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シュトロイゼルクーヘンを作ってみた! 『軍靴のバルツァーより』

元教習所の先生・三上です。
今日は「話飯(はなしめし)」、お話に出てきた食べ物を再現します。

中島三千恒先生の『軍靴のバルツァー』(新潮社)、練習のため模写しています。
模写となると当然描きたい絵を探すんですが、大体そうしているうちに読み耽り……気づいたことが、意外と食べ物が出てきていること。
特に初期の頃は、レシピや分量が記載されています。

模写の題材探しで再発見したレシピに、4巻の「シュトロイゼルクーヘン」(クラムケーキ)があります。

▲17話に登場、付録の「暮らしのワンポイント」に詳細あり。

士官学校の生徒・パウルの実家のパン屋さんで人気の商品で、りんごを使ったお菓子のよう。
そぼろのようなものをふりかけるので、シュトロイゼル(ふりかける)という名前がついていて、見た目はケーキそのものです。

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▲パウル。17話より模写。

「お菓子のレシピなのに、どうして忘れていたんだろう。
作ってみたい」
と思ったのですが、よくよく読んでみて忘れていた理由がわかりました。
分量は書いてあるのですが、作り方が書いていないんです!!
私にとってアウトオブレシピだった。

ただ、見つけてしまった以上、再現したい。

Googleの検索枠に「シュトロイゼルクーヘン」と打ち込み、複数のレシピを読んでみた三上は、無謀にもこのお菓子に挑戦することにしました。

(1)材料

分量はコミック4巻をご参考にしていただきたいのですが、材料は大まかに3系統に分かれます。

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<ベース生地>
・強力粉
・砂糖
・ドライイースト
・バター
・卵
・牛乳
<シュトロイゼル生地>
・薄力粉
・砂糖
・シナモンパウダー
・バター
<フィリング>
・りんご(紅玉)
・黒スグリ(カシス)→今回はなかったのでブルーベリーで代用
・アプリコットジャム
・レモン汁

ベース生地の材料を見て「もしや」と思いましたが、これ、菓子パンの材料だよね。
クーヘンという名称なので、バター系の焼き菓子を想像していたのですが……うーん、大丈夫かな、私イースト扱うの十数年ぶりなんだけれど。
パンの焼き方なんてもう忘れています……

(2)作り方

ここからはネット検索を駆使した結果、三上が適当に記した手順でお届けします。
在独日本人の方とかが見たら呆れられるかも(でもまた作りたい時用の忘備録として書く)。

(0)バターと卵は室温に戻しておく。

(1)ベース生地のためのイーストを用意する。
牛乳を一部分け、人肌程度に温め、ドライイーストと砂糖の一部を加えて混ぜる。

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▲この作業であらかじめ発酵させやすくする模様。

(2)イーストを含めたベース生地の全材料をボウルに入れて手でこねる。
まとまってきたら台に移し、両手でツルンとした質感になるまでこねる(10分以上)。

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▲強力粉の中央を窪ませて土手を作ったはずなんですが、氾濫。嫌な予感。

(3)ボウルに生地を入れてラップをかけ、一次発酵させる(室温で小一時間、オーブンの発酵機能だと40度で30分程度)。
2倍の大きさになればOK。

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▲発酵前のベース生地。

生地を発酵させている間に、他の材料を作る。

(4)シュトロイゼル生地を作る。
全てのシュトロイゼル生地の材料をボウルに入れ、ざっくりとそぼろ状になるまで混ぜる(フォーク等で、粘らないように、混ぜ切らないように)。

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▲後で気づいたんですが、フードプロセッサーでやった方が早かった。

(5)フィリングを用意する。
りんごをスライスし、アプリコットジャムとレモン汁を振る。
鍋に入れて蓋をして弱火にかけ、蒸し煮にする。

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(6)黒スグリに分量外の水大さじ1と砂糖少々を加え、弱火で煮る。

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▲黒スグリがなかったので、ブルーベリーで代用しています。

(5)発酵した生地を叩いて空気を抜き、再度ボウルに入れてラップをして、20分ベンチタイム。

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▲実は1回目発酵に失敗し(牛乳の加熱しすぎが原因)、これは二度目の生地。

(6)焼き型に分量外の油を塗り、小麦粉を叩いておく。

シュトロイゼル00

▲三上は不器用なため、さらに型の底にクッキングシートを敷く。

(7)生地を焼き方の大きさに伸ばしてセット。
フォークで数カ所穴を開けて、膨らみすぎないようにしておく。

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▲コミックの分量ですと、結構大きな型用みたいです(私の家の型だと2個作れました)。
ベース生地は型の底だけに敷くのが主流のようですが、漫画では縁があったのでそのように整形しています。

(8)ラップをかけ、二次発酵(オーブンの発酵機能で40度で20分程度)。
私はガラス型を使ったので型ごと二次発酵できましたが、アルミ型の方は常温で発酵を。

(9)二次発酵が済んだら、フィリングを生地の上に敷き詰める。
このタイミングでオーブンを180度に予熱する。

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▲果物が敷き詰められた途端、お菓子らしい様子になる。

(10)フィリングの上に、シュトロイゼル生地をこれでもか!とふりかける。

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▲名前の由来のふりかけ(シュトロイゼル)をした状態。
そぼろが多すぎて「これ、全部かけていいの?」と躊躇するも、結局全部かけた。

(11)予熱が済んだオーブンに生地を入れ、180度で20分程度焼く。
焼き加減が足りなかったら、アルミホイルを被せてさらに加熱。

(12)あら熱がとれたところで型から外し、完全に冷ませば出来上がり。

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▲焼き上がるとこんな感じ。ケーキというより菓子パンだね!

(3)食べようか

作りながら、何度も、
「これ、イースト使うのか……それでいて手順が書いていなきゃ、『無理⭐︎』と思って忘れるわな……」
と記憶を消去した頃の自分を思い出していましたが、なんとか完成しました。

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▲同居人に出して「作った」と伝えたら驚かれました。

食べてみて驚いたのが、素朴で穏やかな味であること。
ベースがパンなだけあって甘さは控えめですし、フィリングも砂糖がほとんど入っていないため、素材の味が生かされて爽やかです。
シュトロイゼル生地が甘さのほとんどの役割を担っているレシピでした。

パウルの実家のシュトロイゼルクーヘンはお店の人気商品とのことですが、子供はもちろん、甘いお菓子が苦手な大人が買って行くんじゃないかな、と食べながら考えていました。

パウルは外出許可を得ていっとき実家に帰り、「みんなとお食べ」とお母さんにシュトロイゼルクーヘンを持たされます。
その直後、ホルベック連邦との戦争への召集命令が出、彼は「戦争に行きたくない」と苦悩しながらシュトロイゼルクーヘンを頬張ります。

泣きながらも食べて出てくる言葉が、「うめぇ」であるあたり、彼の実家の人たちの腕がうかがえた料理でした。


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