルバム。
周りのシティポップブームよりも先を行くブラックコンテンポラリーやフュージョン的なサウンド、そしてVaporwave的な雰囲気がパッケージされている。それはまさにEspeciaのサウンドの継承にもなっている。
Especiaが解散してもうすぐで5年経つことになるが、彼女が今なおグループと地続きの場所で継続して活動をしていることは、とても価値のあることだし、リスペクトすべきことだ。


8. black midi『Cavalcade』

このアルバムには圧倒的な”圧”と”熱”を感じる。
ロンドンの若手アーティストの巧みでクロスオーバーを感じさせる曲を作っているのは彼らも一緒で、本作もジャズ的なものを取り入れたりしている作品なのだが、とにかく圧力と熱量が違く、全部を塊にして音にしてぶつけられているような、そんな感じだ。
しかもその塊もカオスのままではなく巧みに構成されているのだから恐ろしい。


7. Arlo Parks『Collapsed In Sunbeams』

UKの新人シンガーソングライターの作品。作曲をはじめてまだ日も浅いらしいのだが、R&B、ジャズソウル、などの要素をもつ本作はとんでもない完成度であると思う。
彼女の、聴く者の耳元に寄り添うような歌唱と曲は、肩の力を抜いてこれから一日を始められるような、リラックスを感じさせつつちょっと引き締まった感触を心にもたらす。
ベッドルームポップという言葉があるが、ジャンルの定義はどうあれ本作にふさわしいものだと思う。


6. 珠鈴『ハードスプレー』

2021年で1番の衝撃。そして、オレがインディーのアイドルを聴く理由はこれだったんだよ!と心の中でガッツポーズした1作。
TPSOUNDの手掛ける、YUKIとかが歌ってそうな見事なメロのエレポップと、珠鈴本人が手掛ける今の時代の日常を見つめつつユーモアのある言葉遣いの作詞が素晴らしい。
こんなにめっちゃいい曲があってYouTubeとかの再生数が4桁(2022年1月現在)なのはおかしい。


5. Parannoul『To See the Next Part of the Dream』

韓国ソウル出身のアーティストのソロ・プロジェクトによってつくられ、ネットのごく一部で盛り上がった一作。
シューゲイザーであり、アンビエント的な雰囲気をもつ本作はジャケットのビジュアル通り、かつて存在していたかもしれない青春が思い起こされるような、一部の人にぶっ刺さる作品だ。(冒頭はリリイシュシュの引用で始まる)
一方で本作の制作は全て(ギターも!)打ち込みで行なわれたものらしく、つまりこのアルバムで感じられるモノはデータで再現された、まさに夢の中の幻のようにぼやけているものでもあるのだ。


4. Emma-Jean Thackray『Yellow』

Emma-Jean Thackray、ロンドンで活動する彼女は作曲をし、ギターを弾き、トランペットを吹き、DJもする、何でも屋な感じのする人である。
そんな彼女がつくる本作はジャズであり、Pファンクであり、UKガラージであり、いろんな音楽がクロスオーバーしたまさに今日的なUKジャズのアルバムだ。
しかし、彼女の作品の背後にはぶっとい宇宙観や思想、それと生音に対する緻密な編集工程がある。それがただのUKジャズアルバムとさせないような凄みを発揮させているのである。


3. Little Simz『Sometimes I Might Be Introvert』

SaultのメンバーであるInfloの2021年の仕事で一つあげるとすれば、このアルバムだろうか。しかし、あくまでも主役はLittle Simzである。
彼女のラップはコンシャスであり、黒人や女性を取り巻く社会の諸問題ついて、自分の体験と紐づけながら語っていく。Infloのプロダクションによるアルバム全体の構成的にも本作は一つの物語を聴いたかのようなカタルシスをもたらす。
それはまさに曲中で言及されるKendrick Lamarがやったようなことであり、彼女が内省的に考えることが社会が直面する問題と結びついてゆく。そのようなものだ。


2. NiziU『U』

TWICEなどで人気の韓国のJYPエンターテイメント×日本のSMEによる大型アイドルグループが日本人メンバーオンリーでJ-POPとして結成した!これだけで勝ち感のあった2020年。二つのシングルをリリースし11月に出た待望の1stアルバムは、楽曲クオリティはもちろんのこと、歌唱においてもK-POPアイドルたちに引けを取らないものであった。
だが、全てが完璧に洗練されているわけではなく、メンバーにどこか愛嬌のある”隙”を感じさせる要素があるのも事実だろう。歌も上手いが、ヘタウマ的な要素もある。まさにそここそが日本的アイドルの特徴といっていい部分であり、NiziUが名実ともに日韓のアイドル文化の融合で生まれた最高のグループであるという証左にもなっていると言える。
実際、彼女ら”若く”て、”カッコよく”て、”カワイく”て、”歌が上手く”て、”ダンスがキレキレ”で、”曲が良く”て、それで「アイドル」なのだ。最強だろう。


1. Base Ball Bear『DIARY KEY』

文句なし俺的ナンバーワンはやはりベボベである。
前作から模索したスリーピースでのサウンドを完成させたこのアルバムは、この災厄の世に生きるすべての人に捧ぐ祈りのアルバムだ。
「生」を描くには「死」はつきものである。だが小出が紡ぐ歌詞は、安易に「死」や「喪失」について語らない。いや、むしろ全く語っていない。このアルバムは「生」のみを執拗に語ることで背後の「死」を暗示させるようなつくりとなっていて、ダブルミーニングを駆使することによって言葉の裏側の意味を聴く者に理解させている。そして言葉の裏表を意識しながら聴くことによって最後に得られるカタルシスは、聴いている我々自身の生活へと還ってゆくものとなるのだ。
ハイライトは終盤の「海へ」だろう。この曲はずっとベボベを聴いていてよかったと思える、サウンドや歌詞も含めて集大成でクライマックス感のある曲だ。それを経てラストの「ドライブ」へと続く。
我々の名もなき無数の生は背後の無数の死と共にある。最後のギターソロは終わらぬ営みへ捧ぐささやかな祈りだ。
























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