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男性が社会から消える日

私(夫K)は新卒のときから15年間、女性中心の組織で働いてきました。1社目は女性下着メーカーで、営業、マーチャンダイザー、サプライチェーンの仕事を経験しました。イメージ通り、圧倒的に女性が中心の組織です。2社目の現職(コンサルタント)は、創業メンバーは皆女性。2人目の男性として参画しました。

女性中心の組織での15年間のキャリアと、コンサルタントとして1万3千人以上に助言をしてきた経験を踏まえると、あることが気になって仕方がありません。それは私たち男性は、もうすぐ社会から必要とされなくなるんじゃないかという危機感です。

多角的な思考を持ち、数ステップ先を読む女性

男性たちは「1つの事象に集中する」という能力に長けています。マンモスを何十キロも走って追いかけ続け、槍を投げて、石を投げて…という狩りが得意です。一方で女性たちは「同時に複数のことを見る」という能力に長けています。「木の実を取りながら、真後ろにある別の木の実の熟れ具合も見ている」という感じ。さらに、1つの行動がどんな影響をもたらすのか、先々を瞬時にありありと想像することができます。

24時間工場を稼働させ、ライバルとの熾烈な競争をしながら、お客様を勝ち取る。こんなビジネスモデルのときは、男性の特徴は大いに発揮されたことと思います。しかし、何が正解かわからず(獲物が定まらない)、一人では決して成し遂げることのできないことを、チームで成し遂げなくてはならないのが現代社会です。

1つのことに集中してしまう男性たちは、現代社会の仕事に実は向いていません。

マルチタスクが好きかつ得意な女性

”お客様と電話で価格交渉をしながら、メールでは別件の相談事項を書いている。”

こんな離れ業を持つのが女性です。私もこれまでに何度も、この尋常ではないマルチタスク処理を目の当たりにしてきました。コンピュータで例えるならば、男性はシングルコアで電力を大量に消費し熱を放ちます(=長時間労働で消耗する)。女性たちはマルチスレッドで、いくつものタスクを同時に処理するのです。

現代社会の共働き・子育て世代のワークとライフを想像してみてください。多くの家庭で男性たちは仕事を中心に平日を組み立てて出社前にゴミ出しをする程度。女性たちは起床後すぐに家事・育児の様々なタスク、次々に発生する突発的な事項に迅速かつ的確に対応していきます。(もちろん仕事でもタスクを猛烈な速度で複数案件を同時処理していきます)

「諸外国と比較して、日本の男性の育児参画は低い」という統計データを見たことのある方は多いのではないでしょうか。総務省が実施している社会生活基本調査の結果を国際間比較しているもので、上記のようなデータが紹介されています。

この調査結果をもう少し詳しく見ていくと、6歳未満の子どもを持つ男性の育児や家事への参画度合いがわかってきます。実は6歳未満の子ども持つ共働き世帯において、8割の男性が家事時間ゼロ。7割の男性が育児時間ゼロであることも明らかとなったのです。

引用:日本の男性の8割が家事時間ゼロ・7割が育児時間ゼロ(株式会社ワーク・ライフバランス)
出典:「平成28年社会生活基本調査」

高評価を得るのは誰か…女性しかいない

いま、多くの組織が働き方改革に取り組み、労働時間が短縮され、多様な働き方が実現できるようになってきています。年功序列の評価(40歳になったら課長になるための試験を受けられる)は消えていき、労働時間が長いことが「よくがんばっている」と評価されることもなくなりました。すると、短時間で(=限られた資源を有効に活用し)高い成果を出している人たちが、圧倒的に高い評価を得ていきます。

このとき、高評価を得るのは女性たちです。パソコン市場でどんなCPUが評価されているのか、ということの結論と同じです。男性たちはいつまでもマンモスを追いかけたがり、「お客様のために時間をかけることは良いことだ」「圧倒的な仕事量があるため、これ以上時間を減らすことはできない」と過去の成功体験にしがみつき、固執します。

子どもがいれば十分、夫は重荷

私生活にも目を向けてみましょう。子どもを持つことを望む夫婦で、その願いが叶うと、女性には人生の重荷が生まれます。仕事しかしない、家事も育児もできない夫の存在です。

週末にしか子育てに参加できないため(平日は夜遅くまで仕事をしている)、子育てにうまく参加できません。例えば、子どもの寝かしつけは「いつも抱っこしてくれる人の安心感」が必要なので、週末だけの"おじさん"に代打は務まりません。うまくいかない育児からは自然と距離が生まれ、ほとんどすべての育児が「お母さんじゃなくちゃダメ」となり、お父さんの意思や希望に関わらず、担当業務は哺乳瓶の管理とオムツ交換に絞り込まれます。

家事時間がゼロ、育児時間ゼロの夫は家族という名のチームには不要となり、戦力外通告を受けます。コロナ禍で多くの夫婦が直面した事実を、男性たちは我が事としてよく考えなくてはなりません。

男性が社会から消える日はいつ来るのか

男性たちは「家族のために、仕事しかしない人生」を送ってきたはず。でも肝心の仕事で評価されなくなってきています。だからといって、ライフ面で評価をしてもらえるようなポイントも、特にありません。

「仕事でうだつが上がらず、家事もできず、育児もいまひとつ」そんな男性たちがこれから大量発生する予感が、私はずっとしているのです。15年前の社会人1年目から、なんとなくその予感がし始め、社会の動向(女性活躍推進法が制定され、働き方改革が進み、コロナ離婚が話題となり、男性育休の義務化が叫ばれている…)を踏まえ、もうすぐその日がやってくる気がしてならないのです。男性が社会から消えてしまう日が。

数万年後に、進化した人類は、カマキリのつがい(交尾が終わるとメスはオスを食べてしまいます…)のようになっているのかもしれませんね。


妻A:「さっきから、「男性は」「女性は」って性別にとらわれた、固定的なイメージで話してるけど、そのこと自体が危険じゃないの?」

夫K:「あ… 本当にそうだね。おれも絶滅危惧種なんだ…あぁ。」


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