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「しんどくない読書感想文」について

読書感想文に迷う学生たちの力になりたい

過去、私は公共図書館に勤め、学校図書館に勤め、書店勤務時代は児童書と文芸書の売り場に立った。
そのどこに勤めても、毎年見られたのは、夏休みに学生が読書感想文に難儀している姿。
それを見て、何かできることはないか…と思い立ったのがきっかけの感想文アドバイスである。

2011年から、Twitterで連投ツイートの形をとりアドバイスを始めた。2014年からは、分かりやすさ重視で画像一枚の投稿をするように。
個別で子ども達や親御さんの相談にものった。
すると段々、書店員や司書、学校関係者の方からも声がかかるようになった。掲示や配布の許可を求められたら快諾した。こんなものでよければ…と。
公の場で掲示されている事を考えて、毎年改訂では言い回しも少しずつ変えていった。

2018年の改訂作業中、もう自分に出来ることはやり尽くしたと感じ、これを最後にしようと決める。

あれから1年が経つ。約8年間の集大成を、ここでご覧いただきたいと思う。

感想文が学生のトラウマになっていいのか


この活動をしていてよく相談されたのが
「本は何でもいいって言うけど、先生に「こんな本ダメ」って言われちゃう」というパターンだ。
子ども時分、心ない大人から言われることの多いだろう「こんな本」というセリフ。それは本を選んだ子どもの自我に対する否定と同じだ。本人は、すごく傷つく。
例えば読書感想文の本を一生懸命選んで、こう言われたら。何度も読み返す大好きな本を、こう言われたら。自分で選んだ本を読みたくなくなる。読書感想文の宿題が、トラウマになってしまう。
それは「読書感想文」の目指すところでは、絶対にない筈だ。
読書感想文が夏休みの最後まで子どもたちを苦しめる宿題になるなら、サクッと終わらせて「しんどい」記憶に残らないようにすればいい。

どうしたら大人の「よいこの読書」という欺瞞に負けず、一発で無難に突破できるんだろうか。どうしたら「しんどさ」を感じずに、宿題の感想文を書き上げられるだろうか…。
私は、大人から「ダメだよそんな本!」と言われがちな子どもたちが、それをうまく躱すためのアドバイスをしていた。
ものすごく要約すると、こんな↓感じである。

本当なら本は何でもいいんだけど、悩むなら感想文を書きやすい本を選ぼう。
本を選んだら、読んでみて。
自分の感想はこうやって引き出そう。段落のつけ方のコツもあるよ。
推薦文じゃないから、あらすじはいらないよ。
書いた感想がヘンテコな文章になってないか確認したら、完成!宿題終わり!いい夏休みをね!

正直、こんなもの根本的な解決にはならない。これで賞が取れる作文になるわけでもない。それでも、心ない大人に対する処世術、ケアのひとつとして、私ができることを…と考えての活動だった。

しんどくない読書感想文 時系列順画像

2014年

初出は2014年6月。2011年から毎年連投ツイートだった読書感想文のアドバイスを、初めて画像一枚に。ハガキサイズ2枚に粗めの一発手書き。フォロワーの学生に向けたもので文章がフランク。

2015年

初出は2015年6月。B6サイズの紙に手書き。前年のものよりも見易く、という気持ちは伝わる…?
公共図書館長から声がかかり、掲示のことを意識するように。まだ文章は粗く洗練されていない。

2016年

初出は2016年6月。PCで作成し、実寸はA4判一枚。文面は学校等で掲示、配布される可能性を念頭にし改訂。たとえわら半紙に印刷されてもなんとか写るように努力した。この年からTwitterでかなり読まれるようになり、「クソリプ」も大量に食らう。無論、寄越すのはnot for youな類の方。

2017年

初出は2017年7月。引き続きPCで作成。前年に食らったクソリプを回避するために文言を見直し、足したり引いたりで色々と工夫している。
実はこの年、作成1ヶ月前に帝王切開で出産しており、術後の傷も痛む中新生児を抱えてこの活動をしていた。無茶をした自覚がある。

2018年

初出は2018年7月。「これを最後の改訂」と決めて作成。小中学校の国語科学習指導要領と教科書等を参照した上で、恐らく授業でも触れているであろう「作文指導」に近いものを目指した。これが読書感想文アドバイス活動の、集大成である。

読書感想文が苦手な学生のために願うこと

私は、子どもたちの感性は自由でいて欲しい。味方でいてあげたい。
若い子たちに、本を好きになって欲しい。
読書がどこまでも楽しいものであって欲しい。
私にとって本が人生の友となったように。
だから、読書感想文に過剰な「しんどさ」を感じなくていい。
こうしたら君の「しんどい」は楽になるかもよ、と伝えたかった。

おせっかいおばさんの、小さなエール。

思えば、公共図書館勤務で初めて子どもたちと関わって、今年で13年になる。

もう図書館司書でも学校司書でも、書店員でもなくなった。
今はひとりの子どもを持つ、ただの母親。

でも、この活動で少しは、誰かの役に立てただろうか…。
そうだといいな、といつも思う。

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