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人に寄り添う(たっつんさんのXから)

 X(旧Twitter)でフォローしている「たっつん(@tattsun_cw)」さんのポストが「なるほど」と思ったので紹介させていただきます。

老人ホームの16時。

認知症のU子さんが
「 おうち帰らなあかん! 」と、ウロウロし始める。

入居してこられて1週間。

夕方になると
エレベーターに乗り込もうとしたり、
フロア内をずっと歩き回られて、
おうちに帰ろうと出口を探される。

『 ここにお泊りですよ 』とお伝えしても、
「 こんなところにいてる場合じゃないんよ。
早く帰らせてぇな! 」と、
全く聞く耳を持ってくださらない。

ウロウロは2時間以上続き、
最終的には疲れてソファにへたり込んで
帰りたいと思ってたことも忘れて終了、
というパターンだった。

ただでさえ夕食の前後で忙しい時間に、
U子さんだけに
職員1人が付きっきりになるわけにもいかず、

かといって目を離してしまうと、
ホームを出て行ってしまわれる可能性もあって
みんなが途方に暮れていた。

そこでぼくはある作戦に打って出た。

それは、U子さんの頭の中の世界に合わせて
共に行動してみるということ。

U子さんのウロウロが始まったタイミングで、

『 ぼくがおうちまで送って行きますね 』

とお伝えして、一緒にホームを出てみたのだ。

U子さんの隣りにつきながら穏やかに
『 おうちどこですか? 』と話しかけるが、

U子さんはぼくをにらんで
「 ついてこんでええ! 」
と怒鳴りつけてくる。

こけそうな時などに
すぐに手が届く距離でついて歩き、
どうしたらいいか迷ってる感じの時に
話しかける。

U子さんからしてみれば、

” 歩いておうちに向かってるけど、
今、どこにいるのかわからなくなってきた。

迷ってたら、誰かわからんけど
男性が話しかけてきた。
だから追い払ってやった ”

こんな感じかな。そしてこれを無限ループ。

ただ
これをひたすら続けていると、

U子さんがぼくの顔を見るたびに、
だんだんと
安心しておられるような感じが伝わってきた。

そんな散歩を約2時間。
最後はヘトヘトで公園のベンチに座り込まれたので、
ホームに電話して
事務員さんに車で迎えにきてもらう。

その間、持っていってたお茶を
U子さんに飲んで頂くと、

グビグビグビグビーッ

「 すんまへんなぁ 」
と笑顔で言ってくださった。

おうちに帰ろうとされたことを忘れておられ、
車で一緒にホームへ戻った。

翌日も夕方に「 おうち帰る! 」が始まった。

『 送っていきます 』と、また2人でホームを出て
1時間30分程度で車のお迎え。

「 すんまへんなぁ 」
までがちょっと早くなった。

3日目は、1時間ちょっとのお散歩で
ホームへ歩いて戻った。

この時は夕食前に帰ってこれたので、
職員と一緒に食事の準備を
手伝って頂くことにした。

笑顔で 「 ええよ! 」 って
袖をまくり上げてノリノリだった。

” さっきまでの「 おうち帰る 」 を
すっかり忘れてるやん ”
と、心の中でツッコんだ。

4日目のお散歩は30分ほど。
『 夕食の準備あるから帰りましょか? 』
の声かけに、

「 そうやな 」 の返事。

5日目で
「 おうち帰る! 」 がなくなった。

反対にぼくがお散歩の声かけをすると、

「 今から行ったら、
この人らの晩ごはんに間に合わんがな 」
と笑顔。

それ以降は、みなさんの食事の準備をすることが
U子さんの日課になり、

夕方にウロウロされることはほとんどなくなった。

U子さんが食事のお手伝いを
してくださる時の為に用意した
花柄のエプロンは、
食器棚の横につけたフックに
ひっかけておくことになった。

今日もぼくの長文をお読みくださり、
ありがとうございます。

U子さんがおうちに帰りたかったのは、

” 家族が帰ってくるまでに
夕食の準備をしないといけない ”

という、妻として、母親としての思いが
あったからかなと想像します。

U子さんの世界にオジャマして否定せず、
ゆっくり時間をかけて落ち着いて頂く。

その上で、夕食の準備の対象を
『 家族 』 から 『 この人ら 』 に
変換できたことで、U子さんの
夕方からの心の焦りが消えました。

U子さんは
『 人の役に立っている 』 ことが
よほど嬉しかったのか、
職員の仕事をいろいろと手伝って下さり、

その後、体調を崩されるまでの数年間、
ほんとにイキイキとした笑顔で過ごされました。

Xユーザーのたっつんさん: 「老人ホームの16時。 認知症のU子さんが 「 おうち帰らなあかん! 」 と、ウロウロし始める。 入居してこられて1週間。 夕方になると エレベーターに 乗り込もうとしたり、 フロア内を ずっと歩き回られて、 おうちに帰ろうと出口を探される。 『 ここにお泊りですよ 』 とお伝えしても、 「」 / X

 その人を思いやり、寄り添ってあげる。介護の現場だけでなく、いろんな場面で意識したいなと思いました。

 介護士歴19年のうち、介護部長を16年やっているたっつんさん。介護についての投稿をまとめた書籍がKADOKAWAさんより発売中です。


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