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書店員の親父に言われて印象に残っていたこと

元教習所の先生・三上です。
親父は歴だけが以上に長い、しがない書店員です(ちなみに書店員以外のスペックは壊滅的)。

ネタに詰まると記事に出てくる我が親父。
代原(締め切りに間に合わなかった原稿の代わりに掲載される、別の作者の原稿)に近いのに、三上の予想を裏切り、妙にファンを獲得しております。

▲親子でアホなことをしてみせた前回。

今日は本屋とは関係ないけど、親父に言われて印象に残った言葉を幾つかあげてみようと思います。
ちなみにギャグ要素はありません、申し訳ない。

(1)利き手と虫の話

8歳ぐらいの頃でしょうか、私は利き手の存在が不思議になりました。
当時好きだった『クロノ・トリガー』の主人公が左利きで、母も生来は左利きだと知り(母は包丁とハサミ、筆記は右手で長らく気づかなかった)、「なんで自分は右利きなのだろう?」と思っていたんですね。

▲名作ですよねー。アレンジアルバム出る都度買っちゃう。

そしてある時、ふと父に尋ねます。

「なんで利き手があるの?
両方使えた方が便利じゃない?」

親としては返答に困る質問の類だと思うんですが、父はすぐに私に問いかけました。

「昔あった実験らしいんだがな、ある虫を1匹用意した。
その虫から等距離の点AとBに、同じ餌を配置した。
虫はどの餌を取ったと思う?」

私が悩んで「どちらか一方じゃないの?」と答えると、父はニカッと笑いました。

「悩みに悩んで、虫は結局どっちの餌も取らなかったらしい」

「えー!?」私は叫びました。
どっちかでも取ろうよ、と心底虫が哀れに思えたので(笑)。

「どっちか優先的な方向がないと、判断に困って行動できないんだよ、人間も。
だから利き手があるの」

私はそれで大いに納得したのでした。

その実験の話が本当かはわかりませんが、咄嗟の質問に対し、あしらうこともせず、即座にこのような返しをしたあたり、本の虫である父親の知性を感じさせた一幕だったなぁと思います。
困って適当に流す親御さんも多いと思うので……(^^;)

【追記】同日
調べたら、父が仕入れた知識の元ネタっぽいの、きちんと実在しておりました……!! 衝撃。

(2)「客」と呼ぶな、という話

学生の頃だったと思うのですが、父とドキュメンタリー番組を見ていました。
取材されていたのは若い経営者で、番組からの取材に朗々と答えています。

私は興味があまりなく、流し流し見ていたのですが、親父の表情が徐々に険しくなっていきました。

「あの社長、分かってねぇな」

父が珍しく、吐き捨てるように言ったので、私は顔を上げました。

「どうしたの?」
「『客』じゃなくて『お客さん』もしくは『お客様』って呼べって話だよ」

ふとテレビのテロップを見てみると、確かに経営者は「客」と口にし、テロップも「客」となっていました。

「どういう意識で『お客さん』を見ているか、よーく分かった。
舐めている、ロクなやつじゃない」

基本他人は我関せずなのに、珍しいな、と思いました。
本屋に限らず、販売業は困ったわがままなお客さんとのバトルが多いものですし、万引きなどあろうものなら親父はバックヤードから店の入り口にまで聞こえるまでの大声で怒鳴ります。

ただ、その一言を聞いて、父は私が思っている以上に、接客業のことを深く考えていたのかもしれないな、と気付かされました。
あれだけ赤の他人に不快感を示し、怒っている父親を見たのは初めてでした。

補足しますが、1冊本が万引きされますと、同じ本を5冊以上売らないと万引きされた本の利益は補填できません(しかも、5冊売ってようやく0に戻るだけ)。
これで潰れる書店もあるので、父が怒鳴るのは当然です。

(3)おまけ

父はWindowsが普及した際、真っ先に購入し、即座にエクセルをマスターしていました。

私が幼い頃、父は休みの日でも家でよく何かの表を見ながら電卓を叩きまくっていました(給与計算等をしていたのではないかと思います)。
その電卓捌きが猛烈に速く、私は「漫画の必殺技みたいだ……」と子供心に思っていたものです。
ニュース映像で見た簿記の上級試験者の電卓捌きを見る限り、ほぼ匹敵するスピードだったのではないでしょうか。

エクセルが導入されてからは電卓捌きを見ることは無くなりましたが、たまに父親に電卓のボタンの意味を確認すると、即座に答えてくれます。
もう一度、漫画だと確実に何本も生えているように描かれるような電卓捌きを見たくなるんですよね(笑)。
もうあのスピードではできないでしょうけど。

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