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流転.

7月30日,ようやく前期の中間発表が終わり事実上夏休みへ突入.既に就活の終わった彼氏は学生最後の夏休みとなるであろう.大学院へ進学し,ストレートでやってこれなかった私はまだモラトリアムのようにD進(博士後期過程)を選択,芸術工学の博士号を取得するためだ.
私の専門はグラフィックデザインであるけれど,言うほどデザインスキルもなく,課題や多少本の装丁デザインや展覧会のDMデザインなどをバイトとしてやらせてもらう機会があってそれをこなせるくらいのスキルくらいしか持っていない.休学中にしていたイラストレーターとしての作家活動時のポートフォリオ制作や画集制作でのスキルがあるくらいだ.デザイナーにはなりたかったけれどなれないだろうと思っていたし,学部の卒制辺りからの精神的ダメージによる症状の悪化により余儀なくされた通院,治療もまだ継続中である.勿論当時に比べれば改善されているのだが.

復学して,院生としてまた研究生活に戻ったはいいのだが同期は年下.そしてそろそろインターンが,だの就活が,だのと話す.復学して早々社会復帰を考えられるほどの余裕もなく,またデフレスパイラル的感情に陥りそうだった時だった.
復学前の同期はひとつ学年が上で,それでも私が一人で研究室にいると向かいの研究室の当時の同期がアヲイさん,飯一緒にどうっすか?って誘ってくれるもんだから嬉しくて,あと研究室の同期も優しかったのは本当に助かった.就活は,一旦考えるのをやめて研究に没頭するようになるとそれなりに成果はあったし研究発表でも副査の先生に興味を持ってもらえた.
何より分析して知るっていう方が性に合っていたんだと思う.小さい頃からなんでなんで星人だった私は,デザインという分野においてもそうであり,また同時にそのデザインをしたデザイナーの思想やその時代背景を探ることで歴史に繋がっていき,また面白くなった.だから就活はせずに研究の質を高めることに専念し,先日博士後期過程へ進学するための院試を受けた.

初めての学会参加も,出だしは遅く今年だ.業績もない.これから作っていくしかない.過去はもう変えられないのだから.両親は父の海外赴任により国外だし姉は医療従事者で実家にたまに戻ってもいないのがデフォ.何より不定期なのだ.

そんな生活をしていた中で,人生の転機ともいうべき出来事が起きた.女子校出身,恋愛など縁もなく生涯独り身で食っていくんだと思っていた私に彼氏ができた.向かいの研究室である.私が今治療中であることも知っているし,最初は共通点が多すぎてヤバい,運命かもって思っちゃったくらい高揚した.しかしそれも1週間ほどで落ち着き,相手もインターンでおらず,電話で4時間ほどの会議をしたり話し合いが多かった.喧嘩はあまりしないけれどお互い言いたいことは言うしストレートに言いつつも議論が多くどちらかと言うと解決策を図っての話し合いが多いので喧嘩にまでは発展しないことが多い.お互い普段怒らない者同士なのもあるのかも.
こういう馴れ初めはいいのだけれど,先日9ヶ月を迎えた.お互い捻くれ者というか一癖ある者同士だしこんな奴を拾ってくれる人が世の中にいたとは本当に驚いた.先日,正式に結婚を前提としたお付き合いにしようと名言した.と言うのも今までは理想的にこうしたいああしたいばかりを語っていたけれど,きちんと正面切って言ったことはなかったのだ.真面目である.

この夏,祖父の13回忌と祖母の7回忌があるため帰省.6つ違いの従兄弟は今年の10月末に結婚.そして同級生もこの歳では結婚ラッシュである.どうしても結婚を意識する中で私は就職が遅れるし研究職という狭き門を行こうとし,不安定かもしれない.ただ嬉しかったのは,彼氏が養うから一緒にいてほしいと言ってくれたことで,そこで色々と考えたし博士号を私が取るまで我儘を許してくれたしそこから職に繋がればと私も思ったけれど,彼はそこまで特別なことは望んでいなかった.嬉しいことに私の絵を好きだと言ってくれる.たまに絵を展示して,一緒に暮らして,それでいいと.この遠距離期間に彼は仕事を,私は社会復帰をという目標を掲げてよしと手を握り合ったわけだが,法事に合わせて両親が帰国してようやく彼氏を実家に連れていき紹介することができた.
私はゴールデンウィークに既に彼の両親に会っていたのだ.そして実家に来た日は花火の日で,うちは緩いので30分もしたら緊張も解けたようで彼もそこそこ楽しんでくれたらしい.今度は韓国の今両親がいるところにでもおいでよ,ということでパスポート取るか,なんて話をしていました.

法事の後で,鬱スイッチが入るわけです.
将来のことがあまりにもあやふやで,不安定な収入で,親の知らない研究職という世界に行こうとしているのだから当然親も心配するけれど,付き合った当初私たちは下手したら一生遠距離かもしれないね,と言っていたのが現実になるかもしれないと思い,そしたら何をしていいのかわからなくなったのだ.私は子供の頃から親の顔色をよく伺い,これをしたら親に喜ばれるとか考えたりして,何になりたいと言っても毎回その「なりたいもの」が違うので親もこいつは一体何がしたいんだということになる.それもそうだ.
父と話し合った結果,友達と在宅研究者とかできればいいのにね,という話をしていたこともあり,今はインターネットの時代だしやりようはある.ただ彼が社会に出るのはこれからで,それが安定というかいけそうだってなったら私が博士課程で在学していても入籍してしまうっていう手はあると.遠距離なので行ったり来たりの生活にはなるかもしれないけどあまり別居期間は長くしないほうがいいとまで言ってくれた.
私の年が年だし,もう親が指図するような年じゃないしやりたいことは自分自身がよくわかっているだろうと.
地味にコソコソとスピード婚についてとか離婚率とか恐れて検索もしたりしたけど私たちには関係ないか〜とか思えるようになっているだろうか.まあ,一応世間的なスピード婚という意識外の交際期間を経ての入籍にはなるだろう.こういうことを怖がってしまう自分をいつも呪いたいと思う.

確かに別の研究室の博士課程の生徒は母親がいたり,色々な人がいる.そしてできれば在宅研究をして論文も書いて,という活動は続けていきたい.そういう意味で博士課程は全力でやります.もしかしたら本当に在学中に入籍しちゃうかもしれないけど,それもまた縁なりその時の時代なり目に見えないものに動かされているんだと思う.

人間をやっていくことは本当に難しい.
一時期はずっと人形でいたいと思ったほど感情を捨てたがったこともある.
動物のように本能のままに生きられたらどれだけ楽だろうとも思った.
ただこうして考えて綴って誰かに出会って話をしてまた考えて…ということをできるのは人間の特権であるのではないかとも思う.

花火を見ながら,私の将来を考えながらも好きだと言ってくれる彼氏を両親が認めてくれたこと.
最高の夏がやってくる.
院試の結果は明後日.
ただ掲示板を見に行きたいという私に付き添ってくれるという.
そしたら平成最後の夏,私たちは自分たちの将来に向けて大きくまた前進する事になる.
時代も前進していく.
平成という元号から脱皮し,新しく生まれ変わる.

世界は回る.
私も回る.
彼も回る .
万物は流転する.

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