『グッド・バイ』を読んで
昨年、刺繍シーンが描かれている小説をテーマにした『刺繍小説』という本を出版した。
今年はこの『刺繍小説』のプロモーションを更にがんばる気持ちでいたのだけれどすこし難しそう。でも、昨年だけでもこの本をきっかけにすてきな方にたくさん出会ったので、そのお話をちゃんと書き留めたいとずっと思っていたのでした。
なかでもたのしかったのは、俳優の岡田准一さんのラジオ番組【GROWING REED】におじゃまして、じっくり一時間お話をしたこと。
岡田さんは太宰治が刺繍を描いた『女生徒』に特に注目されていて、太宰の話を中心にした。その流れでサラサラサラとなにか暗記の文章をそらで読むような一幕があって、「あ、これは『グッド・バイ』かな?」と思ったけれど聞きそびれてしまい、収録だったので放送で確かめようと思っていたらカットされていて謎のままになってしまった。
ふだん読書をするとき「自分が演じるなら」など一切考えないという話も印象的だった。(この話は放送されましたね)創作物へのリスペクトを私の作品にも示してくれたように、芝居と切り離した個人として物事に触れることが彼自身を深め、それが芝居の魅力やスイッチの切替に繋がってるんだろうな〜などということを考えながら六本木のスタジオをあとにした。岡田さんとは居酒屋でたまたま隣り合わせた客同士、読書談義をしたような気軽な感じでおかしかった。いい番組です。
『グッド・バイ』といえば言わずと知れた太宰治の未完の名作だけれど、私は食べ物のシーンが特にすき。鶏のコロッケ、マグロの刺身、支那そば、ウナギ、よせなべ、牛の串焼き、イチゴミルク、がいっぺんに食べられるってどんな店だろう? 織田作之助の小説や講談なんかでも、この時代のごはん屋さんはいつも魅力的。
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