国家財政を考えてみよう その11 「子どもたちの未来に負債を先送りしないために消費税増税が必要」の嘘

昨年10月にとうとう消費税が10%にまで増税されました。おかしなことです。アベノミクス第1の矢で金融緩和したのなら、第2の矢では大型財政出動か大型減税をするはずなのに、この一連の稿で確認したように歳出は増えるどころが絞っている上に、減税どころか二度にわたる消費増税です。これではアベノミクスではなく、アベコベノミクスです。

消費増税を訴える政治家がしばしば「子どもたちの未来に負債を先送りしないために」と訴えます。これ、もう完全な嘘八百です。前稿で見た下記リンク資料を見れば一目瞭然ですよね?

2019年第3四半期の資金循環
(速報) 2019年12月20日
日本銀行調査統計局
https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjexp.pdf

このリンク資料1ページの図表を見れば明らかなように、国債(一般政府負債の部にある証券)の買い手は民間の金融機関と中央銀行、その原資は民間の現金・預金(と日銀によって供給される通貨)です。

つまり大企業の余剰資金や富裕層や高齢層の預貯金が国債を購入し、行政の資金源になっているのです。

国債には多くの種類があります。短いものでは1年未満の割引債から、長いものでは40年物の長期国債もあります。

ただし国債と呼ぶからには、民間のお金を政府に貸しているだけですから、期限が来たら返ってきます。政府はお金を返して(国債を償還して)資金が足りなければ、再び借ります。いわゆる「借り換え」です。これは民間企業でも普通に行われる一般的な資金繰りです。国債で調達されたお金は政府によって使われますが、とは言えお金の権利者(債権者)すなわちお金の最終的な所有者は民間の預金者です。つまりお金は国民ひとりひとりのものであることに変りはありません。

財政再建論者や財政赤字解消論者は、この国債の発行を減らして増税せよ、と言っているわけです。彼らの主張は、国債は国の借金であり国債残高は子どもたちの未来に負債を先送りにすること押し付けることだからよろしくない、その金額を減らすために増税する、と言う訳です。これ、うっかり信じちゃいそうになりますが、気を付けてください。

真っ赤な嘘です。

同じ額の財政の歳入を確保するために国債が発行されれば、そのお金は期限が来たら国民に返ってきます。例えば私の貯金100万円が金融機関を通じて10年国債に化けたとすればそれは10年後に金融機関に返ってくるし、私の預金残高は100万円で変わりません。そしてもし私がその間に死んじゃったら、それは私の子どもたちに相続されるのです。

あれ?政治家が言ってることと違いますよね?国債で財政を賄っておけば、私の貯金は私の子どもたちにそのまま受け継がれます。つまり先送りされるのは負債ではなく財産・資産です。

しかし同じ財政の歳入を国債ではなく増税で賄ったらどうなるでしょう。上記の例で私が10年以内に死んじゃったら私という高齢者が負担する税金はせいぜい10年分です。しかし私より30年も40年も長生きする子どもたちは、私より30年も40年も余分に増税された高い税金を払い続けなければなりません。もっと酷いことには、あたりまえですが、税金は一度払ったら返ってこないので、増税されたら私が子どもたちに残せる財産・資産は目減りしてしまいます。

どうですか?増税こそが子どもたちの未来への負債の先送りではありませんか?政治家が言ってることは事実と全くあべこべではありませんか?

でもこれこそが真実です。

✖ 子どもたちの未来に負債を先送りしないために消費増税が必要
〇 子どもたちの未来に負債を先送りしないためにこそ増税を避け国債・公債の発行と借り換えの繰り返しを優先すべし、増税こそが子どもたちの未来への負債の先送りである

日本のように国債・公債が自国通貨でかつ自国内で消化できている国では、これが真実です。

一部の政治家が叫んでいたように、消費税を上げなければ日本がギリシャやアルゼンチンのように破綻する、などというのは詐欺です。ギリシャやアルゼンチンは外貨建て国債に依存した対外債務国です。日本は自国通貨建て国債に立脚した世界一の対外債権国です。絶対に同じことにはなりません。

財政に関するこの一連のnoteを書いていると、政治家や官僚や主要マスコミや(えせ)識者が、いったいぜんたいどれだけ大嘘つきの連中なのか、私自身もうんざりしてきます。だからこそひとつひとつ事実を確認する作業をまだしばらく続けたいと思います。

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