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仕事で"事故る"のはなぜか?

時間がなく慌ててメールを送ったところ、相手の名前に「様」を付け忘れてしまった。猛省した結果、翌日は何度も確認して丁寧に仕事を進めるように。すると「仕事が遅すぎる」とフィードバックをもらってしまった。

—― ミスなくスピーディーに仕事を進めたいけれど、この塩梅がうまくできない。多くの人たちの、仕事上の悩みのひとつです。今日はこの点について考えます。

速度とミスはトレードオフ?

私(夫K)はこれまでに1万人以上のビジネスパーソンに、働き方に関する助言を提供してきました。「仕事のミスをなくすには?」という議論があれば「仕事のスピードを高めるには?」という議論もあります。1つずつ丁寧に確認をすれば、ミスは減りますが、速度は落ちてしまいます。逆に速度を上げようとすると、ミスに気が付く可能性が低くなり、この速度とミスはトレードオフの関係にあり両立が難しいことがわかります。

それでも、両立するための考え方は見つかっています。業種業界に関わらず、ミスなくスピーディーに仕事をすることは可能です。私(夫K)は、そのヒントは自動車の運転にあると考えています。

高速道路で一時停止の標識に備える

自動車を運転しているシーンを思い浮かべてみましょう。高速道路を運転しているときに、「ひょっとしたら一時停止があるかも」と思い、いつでも止まれる速度で運転する人はいません。「ひょっとしたら歩行者が飛び出してくるかも」と常にアンテナを立てて運転している人もいません。(※)

※可能性はゼロではありませんが、常に注意すべきはそこではありません。仮に高速道路でバイクを運転中なら、最も注意すべきは落下物などの路面変化や突風の影響です。

一方で、住宅街の狭い路地を運転しているときに、「歩行者はいないはず」と、フルスピードで十字路を曲がろうとする人もいません。自動車の運転は、常に注意と速度のバランスを問われます。このバランス感覚は、今どのような環境で運転をするかによって変わります。仕事もまさしく同様です。

運転している環境を理解していない

自動車の運転の話をすると「そんなのは当たり前だ」と一蹴されます。しかし仕事では、存在しない「一時停止」の標識におびえてノロノロ運転をして後ろから追突されたり、狭い路地で注意すべきなのに「とにかく早く仕上げろ」という上司の指示のまま突破しようとして事故を起こしたりしているのです。

つまり、仕事が遅い/ミスが多いということと向き合っている限り、いつまでも問題は解消されません。その仕事がどのような環境に置かれているのかを十分に理解できていないことに問題があり、環境の理解に目を向ける必要があるのです。

スライド1

環境を理解するには、ごく小さなタスクレベルで考える必要があります。具体的には、新しいスライドを作る、資料を修正する、初めての相手にメールを送る…などです。このタスクが、住宅街の運転のような注意力重視の性質なのか、高速道路を運転するようなスピード重視の性質なのかを、タスクごとに考えていくのです。

この意思決定をすべてのタスクについて3か月ぐらい続けていけば、ほとんど無意識のうちにミス防止/速度重視の判断ができるようになります。仕事のスピードが格段に上がり、ミスの発生確率もぐっと低くなるのです。これは訓練なので、誰にでも身に付けることのできる、スキルであると私は考えています。

自動車事故のない社会を待ちわびているのと同様に、誰もが気持ちよく仕事のできる社会になりますように。


妻A:「私の場合、終業時刻間際の注意力重視の仕事は特に気をつけてる。保育園にお迎え行かなくちゃ、という焦りからミスを誘発しやすいから。緊急度・重要性にもよるけど、ミスを防ぐためにあえて仕事を途中で終わらせるスキルも必要だね。」

夫K:「確かに!慌てているときほど、慎重に。慎重になりすぎているときこそ大胆に。これがまた、難しいんだよね~」




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