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農家とともに持続可能な農業へ挑戦するー松原航平さん

国としても課題になっている、国内の食料自給率の低さ。
そのカギを握る農業分野で、持続可能な農業のために奮闘する役場職員がいました。

今年(2023年)4月から上川町役場の産業経済課農林水産グループの係長に着任した、松原航平さん。

松原さんは、今まで観光や企画、移住関係など、様々な部署で経験を積まれてきたそう。
そんな松原さんが現在、農業分野に携わるなかで感じた、上川町が抱える課題感や未来の展望などをお伺いしました。


現場と向き合うからこそ見えてきた課題

ーー早速ですが、上川町の農業について教えていただきたいと思います。
まず、上川町の特産物といえば何でしょうか?

生産額量の多さでいうと、大根や酪農(生乳)が挙げられます。

他にもじゃがいもをはじめ、にんじん、アスパラガスなどの野菜や、メロンなどのフルーツも作っていますが、販売されるときには「北海道産」としてまとめられてしまうことが多いため、上川町のブランドとしては認知されづらいのが現状です。


ーーたしかに、北海道産はよく目にしますが、〇〇町まではなかなか表示されていないですね。認知度をあげるための施策は何かされていますか?

最初は、「上川町」としての特産物ブランドの認知を拡大して、どんどん商品が売れていくことが農家さんにとってもいいことなんだと一方的に思っていました。

でも、本当に今、地元の農家さんが求めていることはそこではないと気づいたんです。

農家さんが抱えている課題は多くありますが、今多くの農家さんから伺うのは、存続していくための人手が不足していることや、あと何年農業に従事できるのかということ。

おそらくどの地方都市も若者の多くは地元を出て就職していて、農家さん自身も高齢化が進んでいる。今まで経営してきた面積の田んぼや畑をどう存続していくのか、今の体制のままで大丈夫なんだろうかという危機感を、多くの農家さんも抱いていますね。


ーー現場では、高齢化による後継者不足が喫緊の課題ということですね。

国としても、耕作放棄地を作らないようにという方針なので、行政としてはどうすれば農地を守っていけるかを議論し、調整していく役割を担っています。

最近では、農業法人が持続的な農業経営がむずかしい農家さんの土地を融通し、管理するケースも増えています。

※写真はイメージです

新しい技術も積極的に取り入れてみる姿勢

ーー先ほど、労働力不足という話もありましたが、町内農家が取り組まれていることはありますか?

スマート農業の推進も進めていて、噴霧防除作業をドローンで行う取り組みを次年度以降に本格的に行っていきます。

最近では20代30代の農業従事者も増えてきて、新しい技術への情報感度も高いので、農家同士で協力しながら良いものは取り入れていこうという動きがありますね。

ーースマート農業も積極的に取り入れているんですね。色々な技術があると思いますが、どうやって情報収集をされているんですか?

今年の春にスマート農業研究会という団体が設立されて、意見交換ができるような場が定期的に設けられました。

10人くらいで構成されているんですが、そこで「こんなシステム導入したらいいよね」という話になれば、企業の方を呼んでシステムについて話してもらうというような取り組みもしています。

さっきのドローンの話も、こういった場から派生して導入に至っています。

※写真はイメージです

ーー素晴らしい取り組みですね。今、次に取り入れようと考えているものは何かありますか?

先日、都市部の企業さんから水田の水の量を管理できるシステムについて、農家さんと伺い、勉強になりました。

水田に張っている水はどうしても水量がまばらになってしまうので、定期的に目視で一つ一つ確認する必要があるそうなのですが、
伺ったシステムでは、水田にカメラを設置して、リアルタイムで水の量が携帯に転送されていくような機能を紹介していただきました。

これが導入できると、作業負担がだいぶ軽くなるのではないかと期待しています。

やはり北海道は面積が広い分、農地や水田の面積も広いので、いかに労働生産性をあげるかがカギになると思います。

ーー導入にあたっては課題もありますか?

こういった先進的な取り組みについてはリスクを踏まえつつ、やはり誰かが先駆者として導入していかないと、なかなか進まない部分があるかと思います。

その点で若手の農業従事者やスマート農業研究会に入っている方たちが中心となって、色々なものを取り入れて試していくことが大事になると思います。


これからの上川町の農業の展望

ーー冒頭のお話を聞いて、じつはかなり多くの種類の野菜が上川町で作られていることに驚きました。これらは市場にはあまり出回っていないのでしょうか?

多くの種類の野菜が作れる環境ですが、市場に出すとなると不揃いや規格外のものは出せません。売れるものだけで考えると品目が限られてしまうのが課題ともいえますね。

最近では不揃い野菜の宅配サービスやふるさと納税を活用して、規格外のものも消費者に届けられる仕組みはできてきたので、上手く活用している農家さんもいます。

例えば「もち米」の例でいうと、一般的な消費者はお正月くらいしか使う機会がないので売れないだろうと思っていたんです。
でも、以前にふるさと納税に掲載してみると、パン屋さんなどからすぐにオーダーが。

最初から諦めるよりも、一度出品してみたり、新しいことに挑戦してみたりすることは可能性を広げる上でも大事だなと思いましたね。

ーーそんな事例が!意外なところにニーズがあるんですね。
今後、上川町として力を入れていきたいことは何かありますか?

やはり後継者や農業に従事したい方を増やしていきたいですね。
農業従事者を増やすために、農業版移住フェア(就農フェア)にも出展していて、外から農業をやりたい人・農業に興味をもってもらうことが必要だと思っています。

できれば、農業に熱い思いを持った方が来てくれるとありがたいですね。

また、今いる農家さんたちが、できるだけ省力化して農業に従事できるようなシステムや機械導入の支援をしていきたいです。

やはり労働力が減ってしまうことが予想される以上、少しでも効率的な農業経営を目指していくことが、産業の持続性が促されますし、何よりも活用できる時間が増え、家族と過ごす時間をつくることができると思います。

そういった意味では、農業という産業の魅力向上にもつながりますね。

最近では気候変動で、今までと収穫時期がずれたり、育たなかった種類の作物が育つようになったりするとの報道をよく耳にするので、どの時期にどんな作物を栽培すると高く売れるなどの知識を勉強して、農家さんと新たな作物の作付けに挑戦し、収入源の確保や労働力の低減化に繋がる支援ができたらよいですね。



新たな技術や若者の取り組みを見て、農業は多くの可能性がある産業だと話す松原さんが印象的でした。

松原さんもスマート農業研究会の一員だそうで、農家さんの作業負担が少しでも軽くなるよう、寄り添いながら新たな挑戦をともにしてくれる役場職員の存在は、農家さんにとっても心強いものだろうと感じました。

上川町での農業や移住に関して興味をもった方は、ぜひ問い合わせしてみてくださいね。

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かみかわKICHATTA制作メンバー
writer:すず(note / X
photographer:くみ(Instagram

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