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202401

とりあえず今月も終わり。というわけで2024年最初の月を振り返ってみよう。

劉慈欣短編集 円

やはり表題作「円」が面白い。『三体』と地続きのSF的設定のもとで古代中国の策士が思い付きそうな題材を、起承転結のメリハリが求められがちな短編でやってのける作者の筆力扛鼎ぶりに脱帽。その他の作品も、いい意味で『三体』的なケレン味のあるエンタメに仕上がっていた。


従順さのどこがいけないのか

横暴な権力や権威に従順な態度を取ることの陥穽を平易に説き、それらに唯々諾々と服従することは暴政への加担であり、われわれが守るべき共通善の毀損であることを説く。

「最大の悲劇は、悪人の圧制や残酷さではなく、善人の沈黙である。確かに、服従することは安易な道である。しかし、道徳的な道ではない臆病者の道だ(キング牧師)」と言ったところか。『生きづらい明治社会』と並んで政治や社会問題に関心のある若者に読んでほしい本。


犠牲者意識ナショナリズム

ポーランド近現代史を専攻する韓国人歴史学者による大著。自国の戦争や虐殺の犠牲者(被害者)としての側面を強調するあまり、加害者としての側面を正当化・矮小化する「犠牲者意識ナショナリズム」が国境を越え、記憶を巡る論争の火種になっている現状を暴き出す。ナチ政権の侵攻や虐殺・強制労働の犠牲者である一方、ホロコーストへ加担した加害者でもあるポーランドがユダヤ人とどのように向き合ってきたかに多くの頁が割かれる。大著だが、近現代史や歴史認識問題の知識や関心がある程度あれば読める内容。

ポーランド国内の犠牲者意識ナショナリズムが問題視されるようになったのは、ナチズムやスターリニズムの記憶が遠くなり、冷戦期も終わりに近づいた1980年代で、本邦ではそれまで大して話題にされてこなかった歴史教科書の記述や首相の靖国神社参拝が韓国や中国で問題視されるようになった頃である。このことを取っても犠牲者意識ナショナリズムが国境を越えて共鳴し合うものだということがよくわかる。

本邦も戦争や虐殺の犠牲者と加害者、両方の面を持っていて、犠牲者意識ナショナリズムと大いに関わりのある一国となっている。こうした複雑でスケールの大きい深刻な問題を浮き彫りにして暴き出す著者の卓見に驚くとともに感嘆を禁じえなかった。ポーランドの歴史、特に近現代史について知りたくなったので、中公新書の『物語 ポーランドの歴史』を読んでみたい。


機動戦士ガンダムSEED FREEDOM

詳細は以下参照。20年越しの集大成だった。

キュビスム展

明日が最終日のキュビスム展を駆け込みで鑑賞した。
セザンヌに影響されたブラックが創始し、ピカソと共に広めたキュビスムの歴史を絵画や彫刻100点あまりと共に紹介している。
初期キュビスムに影響を与えたオセアニアやアフリカの芸術品、東欧への波及やWW1期の動向にも触れられていて興味深かった。
部分を見ると幾何学的な図形の組み合わせに見えながら、全体は遠近法などを用いて綿密に構成されていることがわかるキュビスムは、前々から美術史の中でも興味深いジャンルだった。
被描体の多面性が表現されているのが好き。



料理作り

今月から開始。ぶり大根とほうれん草の胡麻和えやポテトサラダを作ったりした。味はまあまあだけど、手際がぐだぐだなので継続して慣れていきたい。

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