紹介したいnote記事「夕陽」
冬月剣太郎 猫詩人🐈さんの「夕陽」という記事を紹介します。
「灰色の空のした、不意に彼女の面影が蘇る。あの日、彼女とわたしは肩をならべて、崖のうえからあかね色に輝く海を視ていた」
場所は日本海の断崖でしょうか。何となく、2時間ドラマのクライマックスの情景が浮かびます。
「ふと気がつくと、彼女が蝶のように崖からふわりと飛びおりた。彼女に惹きずられるようにしてわたしが身がまえたとき、海から突風が吹いてきてわたしを押しとどめた。突風はいつまでもわたしの心を叩きつづけた」
実際にあったのか想像なのかはわかりません。「飛び降りた」とありますから、事故で転落ではなく自らの意志だったのでしょう。
二人が恋人同士だったのか、そうでなかったのかはわかりませんが、目の前で人が自殺すると言う体験はかなりの衝撃です。
「崖下の波打ちぎわに横たわる彼女の姿を、わたしは夕陽が沈んで暗くなるまで視ていた。あれから五十年の歳月が流れた。いつしか彼女は、わたしのなかで夕陽になっていた」
高い所から落ちて亡くなったのであれば、体にはかなりの傷痕が残るでしょう。手足がありえない方向に折れ曲がったとしても不思議ではありません。
高い所から下を見るのも怖い私にとっては、暗くなるまで見続ける事は出来ません。しかも、変わり果てたその姿をずっと見ているなんて考えられません。逆に言えば、考えられない程のショックを受けたからこそなのかも知れません。
私の知り合いも、自殺の名所と呼ばれる所から飛び降りました。妻と幼い子どもを遺し、どうして逝ってしまったのか。どうして相談してくれなかったのか。その橋を通る度に、15年経った今でも彼の事を思い出します。
思春期の頃から希死念慮に悩まされてきた私ですが、今日まで何とか生きる事が出来ました。身近な人が二人も自ら命を絶った事が、私に思いとどまらせてくれたのかも知れません。
遺された人の気持ちを教えてくれた彼らの冥福を祈ってやみません。
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