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【読書日記】4/17 自然科学本の足掛かりに。「ドミトリーともきんす/高野文子」

ドミトリーともきんす
 高野文子 中央公論社

学生寮「ともきんす」。
寮母のとも子さんと娘のきん子ちゃんが営んでいます。下宿しているのは科学を学んでいる4人の学生さんたち。
その名は 朝永振一郎、牧野富太郎、中谷宇吉郎、湯川秀樹
時空を超えて、若き学徒として集った彼らは後の科学の功績の片鱗を披露してくれる。
漫画でこれ以上はないくらいにとっつきやすく自然科学の名著を紹介してくれている、とてもありがたい本。

高野文子さんは、編集者さんがいつも鞄に入れている自然科学の本(こういう方、素敵ですね)を読んで、高野さんは「小説の読後感とは違う」「乾いた涼しい風が吹いてくる読書」と感じます。
そして、漫画で自然科学の本のことを紹介するために、「まずは、絵を、気持ちを込めずに描くけいこをしました」それが「涼しい風が吹くわけ」に通ずる、と思ったからのようですが、面白いな~と漫画家さんの感性の鋭さに感じ入りました。

本書の学生さんたちは、四人四色。
鏡の不思議さできん子ちゃんと戯れる朝永君、天からの手紙を読み大地の力に魅せられる中谷君、数を数えること空間について語る湯川君、そして、今の朝の連続テレビ小説「らんまん」の主人公のモデルでもある牧野君は「ボクは日夕、天然の教場に学ぶ」と言い花の美しさ不思議さを心から愛している青年として描かれています。

この本には、科学者たちの書いた本と、科学者たちのことばがいくつも紹介されていて引用しきれませんが、子供が理科嫌いになる前に読んでおきたいものもありました。

前書きに記載されている朝永振一郎の「子どもたちにむけた言葉」

ふしぎだと思うこと これが科学の芽です
よく観察してたしかめ そして 考えること これが科学の茎です
そうして最後になぞがとける これが 科学の花です

朝永振一郎

そして、最後の章「詩の朗読」で披露される湯川秀樹の「詩と科学~子どもたちのために~」

詩と科学 遠いようで近い。
近いようで遠い。

湯川秀樹「詩と科学」冒頭

から始まる一節。

どちらも自然を見ること聞くことから始まる
バラの花の香をかぎ、その美しさをたたえる気持ちと
花の形状をしらべようとする気持ちのあいだには、大きなへだたりはない。
しかし、バラの詩をつくるのと顕微鏡を持ち出すのとでは
もう方向が違っている

湯川秀樹「詩と科学」より抜粋

このような文や詩を、私自身も子供の頃に読んでいたら、もう少し科学に親近感を持てたかもしれないなあと思っているのです。
今からでも遅くない、と自然科学に関する本、意識して読むようにしています。小説とは違ってすいすい読むというわけにはいかないのですが、知らなかったことを知る、わからなかったことがわかるようになるのは年齢に関係なく嬉しいものです。

もちろん、途中であきらめてしまった本も沢山あるのですが・・・。
いずれまた挑戦します。