親父と俺:(10)また走れなくなった
俺は小学校に入学した。入学前の知能テストの際に、ちょっとしたトラブルがあったが、特殊学級に入れられることはなかった(笑)。
入学直後については、あまり悪い記憶がない。やや挙動に癖のある、今でいう「発達障害気味」の子どもではあった。
また、大洲小学校に入学すると、私立の「帝京幼稚園」と、市立の「大洲幼稚園」の子どもが混じることになる。多数派であり、小学校に併設していた大洲幼稚園の子は、すでに入学時に人間関係ができている。そこに交じっていくという形だったのだが、問題が生じた記憶はない。
俺は癖が強い割には、人間関係はそんなにヘタではなかったように思う。
ただ、こんなことがあった。これはよく覚えてるんだよなあ。
5月くらいだっただろうか。体育の時間だった。かけっこをすることになった。男女混合で、クラス全員が横一列に並んで、よーい、ドンで30メートルくらい先まで走ることになった。
俺は自信満々だった。だって、幼稚園の年長組の時、親父の特訓で運動会でかけっこ一番になったでしょ。
みんな並んでよーい、ドンとなった。一斉にスタート。俺は一番にゴールを駆け抜けると思っていた。
ところが、ドンの直後、隣の気の強い女子と衝突してしまった。
「ちょっと、なにしてんのよ!」
と、どなられた。気の弱い俺は、覚えて、走らないでその場に座り込んで、終わった。
それから、また走れなくなった。
どういうわけか、いまだにわからないのだが、体育の時間、いくら走ってもドンケツが続いた。足がうごかなかったんよね。
走るだけでなく、体育全般、できなくなった。なにをやってもどんくさくなった。
専門的に、どういうことなのかはわからない。だが、今思えば、女子とぶつかって怒鳴られて、全身が委縮したのかなあ。
1学期の終業式。教室で先生から通知表をもらった。国算理社は当然「5」。それよりも、体育の「1」がショックだった。
泣いて帰ったのを覚えている。