【雑記R6】7/26 町田尚子絵本原画展「隙あらば猫」
夏休みです。
娘のさるちゃんとその友人たちを連れて町田尚子絵本原画展「隙あらば猫」に行ってきました。
「隙あらば猫」は町田尚子さんの座右の銘だそうです。主役以外でもわき役として、また背景の一部として猫を多数登場させています。
原画展でも多くの町田さんの猫絵本がありましたが、私はやはりポスターにもなっている「ねこはるすばん」が好きです。
MOE絵本屋さん大賞2020年度の入賞作です。
家のひとが出かけて行くのを見送った猫は、さびしくおるすばん、と思いきや秘密の抜け穴を通って猫の町に行って、喫茶店、本屋さん、釣り堀、回転ずし、銭湯、バッティングセンターとおひとりさま時間をたっぷり満喫し、何食わぬ顔をしてもとの部屋に戻ってきます。
ん、でも、おかしいな。「猫の町」で遊んでいたはずなのに、このお部屋の嵐が過ぎ去ったようなありさまは???
最後の玄関の上がり框にちょこんと座り「おかえりなさい」と見上げている「おりこうさんのおかお」で「あ、やらかしたな」とわかります。
おうちのひと、お部屋に入って腰ぬかしませんように。
他にも「ネコヅメのよる」「ねことねこ」「なまえのないねこ」「どすこいみいちゃんパンやさん」など猫の絵本原画が多数ありました。
町田尚子さんの描く猫は「かわいい~」と声音にハートを乗せたくなる可愛さではなく、むしろ眼光鋭く、面構えふてぶてしい猫たちが多いのですが、気ままでたくましく、気位高くも甘えたがり、そんな多彩な魅力に満ちていました。
さて、これらの絵本の中には、町田さんの愛猫、白木さんがたくさん登場しています。
二十の賀を祝い、その後「ピョンピョンピョンピョン 白木のピョン」で「おそらにピョーン」と「おつきさままでとんでった。」そうです。
躍動感あふれる「白木のぴょん」これも印象に残った作品です。
「猫」ではない絵本の原画も素敵でした(もちろん、隙あらば猫は登場します。)
京極夏彦氏と組んだ「怖い絵本」。
「いるの いないの」は大変な反響を呼びましたが、原画を見て怖さを実感したのは「あずきとぎ」でした。
夏休み、田舎のおじいちゃんの家に来た男の子。
美しい涼しそうな川辺でしょきしょきしょきという音を聞きます。
その音をおじいちゃんは「あずきとぎ」というおばけだといいます。
川に人を引きずり込む妖怪だと。
この音を聞くと人は足を滑らせるのだと。
男の子は、川に行きたくて仕方ありません。
「おばけなんてないさ 気を付けていれば平気さ」
白い犬をおともに、手網とバケツを持って男の子は川へ向かいます
澄んだ川には生き物がいっぱい。
冷たい水に足を浸して。気持ちいい。
夢中になって大きく目を見開いている男の子の横顔のアップに「しょきしょきしょきしょき」
次のページは、美しい川面の絵。ほんの一か所だけ少しさざ波がたち、色が憂いを帯びて少し濃い。男の子は、いない。
川を岸から眺める犬の後ろ姿。
余韻の残る怖さでありました。
おもわず娘たち(自由に会場を見て回らせてました)を探し出して存在確認したくなるくらい。
他にも「うらしまたろう」の竜宮城の四季や「たぬきの花嫁道中」の花明かりのなかを進む花嫁道中、など魅力的な作品が多くありました。
アイディアスケッチも展示されていました。
お話を「絵本」という形にしてどのように魅力的に見せるか、物語の世界を余すところなく伝えるにはどうすればよいか、ということをとことん考えているのだと気づかされます。
絵本を開いた時、この世界がどこまでも広がっているような奥深さを感じるのは、一枚の絵に凝縮される世界があるからなのでしょう。
原画の魅力は、格別だなとゆっくり堪能しました。
娘たちも楽しそうにあれこれささやきあいじゃれあいながら展示を見て回り、絵本閲覧コーナーに座り込んで頬をくっつけんばかりにして絵本をのぞきこんで、今見たばかりの原画を絵本の中に見つけてはあれこれ話し合っているようでした。
中学生になり、抜け作のくせにいっぱしの口をきく小生意気なところが増え、カチンとくることが多くなりましたが、まだまだかわいいものです。
夏休み、お弁当作らないといけないし、部活の送迎はあるし、宿題の進捗管理に助言、何かと気が遠くなるのですが、こんなひとときは悪くない、かな。
会場は鹿児島メルヘン館。
町田尚子さんの描き下ろしイラスト(これは撮影可能)は、メルヘン館とそのキャラクターを描いているようです。
余談ですがこちらは、市の施設でかごしま近代文学館が併設され、郷土ゆかりの文学者について紹介されています。
向田邦子さんの愛用の遺品を多数所有していて「向田邦子の世界」という展示コーナーがあり、その雰囲気を味わうことができます。