米中貿易協議、中国が土壇場の「変節」と言われても守りたいものは?
米中の貿易摩擦について、これからどうなるかを考えるに当たり、中国の状況を考えておきたいと思います。今回の米国での貿易交渉は、最初のころには順調と報じられ、市場も楽観していました。しかし、唐突に中国が変節し、米国の要求に対応できず交渉が後退してしまいました。これが米国の既存の2,000億米ドル分を対象とした関税引き上げと残り3,000億米ドル分の追加関税の可能性につながってしまいました。
問題は国営企業優遇と補助金の廃止を中国側が形にできなかったことにありそうです。本来国営企業では経済の効率が悪いはずですし、補助金も中国政府はやめたいはずです。しかし、習政権が補助金などを停止した後の成長モデルを示せていないので国内を説得しきれていないようです。
これまで中国は、地方政府が地方の国営企業にシャドウバンキングで資金を融通したり、補助金を使って企業を誘致したりして競争し、経済を活性化してきました。まだ中国には付加価値の高い商品が多くありません。いま米国の要求に応じて公正な民間企業のみの競争で世界に打って出て敗北しては、経済成長が難しくなってしまいます。現状維持、時間稼ぎが必要です。この点で、短期的な貿易摩擦の解消は難しそうです。