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【読書日記】2/15 天下御免の女の子。『ちからもちのおかね/中脇初枝』

ちからもちのおかね (女の子の昔話えほん)
中脇初枝 (著),伊野孝行 (イラスト) 偕成社

 女の子が主体的に活躍する世界の昔話を集めた「女の子の昔話えほんシリーズ」の中の一冊。高知で語り継がれる大力で鉄砲名人のおかねさんのお話です。

 齢三つにして相撲取りより強く、米俵を摘んだ牛を片手で持ち上げて見せて殿様から「天下御免」を許され、鉄砲を構えただけで天狗を退散させる。
 そして、お母さんになっても夫の危機には駆けつけて大蜘蛛を退治するという強くて賢いおかねさんの活躍が爽快です。

 女の子の昔話えほん、女の子にあなたは自分の力を存分に発揮していいんだよ、というメッセージであると思いますが、この本は、男の子にも読んで欲しい。(おじさんもぜひ。)
 なぜなら、このお話の良いところは、おかねを取り巻く男性陣にあるからです。
 お父さんは、おかねの力の強さを誇りに思って頼りにしている。間違っても「女の子が馬鹿力なんてみっともない」などと言っておかねの翼を折るような真似をしない。
 おかねの力を目の当たりにした殿様は、素直に称賛して天下御免の沙汰をする。間違っても「女の割にはよく頑張っている」などと言ってやる気を折ったりしない。
 おかねの婿様もおかねの助言をすんなり聞き入れて大蜘蛛を見事仕留める。間違っても「女のくせに仕事に口出しするな」などとヘソを曲げたりしない。

女性活躍推進などと言われていますが、女性が頑張ればいい、と他人事だと思っている男性陣が多いこと。
SDGsの目標のひとつにジェンダー平等を実現しよう、というものがありますが、長い間に培われた価値観は、男性も女性もなかなか変えられない。今は、こういうものだ、と頭で理解してそのようにふるまうことはできるけれど、違和感を感じている人も多いのでしょう。

だからこそ、これからの子どもたちには、性別は、その人のたくさんある個性のひとつであって、絶対のものではない、ということ、その人自身をよく見て尊重する気持ちを今のうちに身に付けてほしいのです。
絵本を読みきかせながら、そんな祈りを込めています。

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