有酸素と無酸素のピラミッド
持久系アスリートのパフォーマンスは土台部分にあたる有酸素性能力とその上に乗っかる無酸素性能力の二つで成り立つ。主張したい大事なポイントは①パフォーマンス全体における土台(有酸素能力)の割合が大きいこと、②無酸素性能力は土台の大きさに依存しているということ。
有酸素性能力
低い強度の運動を継続する能力。強度の目安としては会話を無理なく続けられるかどうか。息が上がって会話が難しくなってきたら無酸素性の域に入っているかも。有酸素性ではその名の通り酸素を使って主に脂肪を分解してエネルギーを生み出す。エネルギー代謝のシステムとしてはTCA回路や電子伝達系回路という。鍵となるのは毛細血管の密度、ミトコンドリア、遅筋線維等。レース強度に比べるとかなり楽なので軽視されがちだがこの土台作りが何よりも大事。なぜなら土台の大きさ次第でその上の無酸素性の能力のキャパが決まってくるからである(理由は後述)。
土台づくりは数週間や数ヶ月で完了するものではない。むしろ終わりはない。効果が出るのはゆっくりだが競技を続ける限りやればやるだけ少しずつ伸びていく。だから30台後半や40台で強い選手が多いのかもしれない。トップ選手でも練習量の80%はこの強度の低い土台づくりに費やしている。
無酸素性能力
バーティカルやミドルレンジのレースならこの域がレース強度になるだろう。そしてトレーニングでもきつくて、けど強くなった感じがする強度。
ポイントは解糖系、嫌気性(酸素がいらない)、乳酸、速筋。
糖を燃料にして解糖系というエネルギーシステムが使われる。これはミトコンドリアではなく細胞質基質という場所で行われるのでミトコンドリアの能力は関係しない。なので酸素を必要としない。ちなみに酸素がない(足りない)から無酸素と言うのではなくて、酸素がなくても働くという意味。もし運動のエネルギーを全て解糖系に頼ったら持続できる運動時間は約30秒〜60秒と言われている。陸上の400mの世界。が実際にはどんな運動強度でも無酸素性と有酸素性のシステムどちらも稼働しており強度によって割合が変わる。なので100m走でも少しは有酸素性からエネルギーを作っているし、100マイルレースでも解糖系は使われる。
高強度練習の前に土台作りが大事な理由
解糖系が働き始めると血中の乳酸値が上昇する。そして乳酸が溜まりまくるとギブアップとなる。では、解糖系が使われ始めたら遅かれ早かれゲームオーバーなのか?否。ここで助けてくれるのが有酸素性のシステム。有酸素性のシステムは脂肪だけでなく乳酸もエネルギー源として使うことができる。つまり解糖系で生まれた乳酸(実際には乳酸になる前のピルビン酸)を再利用してエネルギーに変えてくれる。高強度の解糖系はミトコンドリアと関係ない外で起きているがそれを長く持続するためにはミトコンドリア、有酸素能力が必要だということ。土台作りがしっかりできてないとインターバルトレーニングをやろうとしても最初の数本でアップアップにになってしまい目標のセット数を完了できない。そう感じたらまずは土台づくりから見直すのもいいかもしれない。
何事も基礎が大事!再確認できた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?