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「9月入学」「4月入学」併用制について

昨年4月、コロナ禍で全校一斉休校の時、「9月入学」導入論が浮上しました。9月入学導入論は、元々さまざまな方が提唱されてましたが、コロナ禍に関連して提案したのは、おそらく私がダイヤモンドオンラインに投稿した論考が最初だったでしょう。

その後、この議論はたち消えになりましたが、コロナ禍への対応ではなく、日本の教育、人材育成のために、継続すべき議論であると考えます。

私は昨年6月、日本経済新聞「私見卓見」で、9月入学を発展させた「9月入学」「4月入学」併用制を提唱しました。しかし、その後この議論を展開することができないでいました。ダイヤモンドオンラインでは、なかなかこの議論を展開するタイミングを得られなかったからです。

そこで、今後noteで議論を始めてみたいと思います。

昨年6月の「私見卓見」を以下に再掲載します。すでに、私の頭の中では、その時よりも議論を進めているのですが、まずはこれを議論の出発点とします。

『「9月入学」との併用、議論を』

新型コロナウイルスの感染拡大による休校の長期化で、「9月入学」についての議論が活発化した。政策課題にも浮上したものの、政府は当面、導入を見送る方針を決めた。しかし、国際化を進めている大学では、既に4月入学と9月入学を併用している。今後、4月か9月に一本化するのを目指すのであれば、むしろ後退になりかねない。

中長期的には、大学にとどまらず、小中高でも併用を探るべきだ。具体的には4月から9月生まれまでの児童・生徒を4月入学、10月から3月生まれを9月入学とするのはどうだろう。現在のいわゆる早生まれの子は、心身の発達が遅れていることで、成績上で不利になる可能性がある。こうした不公平の解消にもつながる。

併用が導入されると、例えば小学校では現在の2倍の「12種類の学年」が存在する一方、1つの学年の人数は半数となる。学年が2倍になる複雑さを緩和するため、英国の小学校の制度は参考になる。英国には1~2年生、3~4年生、5~6年生を1つのクラスに編成して対応している例がある。

日本の小学校でも2学年が一緒に学ぶクラスを編成したらどうか。2学年一緒のクラスだと、全員一緒に先生の話を聞く画一的な授業スタイルは難しく、個人の主体性をベースとする学びに変える必要がある、英国では対面授業と並行し、児童が1人1台タブレット端末を持つ。教師は端末を使って宿題などの課題を与え、児童の習熟度を掌握しているという。

日本でも、コロナ危機に伴う休校に対応してオンライン授業を実施しており今後、個人の習熟度を重視する学びに生かすべきだ。習熟度が高い児童・生徒については、「飛び級」制度を採用し、上級生のクラスに編入させる考えもある。中学や高校は大学のような「単位制」とし、4月入学でも9月入学でも所定の単位を取得した時点で卒業し、進学できるようにする。

新しい時代に求められるのは、明治から第2次大戦を経て続いてきた集団的な教育制度を、多様な学びの場へと変えることだ。9月入学の議論を、教育の長期的な大改革を考える絶好の機会とすべきだろう。

(日本経済新聞2020年6月29日、『私見卓見』)

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