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母と次女の私「母の集音器」

80代の母は、日増しに耳が遠くなり、
テレビの音量が大きくなってきている。
音が聞こえないので、
テレビから1メートルという近さにすわり、
テレビを見ている。
実家のテレビは、スピーカーが
わきについてるタイプのようで、
より、聞き取りづらいらしい。
そんな人のために、
『手元で音が鳴るスピーカー』が
販売されてるが、
いろんな種類があり、決めかねる。


夫の両親が、テレビ用のスピーカーを
使っているが、安物のせいか、
私からすれば、音色が悪い。

けど、年寄りには、
聞こえ方が、若い人とは違うと思うから、
それで、充分なんだろうか?

緊急事項ではないので、
そのうちにと思っていたら、
先月、姉が、
イヤホンタイプの、集音器というものを、
通販で買い、持ってきたのだった。

支払いは、母。

2個で、1万2000円だそうだ。

母は、長女のことを、崇拝してるので、
嫌とは言えず、お金を支払った。

軽く充電して、
まず、ためしに、私が耳に当ててみたら、
人の声が、ガンガン大きく聞こえる。
カチカチなる時計の音もやたら拾う。
テレビは、真正面にすわらないと、
音の聞こえが悪いようだ。
姉もつけてみて、
「人の声は、ちゃんとよく聞こえる」
と、満足顔。
しかし、母は、充電の時点から、
おろおろおびえていて、
使いたくなさそうに見えた。
姉は、気づかない。
「なぜ、テレビ用スピーカーにしなかったの?」
と私は、姉に質問すると、
「だって、人の声が聞こえないって
言ってたから」というのだった。
母は、近所の人とは、スムーズに会話できてる。
電話も問題ない。
ただ、母は、私の声だけが聞こえないのだ。
母の心の根底に、私に対して、
「聞きたくない」「会話したくない」
「コイツは、めんどくさい」があるので、
そもそも、聞く耳がないのである。
そんなことを知らない姉の、このチョイス。
せっかくの集音器
姉と私にすすめられて、
母は、しぶしぶ、片耳に装着したが、
キーンと音が鳴り響き、
母は、すぐさま、耳からはずしてしまった。
何度やっても、母がつけると
キーンと、異音がなるのだった。
あとで、取説を見てみたら、
つけ方が悪いと、異音で知らせるらしい。
母は、イヤホンをつけたことないから、
耳の穴に何かを差し込むことに
抵抗があるようだった。
母は、「あとで」と言って、
それをテーブルに置いた。
一生使わないつもりなのが目に見えた。
けど、姉は、
集音器は正常に動いてるので、
役目は果たしたと、
達成感な、お面持ちで帰って行った。
その後、母が、集音器を使ってる様子はみられない。
どうして母は、
新しいことにこんなにも臆病すぎるんだろう?
私は、うんざりする。
なぜなら、母の束縛で、
私の経験値は少なく、学生時代から、
おろおろしまくりだった過去の自分と重なるから。
集音器は、いずれ、私が使おう。
私のほうが、子ども時代から、
他者との会話の声は、ほとんどききとれてないので。





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