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名作選3「父と母の愛」

母が残した財布の中。色あせた父の名刺を見つけた。裏に母への思いが記してある。
70年以上母の心を温め続けたその宝物は、私の人生までも幸せで満たしてくれた。感謝。

2022年「あの人との、ひとり言」コンクール入賞作品より
埼玉県 ピョンピョンさん(女性)
手を合わせるお相手:両親

まだ携帯電話もなく、ポケベルもPHSもなかった時代。待ち合わせで誰かが遅刻すれば会えないことなど日常茶飯事で、駅の伝言板にチョークでメッセージを残していた時代。駅員さんがカチカチカチと切符をリズミカルに切っていたあの頃は、相手に何かを伝えるための手段がすべてアナログだった。

時を経て、まさかここまで文字を書かなくなる時代がくるとは思っていなかった。今や片手で文字を打ち込み送信すれば相手に届くのだから、本当に驚く。

アナログな時代を知っている人間ならば一度は言いたくなるのは、「愛を伝えるのにデジタルでは何かが圧倒的に足りない」ということ。

手書きの文字にはその人のひととなりがにじみ出る。大きい文字、小さい文字、濃い筆圧、エレガントな筆跡。手紙をもらって嬉しいのは、それらを体全体で味わえるから。それが恋文ならばなおさら。

母が残した財布の中。色あせた父の名刺を見つけた。裏に母への思いが記してある。

作品より抜粋

財布の中に入れて大切に肌身離さずずっと持っていたもの。色あせた愛にあふれた世界に1枚だけの名刺。冒頭から情緒的でロマンティック。

なんと書いてあったのだろう。無粋ながら妄想する。便せんではなく、メモ帳でもなくどうして名刺の裏なんだろう。仕事先や出張先の宿で書いたのだろうか。手持ちの紙がなくてとっさに名刺の裏に書いたのだろうか。

妄想はとめどもなく広がるがそんなことが重要なのではなく、この作品はいろんなストーリーを考える余白があり、余韻がある。読み手がおふたりの愛を妄想し、勝手にキュンとなる。

70年以上母の心を温め続けたその宝物は、私の人生までも幸せで満たしてくれた。感謝。

作品より抜粋

名刺が色あせていた理由が書いてある。70年以上母の心を温め続けたということは、若い頃にもらった名刺ということになる。あ、もしかしたらお付き合いする前に愛の告白かも……また妄想は膨らむ。

最後に、作者は私の人生までも幸せで満たしてくれたと書いた。ご両親の愛を一身に受け育ち、また、ご両親がお互いに愛し合っていることを身近で見ていたという、この上ない幸せを語っている。

そして結びに「感謝」のひとこと。この感謝という言葉からは、幾重にも重なった家族の絆がにじみ出ている。

アナログの愛の言葉を伝えてみたくなる名作。


このブログでは、「あの人との、ひとり言」コンクールの入賞作品の中からランダムにチョイスした名作たちを紹介して参ります。作者の心情に寄り添ったり、自分もこういうことがあったなと思い出を探してみたり、コンクール応募のきっかけにもなれば幸いです。

ステキな作品に、どうぞ出会ってください。

「あの人との、ひとり言」コンクール 応募要項
【賞】

大 賞   [1名様]賞金5万円 カメヤマ商品
審査員特別賞[1名様]賞金2万円 カメヤマ商品
ペット賞  [1名様]賞金2万円 カメヤマ商品
カメヤマ賞[20名様]JCBギフトカード 5,000円 カメヤマ商品
入 賞 [100名様]カメヤマオリジナルグッズ
WEB応募者全員にカメヤマネットショップで使える500円オフクーポンプレゼント

【募集内容】
手を合わせると出てくる「あの人との、ひとり言」
※未発表の作品に限る
※助詞や語尾を変えただけの類似作品や同じ作品の二重応募は不可

【テーマ】
亡くなられた大切な方に向けて手を合わせたとき、あなたの心にはどんな言葉が浮かびますか?手を合わせると出てくる言葉を募集します。

【提出物】
●作品
※80文字以内
※郵便ハガキで応募の場合は、以下の事項を記入
氏名・フリガナ・性別・年齢・ペンネーム・郵便番号・住所・電話番号・投稿文・手を合わせる相手
※複数回の応募可

【参加方法】
提出物を下記提出先まで郵便ハガキにて郵送
または、公式ホームページの応募フォームより投稿

【参加資格】
不問
※本名で応募すること

【応募期間】
2023年6月1日(木) 〜 2023年9月30日(土) 23時59分
※官製はがきによる応募の場合は 9月30日当日消印有効

【審査員】
湯川れい子(音楽評論家、作詞家)
右田昌美(クロワッサン編集長)
若林剛之(SOU・SOU プロデューサー)
木村光希(株式会社おくりびとアカデミー 代表取締役)
谷川花子(カメヤマ株式会社 代表取締役会長兼CEO)
※順不同、敬称略

【結果発表】
入賞作品は、厳正な審査の上、当サイト及び雑誌『クロワッサン』12月8日発売号誌面にて発表

【著作権の扱い】
入賞作品の発表や出版に関する著作権は、二次利用を含め、カメヤマ株式会社に帰属

【応募・問い合せ先】
カメヤマ「あの人との、ひとり言」コンクール事務局【WEBで応募】
コンクール公式サイト https://www.kameyama.co.jp/hitorigoto/
郵送で応募〒519-0111 三重県亀山市栄町1504-1 カメヤマ株式会社
お問い合せ先0595-86-0102
 ※10時〜17時(土日祝日・8月11日〜8月16日を除く)

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