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PCITの適応年齢とアジャスト版のこと

 私たちが最初に学んだPCITは、今ではスタンダード版PCITと呼ばれるようになっています。このスタンダード版は1970年代にアイバーグ先生がクリエイトし、その後じっくりと育ててきた治療で、長い年月をかけての実践と研究が進んでおり、エビデンスと高い効果率を得て世界中に広まっています。

 スタンダード版が効果を発揮する子どもの最適年齢は2.5~7歳と言われていますが、実際は2歳になるかならないかの幼児から、12歳くらいまでの思春期の入り口の子どもの年齢幅で用いられてきた歴史があり、成果を上げてきました。私も、2歳から12歳まで幅広くスタンダード版を使い、手ごたえを感じてきました。

PCITにはプトロコル(手引き)は共通で、ここは外さない!というコアスキルがあるのですが、一方で家族の特徴に合わせてセラピストが治療を「テーラリングする」、ということにも積極的に取り組んでいきます。テーラリングとは、仕立てること。つまり、寸法を合わせて、その家族に一番ぴったりする方法で治療をお仕立てするのです。

子どもの年齢や発達に合わせたテーラリングからスタートして、必要とあればスキルを加えて、検証を続け、やがて一つの形にまとまってきたものが、子どもの年齢や発達により適合した形のアジャスト版PCITです。現在、日本では2つの年齢アジャスト版PCITがリリースれています。

  • PCIT Toddlers(幼児のためのPCIT)。12~30カ月の幼児(トドラーズ)とその家族を対象としています。6カ月くらいの赤ちゃんでも前半部分のCDIであれば十分に取り組むことが出来ます。スタンダード版と子育てスキルはかなり重なっていますが、アタッチメント(愛着)の土台や足場づくり、親子の感情調整、親の言うことをきく練習などが加わって、予防的な観点がかなり重要視されています。アメリカとオーストラリアを中心にエビデンス研究が進んでおり、日本では2021年に最初のワークショップが開催され、セラピストも増えてきました。「PCITから学ぶ0~3歳のこころの育て方」(小学館、2023)は、このトドラー版をベースにしています。

  • PCIT for Older Children(年長の子どものためのPCIT)。8歳以上ー10歳を越える子どもたちとその家族が対象です。前半の子ども指向相互交流がやや大人っぽく工夫されているのと、後半のPDIが子ども参加型でトークンエコノミー法が積極的に取り入れられているのが特徴です。2022年2月に日本で初めて紹介されました。まだ研究の途上にあり、セラピストも少しずつ増えているのが現状ですが、ニーズは高く、最近の私へのオファーの8割はこのOlder Childrenになっています。子どもを尊重することの重要性を日々感じながら取り組んでいます。




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