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【読書感想】読書好きの成人男性が今月読んだ本からオススメ本を紹介する(9月編)

皆さんは、どんな方法で読む本を選んでいますか?

自分が読む本を選ぶ時には、以下のような中から選ぶことが多いです。

・友人が面白いと言っていた本
・ネット(書評動画や本の検索アプリ)をみて気になった本
・本屋や古本屋、図書館で目に止まった本
・自分の中でブームになっていることの関連本

こんな風に自分の中では、選ぶ方法の半分は「他人からの紹介」なんですよね。
これまでは、完全に自分のフィーリングで選んでたんですが、そうするとジャンルや傾向、作家などが偏ったりしちゃうんですよね。
その結果「なんかいつもと違うのが読みたい」「でも何を選んだらいいのかわからない」という状況に陥るわけです(夕飯で何食べるか考える時にこんな状況になることありませんか?)

そういう時にありがたいのが「他人からの紹介」です。

僕も、毎月そこそこの冊数の本を読んでいるので、「ちょっとこれはみんなにも読んでもらいたい!」「この本、おもしろすぎでは…?!」という本に出逢います。
今日は9月に読んだ本の中から、「これはオススメしたい!」「面白かった!」という本を紹介したいと思います。
「書評」とするほど大層なものではないので、あくまでも「読書感想」です。
皆さんが今月読む本を選ぶ時の参考になれば嬉しいです。

(9月に読んだ本リスト)

9月に読んだ本は以下のとおりです。
(※は一言メモです)

・氷菓(再読) 米澤穂信(著)
※青春ミステリといえばこれ!古典部シリーズの第一作!爽快かつほろ苦い読後感。

・表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬 若林正恭(著)
※芸人の旅行エッセイと侮るなかれ!

・死の迷路 フィリップ・K・ディック(著)
※古典SFで有名な著者の長編作品。結末が見えない展開が面白くももどかしい。

・愚者のエンドロール(再読) 米澤穂信(著)
※「毒入りチョコレート事件」を読んでの再読。オマージュにして同ジャンルの名作!

・折れた竜骨 米澤穂信(著)
※中世のイギリスを舞台にした特殊設定ミステリ。解決が著者の中でもトップを争う美しさ。

・デッドライン 千葉 雅也(著)
※哲学科の院生でLGBTの主人公が自分探しをしている印象。タイトルの解釈は多様。

・南極ではたらく :かあちゃん、調理隊員になる 渡貫淳子(著)
※読書会のテーマ本。「悪魔のおにぎり」開発者が南極生活を綴る。したいことできてます?

・嘘つきアーニャの真っ赤な真実 米原万里(著)
※幼少期にロシアの学校に通った著者が当時の同級生と再会し、今と昔を振り返るエッセイ。変化の時代を生きた3人の女性の物語。

・私のマトカ(再読) 片桐はいり(著)
※「かもめ食堂」のロケでフィンランドで過ごした日々を綴ったエッセイ。著者の視点が愉快。

・人間たちの話 柞刈湯葉(著)
※どんなに時代が進んでSFめいた世界になっても、人間の思考・感情はそこにある。

・ずうのめ人形 澤村伊智(著)
 ※「ぼぎわんが来る」の続編。ホラーよりミステリ。怪異が明らかになっていくのが楽しい。

・マリカのソファー 吉本ばなな(著)
 ※多重人格のマリカと彼女を支えるジュンコ先生のバリでの物語。軽やかな文章が魅力。

・敬語で旅する四人の男 麻宮ゆり子(著)
 ※4人それぞれに事情があり、旅を通じて変化していく様が良い。旅に出たくなる1冊。

(9月のオススメ本)

 9月に読んだ本の中でも、僕が特にオススメしたい!と思った本2冊を感想とともに紹介します。

「表参道のセレブ犬とかバーニャ要塞の野良犬」 若林正恭(著) 文春文庫

8月に読書会で行った「ビブリオバトル」でチャンプ本になったものの1冊です。
皆さんはビブリオバトルってご存知でしょうか?ビブリオバトルは「知的書評合戦」とも呼ばれ、各々が持ち寄った面白い本を5分間で紹介し、参加者が「読んでみたい」と思う本に投票し、チャンプ本を決定するというコミュニケーションゲームです。
読書会で行ったビブリオバトルでは、「旅」をテーマに実施され、2回戦に分けて実施しました。そこでチャンプ本として選ばれたのが本作です。自分も1票をこの本に投じましたので、早速入手して読書しました。

著者はお笑い芸人 オードリーの若林さん。
その若林さんが「新自由主義で感じる生きづらさから離れ、対局にある社会主義国であるキューバに旅立つ」という旅行エッセイです。本の中では、キューバの他に、モンゴル、アイスランドを旅した時のことも収録されています。

僕はあまりお笑い番組やバラエティ番組を見ないので、著者がオードリーの若林さんと聞いても全然ピンときてなかったのですが、読んでみると、これがすごい!

まずは言葉選びが秀逸!若林さんがこれまで感じていたであろう、生きづらさと周囲の環境を表現する言葉がピタッときていて、読んでいてもスーッと自分の中に入っていきました。キューバでは「自分自身」、モンゴルでは「自分と家族」、アイスランドでは「自分と他者」がテーマになっていて、それぞれのテーマに関する若林さんの思考・感情を言語化する力が、読んでいて気持ちよかったです。

印象的だったのは「競争の中にいるからこそ、安全基地として家族やリアルでのコミュニケーションが必要ではないか」という視点です。新自由主義が良いとか悪いではなく、今の世界を見つめて、必要なものを見つけ、その価値を認めること。これが、生きづらい世の中を自分の力で生きやすくするために大事な視点なのだと感じました。

また本作は解説も含めて読んで欲しい一冊です。解説はcrispy nutsのDJ松永さんが書いておられます(東京オリンピックの閉会式に出演されたことでも有名になりましたよね)。
DJ松永さんはこの本に寄せて、自分が若林さんのラジオのリスナーだったことや、自分自身も若林さんと同じような生きづらさを感じていたことを書いていらっしゃいます。
これは、まさに「個人的なことは政治的なこと」であり、個々人が抱える生きづらさは個人の問題ではなく、社会が問題を共有していくことなんだ、ということを強く意識づけられました。

人は誰しも、どんな年齢になっても「今の自分」に対する迷いを抱えるものだと思います。そんな迷いを抱えた時に、読んでほしい1冊です。きっと、その時のあなたの気持ちに寄り添う1冊になるんじゃないかと思います。


「人間たちの話」 柞刈湯葉(著) ハヤカワ文庫JA

著者の柞刈湯葉さんと言えば、代表作は「横浜駅SF」ですよね。日本SF大賞(2017年)の最終候補作にもなっていたとか。「横浜駅SF」は小説投稿サイト「カクヨム」でも公開されていたと聞き、「いわゆる異世界転生ものばっかりが投稿されているわけではないんだなぁ」と当たり前のことを知った僕です。

この「横浜駅SF」は、読書会メンバーも読んでいる人が数人いて、興味を持っていたのですが、あいにく図書館では貸出中。ということで、同じ著者の作品で短編集である本作を手に取りました。初めての作家さんを読む時には、色んなテイストの作品が味見できる短編集っていいですよね。

最近、古典SFを数冊読んで、オーバーテクノロジーや異星人との交流が描かれていたとしても、SFが切り取るのはあくまでも人間の在り方だということを感じていました。
そして、本作もタイトルどおり、どこまでも「人間たちの話」を描いています。もちろん、異星人や不可思議物体、ディストピアなど、SF作品ではお馴染みのテーマを取り扱っているのですが、その主人公はあくまでも人間です。

僕のお気に入りは表題作「人間たちの話」です。ある1人の科学者が、火星で発見された物体は生命体か否かを決定する学会発表を行うと同時に、科学者の姉が置いていった少年と「家族とは何か」を考えます。
この作品を読んで、「すべての現象は定義することから始まる」「それは生命体であっても、家族であっても変わらない」「定義するのは人間なのだから、人間が納得すればそれでいい」そんなメッセージを感じました。
宇宙という壮大なマクロの世界と、人間関係というミクロな世界がリンクする、そんなストーリーです。

ライトでありながら、人間の思考・感情にしっかりとフォーカスされたSF作品集である本作。SF小説に慣れていないという方でも読みやすく、オススメの一冊です。

(終わり)

以上、今月読了した本から、オススメ作品の紹介でした。
また定期的に「面白かった!」「これは読んでほしい!」という本をシェアしていきたいと思います。

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