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かもがわ出版メルマガ2022年Vo.140

11月初旬に弊社より刊行される『天皇財閥・象徴天皇制とアメリカ』
かなり変わったタイトルである。
 天皇とアメリカというだけなら、これまで多くの本が書かれてきた。
マッカーサーが昭和天皇が自分の身はどうなっても構わないと言ったのを聞いて感動したという本もあれば、昭和天皇が敗戦後に保身のために沖縄をアメリカに売り渡したという、まったく異なる立場の本もある。
 ところが、今回出る本は、戦前の「天皇財閥」と戦後の「象徴天皇制」の両方を取り上げ、それとアメリカを結びつけているようだ。どんな意図があり、何を解明しているのだろうか。そんな期待を持たせてくれる。
 著者が強調しているのだが、昭和天皇は第2次世界大戦での敗戦を味わった。一方、平成天皇(現上皇)の在位期間(1989年から2019年)は、「第2の敗戦」と言われる時代にほとんど重なっている。そして昭和天皇は、敗戦の最大の責任者であるにもかかわらず、「人間天皇」に早変わりして、少なくない国民から笑顔で受け入れられた。平成天皇は、「第2の敗戦」に責任があるわけではないが、国民統合の役割を果たすことによって、「第2の敗戦」に責任を持つ自民党の政治の緩和剤となっているようだ。
 なぜそんなことになるのか。それが著者の最大の関心事である。著者は、日本とアジア、世界の資本主義分析の泰斗であり、これまで幾多の著作を上梓してきた。『情報革命と生産のアジア化』、『ポスト冷戦世界の構造と動態』などが代表作である。
 その著者が、戦前戦後の日本資本主義分析を縦軸に据えつつ、横軸に戦前の絶対主義的天皇制と戦後の象徴天皇制をおいて、かつ戦後のアメリカが果たした役割との関連で分析したのが本書である。著者が「内なる天皇制」と名づける天皇憧憬感情がどのように生まれてきたのかをはじめ、日本資本主義分析が新たな視点で試みられていて、意欲的でもあり興味深い。
 しかも、最後の2章は、著者が得意とする2つの分野での論考がある。1つは、アメリカの株価資本主義が世界をどのように危機に陥れているかの分析である。もう1つは、インターネットを編制する分散=共有=公開という原理のなかには、21世紀社会主義の萌芽が見られるという指摘である。このままでは資本主義の終わりの前に世界が終わるという指摘は鋭い。
 そこを転換できるか、日本はどんな役割を果たせるか。この問題を理論的に分析し、整理したい方々にとって格好の書籍があらわれた。

【新刊案内】

●「絵本にまつわるエピソード」をシェアしませんか?
絵本はホスピタリティの宝箱
医療法人元気が湧く 本体価格1,500円
エッセイ応募を機につづられた、それぞれの胸のなかに大切にしまわれていた「絵本とのエピソード」30編+特別寄稿エッセイ3編を収録。

【重版情報】

●米国と日本で出会った当事者のリアルな声
ALLYになりたい
小島 あゆみ
 本体価格1,600円
「誰もが生きやすい社会」を目指すことは「個人として尊重される社会」を目指すこと。米国と日本で出会った当事者のリアルな声。

【総合ランキング】

保育・教育書 第1位
●特別支援教育のワーク教材
SSTワークシート社会的行動編
LD発達相談センターかながわ 本体価格1,800円
社会性の課題を抱える幼児から中学生くらいまでを対象にしたSSTワーク。 子どもの相談からできたオリジナルな内容。コピーしてすぐ使える。

人文・社会 第1位
●いま一番わかりやすい憲法入門書
檻の中のライオン
楾 大樹 本体価格1,300円
憲法は権力をしばるもの。憲法を「檻」に、権力を「ライオン」にたとえ、イラストで解説。立憲主義がわかる憲法の入門書。

【読者の声】

●ポスト・コロナの労働世界で実現を!!
新しい労働世界とジェンダー平等
浅倉 むつ子
 本体価格1,700円
立ち後れる日本のジェンダー平等。コロナ禍のしわ寄せを受けるケア労働を始め、格差是正を求める新しい労働世界実現の道を拓く。

●ジェンダー平等に取り組む方々からの感想

本間啓子(7.25女性の権利デーに取り組むとやま実行委員会)
【先ず、タイトル「新しい労働世界とジェンダー平等」を見た時、「新しい労働世界」とは何? と興味を持った。著者は、コロナ禍で社会の格差や不平等が増幅されたこと、女性が大半を占める「ケア労働」がエッセンシャル・ワークとしてその重要性が認識されたにもかかわらず、差別にさらされる過酷な労働であるという実態と問題点を示した。女性労働問題においてジェンダー平等に力点を置いた対策が必要と分かりやすく説き、プラスして、これまで(コロナ以前)見過ごされがちであった「ケア労働」に、正面から取り組もうとする意気込みが感じられた。
この本を読み終わり、「ホームヘルパーによる国家賠償請求訴訟」の見守りと、ジェンダー平等の実現に向け、「女性差別撤廃条約選択議定書の早期批准」への思いが一段と強くなった。老いも若きも男女ともに読んで欲しい著書だと思う。】

西村かつみ(ワーキング・ウィメンズ・ネットワーク(WWN))
【未曽有のコロナ禍の下、日本のジェンダー不平等の深刻性が浮き彫りになった。その問題点、そして“「新しい」労働世界”に向けての課題について、労働分野のジェンダー格差、エッセンシャル・ワーカーの厳しい実態、関わる法制度の実情など、明解に指摘されていて納得しながら読みました。EUなどの動きをみても日本の対応の遅れを痛感します。そして今、“日本のジェンダー平等を国際基準に!”の取り組みに、期待と希望を感じます。】

岡田仁子(ワーキング・ウィメンズ・ネットワーク(WWN))
【職場での男女の待遇格差やコロナ下での困難など、それぞれについては新聞や身の回りでも見聞きすることはあったが、それを全体像として示されると、より大きな問題が見える。そして、よくあるように、それに対して根本的な解決策が求められると締めるのではなく、後半では、具体的な解決策もあげられ、それには、自分の見方、考え方を見直すことも求められるように思う。】

石田絹子(ワーキング・ウィメンズ・ネットワーク(WWN))
【1990年代の中頃、住友メーカーを始め男女賃金差別裁判が10数件、同時進行でたたかわれました。その殆んどで男性は総合職、女性は一般職というコース別雇用がいかに女性の人権を踏みにじるものかを世に問いました。それから四半世紀を経て今、浅倉先生はこの本で「新しい労働世界」として固定された性別役割分担による現代の女性の巾広い労働現場をとりあげて、解決を政府に迫っています。
裁判終結後も元原告として、働く女性の地位向上に取り組んできた私には確信となる一冊です。】

【編集より】

あかりを灯す本『絵本はホスピタリティの宝箱』
福岡で小児歯科医院を経営する「医療法人元気が湧く」の皆さんが私設の図書館を開いたのは2012年のこと。開設を機に11月30日を「絵本の日」と制定する登録申請をし、2017年から開始した「絵本の日」記念アワードでは、「絵本にまつわるエピソード」を公募するなど、絵本を通した文化活動を続けてきました。
図書館の開館10周年を記念し、寄せられたエピソードのなかから30編を選び、一冊にまとめたのが本書です。親になってから思い出すあの頃のこと、甘酸っぱい記憶、祖父母の匂い、楽しいだけではない子育てのこと……それぞれの胸のなかに大切にしまわれていた、とっておきの「絵本とのエピソード」を収録しています。
俳優で人権活動家のサヘル・ローズさん、芸人でマンガ家の矢部太郎さん、歌手ですぐれたエッセイも書かれている白崎映美さんにも、特別エッセイをご寄稿いただきました。
絵本を通じてやりとりされる、多彩な感情や心の交流を読むことで、読者の方々のなかの絵本にまつわるエピソードを引き出していただけたら、そこからまた、温かい連鎖がうまれ続いていくのではないか、そんな期待を込めて作りました。本来、本には、「つなぐ力」が備わっているように思います。本文はオールカラーで、田之上尚子さんが原稿を読んでイメージを膨らませて描いてくださったイラストで彩られていますので、そちらもぜひお楽しみください。
「こんな時代に、ほんわか小さなあかりを灯してくれる本です」。
これは、見本を手にした白崎映美さんがTwitterに書いてくださった言葉です。多くの方の胸のあかりが、ポッと灯りますように。