晴れたら空に骨まいて

先日、久しぶりに国内旅行で海に行った。旅のお供は川内有緒さんの「晴れたら空に骨まいて」。

亡くなった家族の遺骨を散骨して弔った人たちへのインタビューが5組収められている。著者の川内さん自身が、亡くなったお父様の骨を故郷の福井の海に散骨したという経験を持つ。

川内有緒さんの本は私がバングラデシュに住んでいる際に友人に勧められ「バウルの歌を探しに」を読んだのを始めに、「パリで飯を食う」「パリの国連で飯を食う」も読了していた。ご本人のパワフルでオープンな人柄と多彩な友人たちや出会いを引き寄せる運がとても眩しく、読むと元気をもらえる文章を書く方だ。

その一方、川内さんと自分と比較してがっかりしてしまう面もある。アメリカの大学院で学び、フランスの国連で働くなんて。フランスにいた際は日本から友人が代わる代わる泊まりに来たらしい。そして国連で働くだけでなく、そこで知り合った面白い人たちを文章にして仕事にしてしまうとは。英語を習得するのすら四苦八苦し、内向的な性格も手伝ってなかなか友達ができない自分の燻りっぷりを省みると、なんとも言えない気持ちになるのは確かだ。

本書にはインタビューの後ろに川内さんのお父さんと家族の歴史についても書かれていた。

そこで、川内さんのお父さんは豪快で気っぷがいいが金遣いに計画性がなく、女性問題もあり家族は振り回されたこと。経営に失敗し膨れ上がった借金を返すために、川内さん自身も苦しく出口のない思いをしたこと。お父さんが病気で倒れ亡くなったときに「相続放棄」という形で皮肉にも借金から解放されたこと、などが書かれていた。アメリカの大学院の学費は親から出してもらったが、そのとき既に会社の経営は危ない状態だったと後で知ったそうだ。

当たり前だが、人は幸せで明るい面ばかりではない。ましてや、親の弱い部分を目の当たりにするのは子供にとってとても辛いことだ。そして、いくら友達が多くても、損得を気にせずに心のうちをさらけ出せるのは家族くらいしかいないのかもしれない。安易に川内さんを羨ましく感じた自分は単純だった。

それにしても、川内有緒さん、一度お会いしてお話してみたい。




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