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ネタバレで『レブス』を語る

話の都合、エンディングのネタバレを出さざるを得ないことを、最初にお詫びいたします。
見出し(1)~(4)までは未プレーでも楽しめます。

1998年、アトラスから発売された『レブス』というシミュレーションRPGをご存知でしょうか?
ぶっちゃけ、一見ありきたりなシステムなゲームです。

だからといって軽んじることなかれ!
『レブス』はシナリオのクオリティとハイレベルな世界設定、そしてこれらを戦闘システムに見事に落とし込み、衝撃的な結末で私の心の中で未だに生き続けるゲームです。

どうすごかったのかを、Wikipediaの情報と、昔読んだ攻略本設定資料集記憶を頼りに(本は今手元にない)、4900字ほど長く暑苦しく語ります。
『レブス』好きなんだよ。

【ゲームスペック】
タイトル:REBUS
プラットフォーム:プレイステーション
ジャンル:SRPG
メーカー:アトラス
発売年月日:1998年3月26日

▲オープニングムービーの音楽は必聴です。
見ておくとこの後の文章が理解しやすいかも。

(1)カルティアによる「想造」が行われる世界

ゲームの舞台は「レブス」と呼ばれる大陸。
大陸内には5つの国があり、宗教は一つのみで一神教(後述)、「カルティア」による「法術」で栄える世界です。

「カルティア」とは法術の媒体となる物質で、これに「神代文字」を刻むことにより、無から有を生み出す「想造」と呼ばれる行為が日常的に行われています(一部後進国がありますが、大陸のほとんどで行われています)。
この想造する行為を、法術とも呼びます(魔法のようなものです)。

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例えば、コーヒーを入れるために「水」を想造したり、敵を攻撃するために「火」を想造したりは、作中では日常茶飯事。

さらに、想造のためにはイメージ力が必要とされています。
知らないものは想造できず、イメージ力や実力が不足すると想造物が暴走します。
単にカルティアに神代文字を刻めば誰でも使えるものではなく、神代文字の意味がわからないと使えないのです。

レブスの住民にとって、漢字は日常的に使う文字ではありません。
文字通り神話の時代に使われていた古代文字です。

その神代文字を理解するために、遺跡から発掘された古文書を翻訳したものが、「テクスト」と呼ばれる書物。

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このテクストは後述する「文法院」という組織が管理しています。

テクストには「主テクスト」「副テクスト」があります。
主テクストは単独でも想造可能なもので、想造するメインの対象物です。
副テクストは主テクストを修飾し、意味あいを指定・補強するもの。
これらを組み合わせることで、想造のバリエーションが広がります。

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OPムービーの冒頭で放たれたカードがカルティアで、そこからは「幻獣」という生命体が想造されていました。

このテクストには、想造の難易度があります。
日常的に使い、簡単な「水」や「火」と言った、具体性を持つ基本テクストの意味するものは、簡単に想造が可能です。
しかし、「絶」や「対」といった抽象的で理解が難しい神代文字に絡むものは、想造が難しい。
当然、組み合わせる文字が増えるほど難易度が上がります(最大4文字)。

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このため、使用できるテクストや数は、資格審査に応じて決定されます。
キャラクターに応じて使用できる神代文字が違うのは、このためです。
キャラクターたち、実は劇中で映らないところで、さりげなく勉強をして審査を受けているんですね
(前のステージでは使えなかった神代文字が次のステージで使えるようになっていたら、幕間でキャラクターが資格審査を受けて合格した後です)。

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神代文字の中には、想造そのものを禁じられたものもあります(テクストの閲覧すら禁忌)。
これは「オリジナル」と呼ばれ、かつてはオリジナルを含めた想造も可能な「限定解除」という資格もあったようですが、現在は廃止されています。

(2)カルティアは何でできているの?

神代文字とテクストの関係までざっと理解したところで、「カルティア」の説明に入ります。
カルティアは想造=法術のために必要な媒体です。

かつては「世界樹」という特殊な樹木のみがカルティアの材料となりました。
作中の年代では技術の発展によって、「ミスリル」「シルク」も使用可能となっています。
世界樹は希少で、かつてはレブスの王侯貴族のみが使えたカルティアですが、廉価なシルクによる想造が可能と証明されてからは、一般市民へも浸透しました。

しかし、カルティアは素材によって想造できるものに差が生じます。
上位の素材ほど使用できる神代文字が多く、下位素材で使える神代文字も想造可能です。
世界樹は最高のカルティアの素材ですが、オリジナルに分類される神代文字には対応していません。

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ミスリルやシルクによるカルティアの発達、使用人口の増加に伴ってか、レブスでは世界樹が減少しています。
世界樹を管理・生産する「法王庁」という組織は、危機を感じ、苦肉の策で一部の世界樹の苗を有力貴族等に分譲する政策に出ます。

カルティアに文字を刻む道具は「賢者の石」と本には書いていた気がするんですが、記憶が不確かです。

(3)2大勢力

レブスには5つの国家があると(1)で述べたんですが、ぶっちゃけゲーム内での国の存在は希薄です。
むしろ、大陸を席巻している2大勢力の方が出張っています。

1つが文法院、もう1つが法王庁です。

文法院は、レブスの発展はカルティアによるものと確信し、カルティアの研究に勤しんでいる組織です。
テクストの発掘、解読、研究はもちろん、世界樹の代わりにカルティアの材料となる素材の発見も課題です(ミスリルとシルクの発見に寄与)。
法王庁から受けた素材を、カルティアへ加工・発行する作業も行なっています。

また、文法院はカルティアによる想造に資格審査を設け、試験も行なっています。
確か文法士と呼ばれる資格で、等級があります。
実力不足の者が想造を行うと、想造物が暴走して事故に発展するため(作中でもしょっちゅう幻獣が暴走している)、資格管理は当然の帰結でしょう。

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法王庁は、この大陸における唯一の宗教組織です。
一神教の「神」(名前はない)を崇拝し、法と秩序を重んじる聖職者たちによって構成されています。
法王庁は想造によって生み出されたものを「異端」としており、それを取り締まるための異端審問官も存在します。

法王庁にとっては、広く神大文字に関するものが異端ですが、特に想造によって生み出される「幻獣」という生命体を忌んでいます。
このため、この世界の聖職者たちは、異端審問官以外は幻獣の創造が禁止されます(異端審問官は、異端を以って異端を制するという考えのもと、幻獣想造が許可されています)。
また、オリジナルのカルティア、テクストも法王庁にとって厳重な監視対象となっており、これによる異端審問も後を絶ちません。

他方、法王庁の(おそらく)財源となっているのは、カルティアの材料です。
世界樹はかつては法王庁が完全に管理して生産し、世界樹の世話をする「ドルイド僧」も法王庁の管轄でした。
近年では、神殿を管理する「巫女」たちが幻獣チャウの世話をし、そこからシルクを得ています。

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しかし、なぜ想造物を「異端」とするのかは、作中でも明確に触れられません。
物語の最後に明かされる真実が、おそらくその理由なのでしょう。

(4)世界はわかった。で、どんなシナリオなの?

長いバックボーンの語りに付き合わせて申し訳ない。
ここまで理解できていないと、話が進まないのです。

で、ここで簡単に物語を紹介します。

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この物語は、主人公が二人おり、それぞれ独立したシナリオが展開します。
一人はトキサ、もう一人はラクリマ。

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トキサは主を持たない自由騎士の少年。
祖国イドラスを離れ、母方の遠縁にあたるシノン伯爵を頼ってシノン伯爵領へやってきました。
そんなある日、ドルイド僧を誘拐した盗賊が伯爵領に逃げ込みます。
対処に出た彼が、ドルイド僧・モナに出会ったとき、彼は知らず世界を巻き込む命運に飲み込まれます。

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ラクリマは神官戦士の少女で、クロスランドの辺境の町で自警団員として活動。
ある日、彼女の幼馴染の文法士・トロイに重要テクストの盗難の嫌疑がかかったことから、物語が動き始めます。
ラクリマの父親は英雄だった神官戦士・カイナス、彼女も父に恥じない聖職者として振る舞っていますが、本人にも知らされていない秘密を抱えていました。

物語は各主人公で独立しており、双方をプレーしないと世界の真実が明かされない設計になっています。
双方のシナリオに、時系列の通し番号としてエピソード番号が振られているので、その通りに二人の主人公のシナリオを見ると、整理された状態で物語を楽しめます。

個人的にはトキサ編のノリが好きですが、衝撃を受ける展開が連続したのはラクリマ編でした。

(5)ネタバレ:想造の真実

で、ここで一気にゲームEDのネタバレを致します。

無から有を造るとされていた「想造」は、実はそうではなかったということが、このゲームの核です。

この世界には、レブスの他にもう一つ世界があります。
そこは「エデン」と呼ばれ、「エルフ」という種族が暮らす場所であり、世界樹が繁茂する幻獣たちの故郷です。
かつて人間も共に暮らしていた場所ですが、神の怒りに触れ、追放されています。

ゲームの中盤である連中が、このエデンを想造して失敗します。
このとき想造されたのは、新規のエデンではなく、実際にあるエデンの一部でした。

想造とは、「エデンの事象をレブスへと転送するだけの行為」だったのです。
レブスでカルティアを使用する人口が増え、このままだとエデンの事象はいずれ枯渇します。

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エデンが供給する世界、レブスが需要する世界と判明した時、小学生の私は凄まじい衝撃を受けました。
無から有はつくれず、力には代償が必要だという事実。
しかも、レブスの人たちは、知らず他の世界の誰かを犠牲にしていたことに気づかず、カルティアを謳歌している
私たちプレイヤーは、それを知らずにガンガン想造を行なってバトルをしていた。
誰も悪意はない、しかし明らかに誰かが犠牲になっている、というこの構図は、現実世界でも生じている問題そのもの。

当時、環境問題が盛んに論じられ、それを反映した漫画やアニメはたくさんありましたが、ゲームでそれを直球で投げてきたのは、当時は『レブス』ぐらいじゃないかと思います。
しかも、幾重にも丁寧に紗のような美しい布で包み、世界背景とゲームシステムを巧妙にリンクさせた上で、最後の最後で、剛球を投げられたような気分でした。

『判じ絵』というタイトルに恥じない構造を見せつけられました。

(6)『レブス』好きなんだよ

このゲームは「シナリオに自由度がない」点があり、一部それを非難されていましたが、「自由になる余地がないぐらい設定が緻密」というのが正解です。
攻略本設定資料集を読んだ時、子供心に驚愕したことを覚えています。

そして、登場人物がみんな味があるのです。
子供の頃嫌いだったラクリマやトロイ、エレが、彼らの年齢を大幅に追い越してから、いかに人間味溢れた人物だったかを思い知りました。
友達への嫉妬で狂いそうな思いを明るさで隠していたアラーナの描写は、とてもリアルで、身近に感じたものです。

他の面でも、本作ではアトラスのこだわりを随所に感じました。
私が初めてプレーしたアトラスのゲームが『レブス』だったんですが、方角がわかる音響、映画のようにテーマソングをアレンジするBGMの美しさに、「職人の魂」を感じていました。
環境面でも、プレイヤーのストレスを減らすことが配慮されています。

個人的には、今もリメイクを待望するほど大好きです(続編も見たいけれど、時系列は異端戦争あたりの過去にして欲しい)。
『レブス』好きなんだよ。
シナリオも世界背景もシステムも音楽も、緻密に構築されたシナリオも、そこで生きている人たちも全部。

というのを、ずっと開発の方に伝えたかったんですが、できずにいました。
『ペルソナ』も好きだけど、私は『レブス』が今でも大好きだ!

noteで素敵な催しをしていることを機に、数日かけて書き綴らせていただきました。

[2020.11.23]
当記事で特スキをいただきました、ありがとうございますm(_ _)m

得好き02


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