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成人式の中止や延期に落ち込む人へ…神社で行う「成人奉告祭」のススメ

2020年の年末から2021年の年始にかけて、政府からは「Go to トラベル」の全国一斉停止が発表されました。
新型コロナウイルス感染症との長い闘いで疲れ切っている私たちですが、昨今の感染者数の推移を見るに、まだまだ予断を許さない時期が続くことになりそうです。

今回の年越しは、できるだけ人の行き来を少なくして感染拡大を防ぐということで、世の中には再び自粛ムードが漂い始めていますね……。

今年一年は、イベントや催事がことごとく中止や延期を余儀なくされ、皆様も「楽しみにしていたもの」「一生懸命準備してきたもの」が目の前で幻となってしまい、涙を呑むことも多かったのではないでしょうか。

そんな中でも、ひと際悲痛な声があちらこちらから聞こえてきたのが、成人式の中止や延期です。


一度きりの「成人式」へ抱く想い

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成人式は、新成人を迎えるご本人にとっては、一生でたった一度の晴れの日です。
心の上でも、自身が「大人」の仲間入りを果たしたことをハッキリと自覚することができる日ですし、これからの未来を前に身の引き締まる想いや、誇らしいようなくすぐったい気持ちも味わうことでしょう。

大切な家族や恩師などに見守られ、かけがえない仲間と共にこの年を迎えられたことを皆でお祝いすることができる、大事なひとときになるはずでした。

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「振袖が届いてすごくうれしいけど、成人式中止にならなければいいな」
「なぜ今年だったんだろう……哀しい。皆で集まって、お祝いしたかった」
「一生懸命育ててきた、子どもの大事な節目だったのに。晴れ姿が見たかった」
「なんとなくそうなる気がしていたけど、やっぱり中止。いろいろ準備してきたのにな」

成人式やそれに伴う準備を行ってきた関係者にとっても、やるせない想いが溢れているはずです。
それぞれの「当事者」が抱える、やり場のない想いの片鱗に触れるたび、胸の痛みを覚えずにはいられません。

もちろん、今は大手を振って外を歩いたり、大勢で集まったりすることが難しい時期ではあります……。
しかし、そんな中でも成人を迎えた方とご家族が、その「めでたさ」と「ありがたさ」をしみじみ噛みしめるひとときが持てたら良いなと思うのです。

そこで今回の記事では、神社の巫女からそっと「成人奉告祭(せいじんほうこくさい)」というものについて、ご紹介しておこうと思います。


神様に晴れ姿をお見せする「成人奉告祭」

日本人の心と生活の中に脈々と受け継がれている文化として、人生の節目節目で神社に足を運び、神様へご挨拶をするタイミングがたくさんあるのをご存知でしょうか。
――それが「人生儀礼」と呼ばれるものです。

たとえば、初宮詣(お宮参り)や七五三詣、他にも神前結婚式に結婚奉告祭、厄除け、還暦などの長寿祝い――これらはその一例にすぎません。
人が成長し一生を生きてゆく中で、誰もが順番に通過してゆく「ならわし」になっています。

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その中で、現代では二十歳を迎えた人が「成人」として認められる世の中ですから、この節目に神様の前では「成人奉告祭」を行います。
これは御祈祷(ごきとう)と言って、皆様にいつもよりさらに神様のお近くに行っていただき、皆様のお気持ちや祈りを神職が代わりに「祝詞(のりと)」という特別な言葉を使って神様に届けるのです。

特に人生の中で「おめでたいこと」とされる人生儀礼に際しては、その日を無事に迎えられたことを神様に「ご奉告する」のと同時に、ここまで見守り導いてくださったことに対する「感謝をお伝えする」ことが大切。
赤ちゃんが初めて神社にお詣りする「初宮詣」も、三・五・七歳の節目で行う「七五三詣」も、同じ意味があります。

たとえばあなたが生まれた場所で、小さく儚い命だった赤ちゃんの頃から人生を見守ってくださる「産土神様」も、たとえ目には見えなくともあなたを支えてくださっている存在。
そして「氏神様」とは、あなたの住まう土地(一番身近な場所)を守ってくださっている神様ですから、その恩恵に与ってここまで無事に過ごせたことが、とてもありがたいことですよね。

ですから、あなたがこれまでご縁をいただいた神社には、ぜひこの晴れの日にこそ足を運んでみてください。


晴れ着で神社に出かけてみませんか?

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成人式では、多くの方が「振袖」「袴」に袖を通すことが多いですよね。
その姿はご自身もとてもうれしいことでしょうが、親御さんが見ればまた感無量であるはず……。
そんな大きな意味では、私たちの「親」とも言うべき神様たちも、一人ひとりの成長と晴れ姿を見て喜んでくださっているに違いありません。

たとえ、お住まいの地区で行われるはずだった成人式という式典は中止や延期になってしまったとしても――。
皆様一人ひとりには「晴れ姿」をお見せして感謝を伝えるべき存在が、きちんといらっしゃるのです。

そのためにも、ぜひあなたにとって大切なご家族やご友人と一緒に、素敵な振袖姿や袴姿で(もちろんスーツやワンピースであっても同じように)神様に会いに行ってみましょう!

ちなみに、成人奉告祭は必ずしも「成人式」の当日に出かけなくてはならないわけではありません。
成人をされる年の間に行っていただければ大丈夫なので、昨今神社でも推奨されている「分散参拝」といった意味でも、できるだけ密になる時期を避けて足を運んでいただけます。

お誕生日を迎えてから、成人奉告祭をしに神社にいらしていただくのも素敵ですね!


思い出の刻み方はひとつじゃない

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この一年間は、新型コロナウイルス感染症の影響で、本当にさまざまな変化がありました。
もちろん、その多くが皆様にとって「望まぬ変化」で「やむを得ぬ変化」だったことでしょう。

でも、この一年の日々を、よーく振り返ってみてください。
――そのすべてが「悪い日」や「嫌な日」などでは、決してなかったはずです。

人は弱さや脆さも抱える生き物ですが、ちゃんと心の奥深くに強さや強靭さも兼ね備えているもの。
生きる中で互いに支え合い、心の持ち方や物の見方を変えてみることで、幸せや喜びを発掘することもできるはずです。

成人式が中止や延期になってしまった方も、なにか「特別なこと」を考えて実行してみるチャンスなのかもしれません。
これまで育ててくださった保護者の方にも感謝を伝えながら、一緒に神社に御参拝をしていただくのも、素敵な思い出になるはずですよ!


文/巫女ライター・紺野うみ


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