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【読書日記】5/28  ドイツのマザーグース。「少年の魔法のつのぶえ」

少年の魔法のつのぶえ ドイツのわらべううた
  ブレンターノ/アルニム 編
  矢川澄子/池田香代子 訳 岩波少年文庫

たまたま立ち寄った古本屋さんで手に取りました。

矢川澄子氏の解説によると18世紀後半のドイツ、疾風怒涛時代、「それまでのフランス古典主義崇拝を脱してドイツ民族本来の魂の声に耳をかたむけようという気運の高まった時期」にドイツ各地の民謡を集めて編纂されたもので、ドイツ版マザーグースと呼ばれているそうです。
グリム童話やゲルマン神話を連想させるような詩もあり、楽しく読みました。どんなメロディーなのかも気になるところ。
今回特に惹かれた物語風の二編をご紹介します。

おんどりちゃんとめんどりちゃんのこわい話

おんどりとめんどりがいて、おんどりがクルミをひとりじめしようとして丸呑みし、のどにつまります。
めんどりちゃんは水をもらおうと泉にいくと、泉は絹がほしいといいます。そこでめんどりは花嫁のところにいって絹をたのむと花嫁は花のかんむりが欲しいと言い・・・とわらべ歌によくある構造の歌だな~と思っているとその続きがあるのです。

めんどりがようやく泉の水を持って帰ると、時はすでに遅し。
おんどりは死んでいました。そこで柳の枝で車を編んでおんどりを乗せてお墓を目指して運びます。
しばらくいくとキツネに出あい、キツネは車に乗せてくれ、と頼みます。

車の後ろなら良いよ、とキツネを乗せてやりさらに行くと、次は、オオカミ、ライオン、トラなどたくさんの動物が乗り込んできて最後にノミ。
ところがノミ一匹分だけ重すぎて

車はみんなをのせたまま、どろんこ沼にずぶずぶずぶ。
そこがそのまま、お墓になった。

ドイツのわらべうた「おんどりちゃんとめんどりちゃんのこわいはなし」

そしてめんどりは、というと。

たった一わ、めんどりちゃん、命からがら飛び立って、
教会の塔のてっぺんにとまった。
いまでもそこからみはってる。東西南北みはってる。
天気がよくてどろんこが、すっかりかわくとおとむらいの
つづきをしようと飛んでいく。
鶏頭(けいとう)、狐尾草(えのころ)、鶏足形草(きんぽうげ)、
虎杖(いたどり)、車前草(おおばこ)、獅子歯車(たんぽぽ)の、花ざかり。

おんどりちゃんとめんどりちゃんのこわいはなし

うん、これはなんだか怖い。
展開のブラックさと最後の言葉遊びのギャップが面白いのです。

そして、「魚に説教するバドヴァのアントニウス」もくすっと笑いました。

魚相手にお説教する聖アントニウス。
コイ、カマス、干ダラ、等々魚たちは集まってありがたーいお説教を拝聴する。
ところが

お説教をばききおえて
魚は散っていったけど
カマスはやっぱりあらっぽく
ウナギはやたら博愛家
お話きいて よかったが
魚はみんなもとのまま
カニはごそごそ横歩き
干ダラはやっぱりでぶっちょで
コイはがつがつ大食らい
説教なんかわすれはて
お話きいてよかったが
魚はもとの黙阿弥さ

魚に説教するバドヴァのアントニウス

ま、そんなもんですよね。こどもたちも親の言うことなんてろくにきいていませんものね・・・。