四国とスペインの巡礼日記 <カミーノ第一章> ③ オラー、スペイン!
第一章
カミーノ フランス巡礼 第三話
「小さな焼き物屋」
「ピレネーを越えて」
「オラー、スペイン!」
一人で見知らぬ土地を旅をすることは、日々を成功体験の積み重ねにすることかもしれない。特に大きなイベントが無くても、新しい道を歩き、新しい土地で新しい人達に会うことは、それ自体がすでに小さな挑戦の積み重ね。一日の終わりには、必ずいくつかの挑戦を乗り越えている。
そして夜、寝る場所を見つけて横になること自体が大きな達成で、素晴らしい成功体験となる。旅を終える頃には、その小さな毎日の成功体験の積み重ねによって、否が応でも身に起こることを肯定的に受け止める心が芽生えるんじゃないかな。
未来に対する肯定的な気持ち、それ自体がまた次の一歩を踏み出すための勇気になるんだと思う。
7月4日 アクース → カンフランク
フランスの南端のアクース村の朝。
ニコラスさんと日本人の奥様ミホさんのお家に泊めて頂いた次の日。
とっても幸せな気持ちで目覚めると、ご飯と味噌汁と玉子焼き。なんて最高の朝ごはんだろう。子供達も卵ごはんにニッコニッコ。とてもフランスにいるとは思えない。景色もミホさんが言うとおり日本の田舎と変わらない。おむすびとお菓子、そして麦茶を水筒に入れてもらった。
ホタテ貝をバックパックにしっかりと結んでもらい、ピレネー越えに出発。”ありがとうございます”ただそれだけで歩いた。ピレネー越えの大変さはまだ知らず天気も気分も最高の朝。
途中に立ち寄ったボースは山の上の小さな村。カミーノを終えた今でもあの村は一番きれいでかわいい村だったと思う。ふと、お土産屋さんに入ると小さなホタテの焼物があって、買って杖につけようと思ったけど、結局りんごを一個だけ買い、食べながら次の町に向かった。そしてピレネーの麓の町、ウードスに到着。
レストランを探して歩いていると、通りがかりのおばさんが僕を呼び止め、一軒のお店を指さしている。それは葛飾北斎の絵がディスプレイに飾ってある小さな焼物屋さん。ミホさんも話していた焼物と盆栽通のおじさんの店だった。入ってみると、なんとも不思議な空間。”ありがとう”と書いた焼物があった。
ひょうひょうとした雰囲気の店長のパトリスさんは、「神様が全ての場所にいることを芸術で表現したいんだ」、とニコニコ。「カミーノの道にはドラゴンが横たわっているよ」、「巡礼道を歩くことは自分の心を歩くことと一緒だね」など自然体で凄いことを言い出す面白いおじさんだった。最後に、ホタテの形の焼き物アクセサリーをくれた。ボースの土産屋さんで買おうとしたものだ!パトリスさんの作品だったのか~。
ウードスの町を過ぎ、いよいよピレネーを越えるための古道に入る。この道はあまり歩く人がいないらしく草が生え放題で虫が多く、途中の崖なども草で覆われていて見えにくかった。おまけに道標も少ない。水場が多かったことがなによりも救いだった。でも山の頂上近くは絶景だった。メルヘ~ン、ちゅう感じ。
景色に見とれていたらうっかり道標の矢印を見落として道を間違え、5kmも反対方向に歩き危なくウードスに戻ってしまいそうになった。腹も減って、水も少なくなり、倒れそうになりながらもフランスとスペインの国境の町ソンポートに到着。やっとスペイン入りだ。心は弾むが、足取りはかな~り重い。この予測して無かった三日間のフランス巡礼で心がカミーノ本番への準備を整えた。
国境を越え、スペインに入ると道と風景がガラリと変わった。赤土と松林の道で、虫もあまりいない。なんといっても、話に聞いていた巡礼の道しるべの黄色い矢印を見て、スペイン巡礼道に入ったことを実感。
オラー(こんにちは~)スペイン!
ピレネーを下ってカンフランクのアルベルゲ(巡礼者の宿)にふらふらとたどり着いた時には、もう9時を回っていた。あ~、スペインのビールはまた格別です。
全くの予想外だったフランスの巡礼道をクリアー。
おっしゃ~!
<第二章に続く>
カミーノ:廃墟のスペイン
四国遍路:修業の道場
第二章では、四国もスペインもひたすら一人で歩くことが多かった印象があります。カミーノの第一章の最後と四国遍路の第二章の最初にどっちも意味は違うけど「おら~」と叫んでいる。
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