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歯が痛いけど、歯医者に行かない

・平常時の10分の1の思考力で書いている。
人は生命の危機を感じると、走馬灯のように色々なことが
脳裏に浮かぶのだろう。歯痛が始まったら、なぜか、
書かねばならぬという心境になった。

・突き刺すような痛み。
アイスピックを歯の神経に突き刺して、
上あごから側頭部まで、貫通したような痛み。
そんなことしたら、もっと痛いだろうけど、
やったことないので、ほぼ正確な表現だろう。
首筋にも突っ張ったような感覚がある。

・楽な体勢はないか。
いろいろ試行錯誤していると、両腕を挙げて、少し首を傾げると
楽になることが分かった。
ジョジョの奇妙な冒険 第2部 ジョナサン・ジョースターのポーズ
ジョジョ立ちが役に立つとは、思わなかった。
あれは歯痛を我慢している時の姿勢を描画したのかもしれない。

・楽な表情はないか。
鼻の下を伸ばして、口を開けると、わずかに痛みが和らぐ。
誰も見ていないが、おぞましい表情だろう。
そんな顔の人が書いた文章を読ませるのは申し訳ない。

・動いていれば、少しは気がまぎれるか。
部屋の中を歩き回ってみる。
開きっぱなしの口から入ってくる冷たい外気が歯にしみる。
めちゃくちゃ神経が過敏になっている。
口は閉じたほうがいいらしい。

・鼻がかゆい。
鼻の下を伸ばして、手のひらで鼻の頂点をこする。
不思議なことに、痛みを感じなくなった、しかし、息が苦しい。
息を荒くしながら、こすっては休み、こすっては休みを繰り返す。
この動作で、何とか痛みに耐えている。

・歯痛になった原因はお稲荷さんだ。
私はお稲荷さんが好きだ。
一番おいしい寿司ネタは、まぐろだが、
お稲荷さんは、寿司という枠に収まりきらない特別な存在だ。

お稲荷さんを包んでいる、いなりあげ、というのは、
油揚げを砂糖と醤油で甘辛く煮込んだものだ。
中に入る酢飯、すし酢にもたっぷり砂糖が使われている。
つまり、お稲荷さんは、糖質のかたまりだ。

・お稲荷さんを食べるときの正式な作法は
おかず、みそ汁、漬物など一切を省き、
お稲荷さん5個と真正面から向き合う。
私はこれを、お稲荷さんのオーバードーズと呼んでいる。

おそらく、急激に血糖値が上がることで、神経がパニックを起こす。
若干、意識が遠のく瞬間のような浮遊感を味わえるのだ。
おはぎ、ポテトサラダでも同じような現象が起こるが、
これらは、一度にたくさん食べることができない。

・お稲荷さんは、とにかく歯にしみる。
砂糖か、酢か、何が直接に影響しているのかは、わからないが、
とにかく、岩の亀裂に染み渡る雨水の如く、神経の奥底にまでいきわたるようだ。
そのせいで、私はジョジョ立ちをして、鼻の下を伸ばし、鼻をこする。
このような姿勢をしては、痛みを紛らわして、この文章を書いている。

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