#3 ゆらゆら

初演が終わるまではやることが多すぎてとにかく忙しく時間が作れなかったが、終演後にもしばらくなにか書こうという気力が持てなかった。
那覇での初演の幕が開けて、終わって、10日以上経って、でも自分はまだ家に帰っていないせいもあり疲れがどうにも抜けない。
が、そろそろ体の活動を再開させないといけないという気に突如なったのでここに書いてみる。東京公演までに今回と、あと2回くらい書くのが目標。

作品のための稽古についてはすでに触れているのだが、それ以降も聞かれることが何度かあったので、初演を終えてのまとめの意味をこめてまた書いてみる。

各キャストとは対面でそれぞれ、5時間の稽古を8回行なった。基本的には稽古場には演出のぼくとキャストの2人きりだったので、すべてzoomの録画機能にて録画し、各スタッフにはプランの参考にしてもらった。制作スタッフは時間が許す限りリアルタイムで見ていて、ほかにイギリスの研究者が見学したいということだったのでzoomに参加してもらった。
劇場入りの4日前より那覇にキャストが集合し、6時間程度の稽古を4日間行なった。それぞれのキャストの進捗状況を見てもらう意味もあって、まずはそれぞれが一人でやって見せ、そのあと合わせた。3日目、4日目は通し稽古ができるようになった。同時にテクニカルスタッフも続々と那覇入りし、4日目の通し稽古はほぼ総スタッフが通し稽古を見た。
劇場入り初日である舞台仕込み日はキャストは完全オフ。ぼくは字幕作成作業等に追われつつ、途中で舞台設営の進捗を見たり、意見を言ったりした。
劇場入り2日目はキャストが入り、舞台にフィットさせる稽古および通し稽古。テクニカルスタッフも通し稽古に合わせて照明効果、音響効果、映像・字幕出しをしてもらう。
劇場入り3日目は流し稽古と本番と同じ環境でやる通し稽古(ゲネプロ)。
劇場入り4日目〜6日目、本番。

通し稽古2回目にして完成度が高いと思った。劇場に入り、実際の舞台でやってみても、どんどん精度が上がって行った。つまり良く出来た。

終演したいま思うこととして、
・今回のような作り方はあり
・ただし、台本やキャスト、スタッフワークを選ぶだろう
ということ。

台本に関しては、こういうやり方(バラバラに稽古して最後で合わせる)をすることが執筆前から決まっていたので、ある程度それに対応できるような構造に(自然と)なった、とも言える。
キャストについてもぼくと年齢層が近かったとか、キャリアがけっこうある俳優陣だったとか、意見を言いやすい環境を作れる距離感だったとかがあるんだと思う。人は選びそうだ、と思った。
スタッフワークも、最初の段階からこのやり方については納得してもらっていたので、混乱があったようには思えなかったし、それぞれがとてもいい仕事をしてくれているように思う。

今回、俳優についてもスタッフワークについても、できるだけ口出しをしないように心がけた。台本をどうやって書いたか、セリフの背景に何が想定されているのかなどといったことは話したが、それは演出家というより、劇作家としての視点であり、あくまで手がかりは演出家のぼくではなく台本に見つけてほしい、という意識で接するようにした。だから、演出家としては俳優に疲れを溜めさせないとか、セリフの間違いを指摘するとか、映像や字幕が見えなくならないように立ち位置を考えていくとか、自分しか判断ができないかもというところについて言及するくらいに極力努めた。あ、振り付けは一応した。
演出家はたぶん俳優といるときが一番長いので、いろいろ言いたくなってしまうし、いくらでも細かいところが気になってしまう。だけど、細かければ細かいほど、それにこだわるのはなんのためなのかわからなくなる、とこの頃は思っていて、だって基本的に1回しか見ないお客さんが気にならないようなところを気にしているんじゃないかと思ってしまうから。
だから、「餅は餅屋」のイメージ、実際に舞台に立つのは俳優なので俳優の感覚をなるべく大事にしたいし、テクニカルもその道のプロたちなのだから、できるだけ任せられるほうがいい。
自分としては、どうなると完成なのかわからないまま、しかし、全体を俯瞰することだけはおかげでできた気がする。なんだかわからないままではあるものの、良く出来たと思っている。

ようするに各部署がとてもがんばった、というのが一番なのだと思う。
まとめてみたが、けっきょく本質的なことが書けてないような気もする。

普段、ぼくは俳優に、「これをやったら正解」というのを決めないでほしいと要望してきた。場に合わせて常に微調整をし続ける、ということ求めることだったが、俳優にとって正解がないのは大変なことなのだろう。なにせ明確な目標が持てないのだとすれば、達成感を感じにくいということでもあるのだから。
今回自分もようやくそういうふうになれたのではないかと思う。なにか揺らいでいるものを扱うような作品、作り方、できるだけ何もしないように努めること(なのにすごい忙しかった・・・)をした結果、達成感は感じない。が、良い作品はできた、みんなのおかげ感謝、という感じ。

……まとめてみたが、まとまらない。読みづらい文ですみません。

次は稽古場から離れて、今回の執筆プロセスについて書いてみようかなと今は思っている。。

「イミグレ怪談」
2022/12/15(木)-19(月)@東京池袋、
2023/1/28(土)・29日(日)@京都
https://okazaki-art-theatre.com/kaidan/

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