「思い出にニスを塗れ」出演者座談会
「カミグセ短編集vol.2」の出演者座談会、後編は「思い出にニスを塗れ」に出演する5人の俳優から、演出のこと、稽古のこと、作品のことなどについて伺いました。
――それでは「思い出にニスを塗れ」チームの座談会を始めたいと思います。「タナトス~」チームが2人なのに対して、こちらは5人。この中で、カミグセの作品に出た経験がある人はどれくらいいますか?
(Q本かよ、中村佳奈の2人が挙手。)
――意外と少ないですね。
Q本かよ(以下、Q本):わたしはこれが2回目です。
中村佳奈(以下、中村):たぶん私が最多かな。カミグセの旗揚げから数えて7回出演してますね。
中村佳奈
――そんな最多出演の中村さんにまずは伺いたいんですが、今回の「思い出にニスを塗れ」、つくにさんの今までの脚本と比べて何か違いを感じますか?
中村:カミグセって普段はモノローグ(独白)が多いんですよ。誰か一人、たいてい主演の子に大量のモノローグを言わせるのが特徴で。それに比べると「思い出にニスを塗れ」は会話メインでポンポンと進んでいくから、すごくテンポが早い。作品全体で言えばそこが一番の違いですかね。
塩原俊之(以下、塩原):僕はカミグセの作品は一回だけ見たことあって、その時に比べると普通の時系列で普通の会話劇をしてるなって印象です。前に見たのはもっと散文的で、ポストドラマっぽかったので。
Q本:作品全体が一篇の詩、みたいなイメージはあるかも。
――今回はあまりそういった要素はなさそうですか?
中村:けっこう俗っぽい感じですね、今のところは。
Q本:でも今日追加された台本のシーンはちょっとだけ、そっちへ近づいたかなって思いませんでした? 岩永さんが登場するところ。
岩永彩
岩永彩(以下、岩永):私は参加するのも初めてだし、過去のカミグセ作品も見たことがなくて。なので作風のことは解らないですけど、稽古してみて思ったのは「これ短編でやるの!?」ってことで。
塩原:ああ、たしかに(笑)。だいぶストーリーに奥行き出てきちゃったからなあ。
岩永:まだ最後まで書き上がってないけど、もっと長くなりそうなイメージがありますね。
Q本:そのイメージはね、(つくに)うららも持ってると思う。30分では収まらないんじゃない? でも、そういう時に無理矢理な終わらせ方をする人もいるけど、最後まできちんと描ききってくれそうだな…っていう信頼はあります。
塩原:まあ、伸びても「2作品合わせて70分」としか言ってないですから、どうとでも配分はできますよね。
Q本:そうだよ、2対5なんだから! こっちのほうが人数多いんだから!(笑)
廣瀬樹紅
――廣瀬さんは会話劇をやるのが初めてに近いという話を小耳に挟んだんですが。
廣瀬樹紅(以下、廣瀬):久々ですね。会話劇の定義がわからないけど、現代口語の会話は数年ぶりです。
Q本:きくちゃん稽古してるの楽しそうだよね。
廣瀬:楽しいです。そういう役なのもあるけど、みんなが受け止めてくれるのが有り難いなって思って。
――つくにさんの稽古場はいかがですか?
廣瀬:それまで制作のつくにさんしか知らなかったんですけど、「わたし稽古場にいるときが生きてる中で一番テンション高いから!」って本人が言ってて、ずっと気になってたんですよ。たしかに楽しそうだなって思いました。
塩原:僕も、稽古場で見てると「あ、こんなに喋るんだ…」って。
廣瀬:そうそう、そうそう。
中村:稽古場で誰よりも喋りますよ。喋らなかったら死んじゃうんじゃないかってレベルで。あと、すごい脱線する。
Q本:でもなんか、いちいち劇的にしゃべるから面白いよ。
Q本かよ
――演出面ではどうでしょう?
Q本:私は前回出演したとき、まだ東京に来たばかりで。知り合い経由で紹介してもらって出ることになって、会話劇の演出というものをほぼ初めて受けたのがカミグセだったんです。だからカミグセでのやり方が普通だと思ってたんだけど、いろいろ経験を積んでから戻ってきてみると、この(読み稽古の)多さ! 細かさ! つくにうらら! ってなりますね(笑)。でも、意図を汲むためには有意義な時間だと思います。
廣瀬:意図っていうのは、役とか台本の意図ってことですか?
Q本:どういうことを表現したくて書いたセリフなのか、とか。言い方にも細かい音の指定があったりするじゃない? だから、読みを頑張って覚えるというよりは、ヒアリングのつもりでできるようになったかな。最初のうちは「ちゃんと再現できるかな」って付いていくので精一杯だったけど。
中村:私は逆に7回も出てるので「言われてみれば(読み合わせが)多いのかな…」くらいの印象なんですけど。一言一句変えずにしゃべって欲しいって言うくらいセリフにはこだわりを持って書いてるし、つくにの中で「こういう風にしゃべらせたい」ってものがあるんだろうけど、こちらから調整していっても意外と受け入れてくれたり、柔軟に答えが返ってくるところはいいですね。
岩永:やってみて思ったのは、自分の役が相手にどういう影響を与えたかが大事だなということですかね。きっと誰しも、無意識のうちに他人から影響を受けて変わっていくものだと思うので、そこをうまく表せたらいいなと思います。でも、それだけのための存在になっちゃうのも悲しいから、バランスが難しいなって。
塩原:台本ができていく過程に、「最初はそんなつもりで読んでなかったけど、この後こうなるのか…」という発見があるのはいいですよね。序盤のシーンの意味が変わっていったり、そういうのを吸収しながら全体を均していく感じが。あと、登場する5人のお互いの関係性とか、「こいつはこの人にはこんなふうに話すんだ」とかが、キャラクターコンテンツとしても面白い。
塩原俊之
塩原:勝手な予想ですけど、ラストは結構グッとくる感じになるんじゃないかなと思ってて。「泣ける」みたいなことではないんだけど、ちょっと切ない感じというか。思い出って過去のものを扱う以上、どこかタイムスリップ的な感じにはなるじゃないですか。
岩永:私はこのタイトル、すごく好きで。覚えておきたくても忘れちゃうこともあるので、見終わったときに何かを思い出してほしいです。思い出になっていることって自分にとって分岐点だったりするから、それが良いものでも悪いものでも、なにか思い出すことができたら素敵だなって。
廣瀬:タイトルが命令形なのもいいですよね。どうしても湿っぽい印象のある「思い出」って言葉に対して、そういうのを振り切って前に進もうみたいなニュアンスを感じます。
Q本:カミグセはエモーショナルを恐れないからね。明日を生きることに前向きになれる作品になると思います。
【聞き手:辻本直樹(関係舎)】
関係舎 と カミグセ『カミグセ短編集vol.2』
8月8日(木)〜11日(日) 横浜 STスポットにて
原案:辻本直樹(関係舎)
作・演出:つくにうらら(カミグセ/水中めがね∞)
《上演作品》
『Re:タナトスのガールフレンド』
女は高熱を出していた。
男は風邪薬を買いに出かけた。
死神が部屋にやって来た。
男の死期は近づいていた。
死神は男を迎えに来た。
女しか部屋にはいなかった。
死神は女に用はなかった。
女は男の帰りを待っていた。
死神も部屋で待つことにした。
男はなかなか帰ってこなかった。
なんにもならないのに出会ってしまった、ふたり。
出演:赤猫座ちこ(牡丹茶房)、星秀美
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『思い出にニスを塗れ』
今ここにいないあの子の絵を描こう。
今ここにいないあの子を呼び戻すために。
あの子はきっと綺麗だった。
あの子はもっと嫌な子だった。
思い出を美化してはいけない。
思い出は保存しなくてはいけない。
描き上がることのない肖像の前で、私たちは立ち尽くしたまま。
出演:岩永彩、Q本かよ、塩原俊之、中村佳奈、廣瀬樹紅
《タイムテーブル》
2019年8月8日(木)〜11日(日) 全6ステージ
(全回アフタートークorアフターイベントあり!)
8月8日(木) 19:30★
8月9日(金) 14:00★|19:30◎
8月10日(土) 14:00★|19:30◎
8月11日(日) 14:00◎
★=「カミグセの課外活動」(アフターイベント)
8日(木)19:30・・・歌とギター[出演:つくにうらら]
9日(金)14:00・・・アイドルの真似事[出演:つくにうららと「Re:タナトスのガールフレンド」チーム]
10日(土)14:00・・・新かき氷[出演:つくにうららと「思い出にニスを塗れ」チーム]
◎=つくにうららとアフタートーク(登壇者は予定)
9日(金)19:30・・・「思い出にニスを塗れ」チーム
10日(土)19:30・・・「Re:タナトスのガールフレンド」チーム
11日(日)14:00・・・公演反省会[ゲスト:園田喬し氏(編集者/BITE編集長)]
※受付開始・開場は、各回開演の30分前
※上演時間は2作品あわせて約75分程度を予定
《チケット》
一般:3000円
U-25:2500円
高校生以下:1000円
※全席自由席
※U-25・高校生以下は受付にて要身分証明書提示
※未就学児入場不可
※車椅子等でご来場の場合、あらかじめお問い合わせください。
《ご予約》
https://www.quartet-online.net/ticket/tanpen2
《会場》
STスポット
https://stspot.jp/
〒220-0004 横浜市西区北幸1-11-15 横浜STビルB1
横浜駅から徒歩約8分
《お問い合わせ》
カミグセ 制作部
MAIL:info@kamiguse.com
WEB:http://www.kamiguse.com/