【詩歌の栞:花虹】7/17 「なまえ」
なまえ 花虹
なまえは いつからあるの と娘が問う
むかしむかしからあるよ と私がこたえる
そうか、と娘がうなずく
卑弥呼とかワカタケルとか
おおむかしのひとにも なまえが あるね
そうね、とわたしもうなずく
ひとが ことばをもったとき
まずは なまえをつけただろう
じぶんが じぶんに なるために
大切なひとを よぶために
でも その前は? と 娘が問う
ことばがまだ無い むかしむかし うーんとむかし
なまえは なかったのかな?
さあ、どうだろう と私は考える
ホモ・サピエンスの他にたくさんのホモ属がいたころ
まだ、その唇が「ことば」をつむがないころ
「なまえ」は あったか なかったか
わたしは答える
いとしい相手を ほかのだれでもない かけがえのないひとを
よぶときの「特別なおと」があったかもしれないね
それなら 動物には なまえはないのかな と娘が問う
さあ、どうだろう と 私は考える
さるの群れには順位があって かれらなりの社会があるらしい
わたしは 答える
おさるさんにも おさるさんにしかわからない
おさるさんのなまえが あるのかもしれないね
そのほうがいいな と娘が答える
わたしは 問う
あなたは あなたの名前が すき?
だいすき
にっこりと娘がわらった