Kamoi

不登校、摂食障害、躁鬱等を抱え、定時制高校中退を経て、慶應通信で学ぶ日々へ。 能動的に…

Kamoi

不登校、摂食障害、躁鬱等を抱え、定時制高校中退を経て、慶應通信で学ぶ日々へ。 能動的に生を捉えることの意義、そしてなにより、純粋に学ぶことの楽しさをテーマに日々を綴ります。 言葉が表現し得ること、または言葉と言葉のあいだにある空白。人がつくる社会と言語に広く関心があります。

マガジン

  • ひとつの美しい調べに寄せて

    主に近現代の小説を読みながら、作中人物たちに思いを掻き立てられ、伝えたくなった言葉たち。作品ひとつにつき、登場人物ひとりに宛てて、手紙をしたためました。

  • In my sight is Bright Blue

    見えているのではなくて、見ている私がそこにいて、見たいものを見ている。それならば、きりりと澄んだ水色のような言葉からは、どんな景色が見えるだろう。そんな気持ちで日々を綴るマガジンです。

  • The Black into Keen Red

    日常の脇。奥とも深くとも呼べる場所。黒は暗闇を体現しているだけではなく、人間と不可分な孤独がもたらす、すっと冴えた鋭利な知も有しているように思います。闇が光となる狭間、そこから見える言葉は何かを探究するマガジンです。

最近の記事

3.カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』(土屋政雄訳)

トミーへ トミーに手紙を書こうと思ったのは、他でもない、あなたが癇癪持ちだったからです。あなたはそのことでずいぶん苦労していたようですが、最後にキャシーがいうように、あなたは全て、体で感じ取り知っていたから、だからこそあそこまでの癇癪をいつも引き起こしていたのではないか、私もそう思います。絵が下手だったのだって、他の人とは違う感受性がはたらいていたから、そのように思えます。そんなトミーの癇癪を私は、とても人間らしいと思います。人間らしくて愛おしい。大切な要素に思えます。 複

    • 民主制とneed/demand

      民主主義は互いの快・不快や利害をベースに話し合い、落としどころをみつけようとすると 破綻するのではないかと思った。 あくまで前提にするべきは正・不正であり、善悪であるべきではないか。 それもたとえば、 正しいこと、善いことはなにか? →善いのだから幸福であるはず、幸福とはなにか?(一旦正しさを脇に置いて) →(ネオリベラル的な)利益はなにか? 快はなにか? この道筋を辿るとベースが個人的な環境や感情に寄ってしまう。 だからここで前提に置くべきは、不正ではない、悪ではない、

      • 未完こそ最高の完結かもしれず

        今日は未完小説のお話を。 芥川龍之介の『邪宗門』を読み進めながら、 これは……! なんと……! おもしろい展開に……!!! でも残りページ数少なすぎないかい……? と思っていたら、なんと、未完で終了。 若殿「応」で庭に下りたけど、これからなにするの、なに言うの、 一番大事なところ!!! と叫びたくなりました。 そういえば、ドストエフスキーも一番好きな作品はやっぱり『カラマーゾフの兄弟』だし、 夏目漱石も個人的には『明暗』が一番心躍りましたが、こちらも未完。 旅立つところ、出

        • 履いている靴は自分で脱ぐべきだ

          プラトンの『饗宴』を読んだあと、印象に残ったシーンがあります。 それは遅れて宴にやってきたソクラテスがソファに横になると、奴隷がやってきてソクラテスの靴を脱がせるというシーンです。 ……なぜ自分で脱がないのだろう。 古代ギリシアと現代を同一視しても仕方がないとは思いつつ、 宴に来ているこの人たち(古代ギリシアの哲学者たち)は、奴隷がなにもかも世話してくれるような身分だから暇があって、 だから思想や議論にふけることができたの……? 奴隷をどんなふうに認識していたのだろう……?

        3.カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』(土屋政雄訳)

        マガジン

        • ひとつの美しい調べに寄せて
          3本
        • In my sight is Bright Blue
          11本
        • The Black into Keen Red
          0本

        記事

          学修が結果的に網羅的ですごい

          学校教育の履修科目設定はさすがだなあと思うことがあります。 高校の学習でも、高卒認定を受験するのなら主要科目に絞り、3年かけずに大学入学資格を得ることも可能ですが、 高校に在籍して学ぶからこその科目に妙味があったりします。 たとえば、体育の座学で憲法を学んだことは、今でも素晴らしい学びだなあと思いますし、 書道で空海の書を読むことは、日本史でその名前を見るよりも親近感を覚えました。 大学の単位修得にも、もちろん細かな(細かすぎるほどの)規則があり、 ある程度自分の興味に沿

          学修が結果的に網羅的ですごい

          なぜ、文学なんだろう

          なぜ文学専攻なのだろう。 入学前から時折考えるテーマです。 言葉にこだわりがあるらしい、それはわかっていて、 哲学も言語学も好き、それもわかっていて、 ではなぜ文学なのだろう。 私にとって文学は、少し言葉に対して回り道をしている学問のように感じます。 言葉を扱っているようで、言葉以外の情報、言語外の伝達要素もふんだんに取り上げる。 文学という作品のなかで、言葉にされていることは本当に少ない。 それが好きだと思う一方で、 じゃあ言葉にこだわっているようで、そうでもないじゃない

          なぜ、文学なんだろう

          学ぶことを共有すること、人と繋がること

          第Ⅱ回科目試験が目前です。 それはさておき、このタイミングでnoteを始めたのはなぜだろう、と ふと考えました。 入学3年目、単位も順調に修得しています。 だけれど、学びへの熱量が落ちてきた? なぜだろう。 好きな読書もぐっと読書量が下がり、 一番好きな小説に至ってはしばらくまともに読めていない…… なぜだろう。 ひとりで家でこつこつと取り組むことがつまらなくなってきたのかな、 そう感じました。 単純なことでいいから、人と共有したい。 そんな欲求がむくむく湧いてきました。

          学ぶことを共有すること、人と繋がること

          2.エミリー・ブロンテ『嵐が丘』(河島弘美訳)

          今日は『嵐が丘』のなかのエレン・ディーンに宛てて、お手紙をしたためました。 エレン・ディーンさんへ 私はあなたに怒っています。確かにあなたは誰に対しても(目の前にいる相手、ということですが)公平に、不当な憎しみを持つことなく接していました。家政婦らしく主人とその家族の幸せを願い、行動し、時に助言を与えてきました。 でも私には、目の前の相手の感情に動かされすぎているように見えました。その結果、余計にみなが混乱していくように見えました。 あなたは一体、一番誰に幸せになって欲し

          2.エミリー・ブロンテ『嵐が丘』(河島弘美訳)

          1.サン=テグジュペリ『星の王子さま』(内藤濯訳)

          今回は、王子さまのバラへ手紙をしたためました。 王子さまのバラへ 私はこんなに美しいバラを、他で見たことがありません。あなたはとても、とても、気高くて美しい。だからお花屋さんに行ってもバラを買い求めることはないし、バラ園を散歩していてもやっぱり、あなたほど美しく花を咲かせるバラに出会ったことがありません。 あなたが美しいのは、王子さまがあなたを愛し、守り、育ててくれたからで、そのおかげであなたは自分の花びらの美しさも、豊かな香りも、4本のトゲにすらストーリーを与えて特別な

          1.サン=テグジュペリ『星の王子さま』(内藤濯訳)

          大学受験寄り道、塾

          大学の話を進める前に、なぜ通信課程へ進学したのか。 当所は通学課程を受験しようと思い、準備をしていたのですが、 どう考えても首都圏に出なければ学びたい学問を専攻できない。 でもそのためにパートナーと離れ、生活していく、その生活が見えない、経済的な算段がつかない。 そこで、受験勉強は続けながら、専攻の変更や通信課程も視野に入れて再検討。 通信課程でも学びたい専攻を取れる大学が1校だけある、 このことから、現実的には通信課程に入学するのがいいだろうと、大学を決めました。 高校最後

          大学受験寄り道、塾

          ③通信制高校を卒業、卒業式

          通信制高校をざっと振り返る、3本目の記事です。 迎えた卒業式では、自分のがんばってきたことが糧になったことを知るだけではなく、 周りにその成果をわかりやすいかたちで示すことで、 「おめでとう」というかたちある言葉を式典のなかで何度もいただきながらお祝いしてもらえる、 それが卒業式なのだと思いました。 この感慨は本当に、入学式や卒業式のような祭典ならではのものなのだと実感しました。 中学生の頃は病状がかなり悪く、式にまともに出席することが叶わず、 定時制の入学式でも病状を配

          ③通信制高校を卒業、卒業式

          ②通信制高校での勉強、大学受験

          通信制高校での日々をざっと振り返っていたところ、思いのほか長文になってしまったため、2本目です。 通信制高校の卒業に際しては、2年次から3修生という制度を申告利用し、通常4年で卒業する課程を3年で終えました。 3修生の課程の2年間は、レポート課題&スクーリングの量が1.5倍に増えるため不安もあったのですが、 1年生の時の担任の先生が「かもいさんならできるよ」と笑顔で背中を押してくれて、挑戦してみよう! という気持ちになりました。 卒業年度には、3年次の担任の先生が進学相談

          ②通信制高校での勉強、大学受験

          ①通信制高校へ通うまで

          なぜ再び高校へ入学したのか。 一言でいえば、パートナーが背中を押してくれたからです。 勉強をしたいと言っている私を見て、 「通信制高校に通いなよ」と入学書類を用意してくれました。 最も苦手な入学のための書類手続き、 その必要な手続きのほとんどを、パートナーが引き受けてくれました。 今では大学で必要な手続き等、自分でこなしていますが、 当たり前のようでいて、これすら当たり前ではないのですね。 たった数年前ですが、思い返してこれだけの自分の成長を目の当たりにし、その差に驚くのと

          ①通信制高校へ通うまで

          14歳の自分へ

          はじめまして、Kamoi(かもい)です。 noteにしろ創作にしろ「自分はどうしてこれを書きたいのだろう」とか 「自分は何を伝えたいのだろう」「誰に伝えたいのだろう」 というようなことを考え始めると、思考がぐるぐる、ぐるぐる、 行ったり来たりして、なかなか書き進めることができなくなります。 ふと、ただ、無知で、純粋に過ぎて、無防備で、それでもひとり、自分の力で世界をなんとか切り開こうともがいていた、14歳の頃の自分を抱きしめてあげたい、そう思っていることに気がつきました。

          14歳の自分へ