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体と頭と心と、あと魂


人と相対するときに、どういう枠組みで相手をとらえるのが良いだろうか?
まずは肉体と精神に分けるところから始めてみる。
そのうえで、それをさらに2段階掘り下げて考えつつ、ディープリスニングや傾聴がその枠組みにどう対峙すべきかを考えたい。

肉体と精神

まずは肉体と精神だ。人間を器である肉体と、それに乗っかっている精神とで分ける.これはわかりやすい。
「健全な精神は健全な肉体に宿る」とも言う。昨今では精神は必ずしも脳だけではなく腸もかなり大事な役割を担っていることなどが見えてきているが、これは精神=脳という考えがよくないのであって、精神は脳や腸や、そのほか諸々からできていると想像することが大事だろう。

体と頭と心と、あと魂 (1)

ちなみに、「健全な精神は健全な肉体に宿る」は、もともとは「健全な精神は健全な肉体に宿るべき」だったそう。肉体だけ鍛えるだけじゃなくて精神も鍛えなさい、ということだった模様。

さて、コミュニケーションを考えるための枠組みであるので、肉体はとりあえずこのままでいいだろう。もしかしたら意識的肉体/無意識的肉体とか、外見と中身とかに分けてもいいのかもしれないが、とりあえず考えないでおこう。

体と頭と心

そこで、精神を頭と心に分けてみる。
頭→理性的で論理的な意識で全てコントロールできる物事。
心→感情的で非論理的。意識的な部分と無意識の部分があり、自分の意思ではコントロールが難しい領域。

定義しようとすると意外と境界が曖昧なことに気づくが、直感的には頭と心という分類はわかりやすい。

体と頭と心と、あと魂 (2)


体と頭と心、という3つに人間を分かれているイメージはしっくりくる。同時に、心と頭を分けて考えることで、普段どちらかを見落としている(主に心)ことにも気づく。

特にビジネスの現場では、基本的に人は合理的に動く前提で話がなされる。つまり頭だけのことを考えている。実際はそうではない。ディープリスニングでは、それを論理的理解と共感的理解という言い方で、心に対するケアもしましょうと訴えている。

頭も心も受け止めなければ、相手方を信頼して物事を伝えることは難しい。
むしろ、まず受け止めるべきは心だ。話を聞くときは最初に心を受け止める。頭についてはその後で良い。
人は、心を受け止めてくれている人であれば信頼して、論理駅な話をすることはできる。逆はかなり難しい。しかも本人はそれに気づかない。
だからこそ傾聴を行い、情緒的理解をすることで信頼関係を築くことが重要なのだ。

フレームワークとしての体と頭と心

体と頭と心は、人間を切り取る際のフレームワークとして使い勝手がよい。
たとえば新規事業のサービス開発や、商品改善のためのヒントを考える上でも有用だ。
体と頭は機能的満足、心は情緒的満足とも言い換えられる。
たとえば麻布にある高級レストランは、味覚への訴求という体への価値だけではなく、麻布という場所にあるという情報としての頭に対する価値、それから一流のサービスによる心への価値を提供していると言えるだろう。
あるサービスや商品の改善点をこの観点から見ていくことができる。


体と頭と心と魂

ここまでの分類でやりたいことは達成できていると考えていた。ところが、先日ある方と話をしていて、別れ際にさらりと言われたことが心に残った。その方はこう言ったのだ。
「それでは、心と魂をお大事に〜」
魂。
しかも、心とは別のものとしての魂。しかもお大事にするような、つまりこちらから干渉できる対象としての魂。なんだろうか。でも確かに、なんとなくそういうものがあるような気もする。

ここで、先ほど心の時に、「意識的なものと無意識的なものがある」と書いたことを思い出してほしい。
そう、心をもう少し細かくみると、意識と無意識がある。これを明確に意識するために、あえて心と魂と分けてみてはどうか。

体と頭と心と、あと魂 (3)

体と頭と心と魂。

心は表面に出ている感情の動き、魂はその裏にある、その感情の大元になっている何か、だ。仏教の唯識でいうと末那識、阿頼耶識というところだろう。

そうすると、今まで人と相対するときに、魂と向き合っていただろうか?という疑念が芽生えてくる。
家族や恋人、ごくごく親しい友人とであればそうした感覚は多少なりともあるかもしれない。しかしビジネスではどうか。
相手の感情に共感したり受容することはできていても、その奥にある魂の部分で共感・受容できていたかと言われると、大変心許ない。しかしそれができていたら、おそらくできている実感は持てるだろう。
魂とは暗黙知の最たる部分ではあるが、心を通じてある程度感知することはできるはずだ。
そしてそれができるくらい深く傾聴し、ディープリスニングを深めていきたい。そう考えている。

神山晃男 株式会社こころみ 代表取締役社長 http://cocolomi.net/