タスクを細分化することの落とし穴 【ユタカジン】
「タスクを細かく分割する」
というのは、タスク管理の正攻法として広く知られています。あなたもきっと聞いたことがあるでしょう。
やる気が起きなかったり、大きくて重たいタスクに取り組む際、タスクを細かく分割して取り組みやすくしようとするわけですね。
いろんな解釈があると思いますが、僕がこの言葉を聞く時にイメージするのは以下のような感じです。
大きなタスクをあらかじめ細かく分割して、それを一つずつ潰していく。図で示すと以下のような感じでしょうか。
便宜上、ここでは大元の大きなタスクを親タスク、小さなタスクを子タスクと呼んでみます。
たしかに、大きかったものが小さく分割されるので、取り組みやすくなる感覚が味わえるかもしれません。
場合によっては、ここから一歩踏み込んで、ここの子タスクたちに期日を設けることもありますね。
たとえば、親タスク全体の期限が1ヶ月後だから、子タスク①は1週間以内に、子タスク②はその次の4日以内に、、というふうに。
タスク管理というのは、こういうふうに親タスクを分割したり子タスクの期日を管理したりするので、言い換えると「タスク整理」という言い方もできる気がします。
タスクが整理されると、頭の中がスッキリして落ち着くんですよね。その気持ちはめちゃくちゃよくわかります。
でも、この方法には気をつけなきゃいけない落とし穴がいくつかあるんじゃないかと僕は思っています。
タスクを細かく分割するのが大事だというのは何度も何度も言い継がれてきたと思いますが、
それはある意味、何度も言い聞かせないといけないほど、なかなかうまくいかないことの裏返しのように思うんです。
もしあなたが、
タスクを分割するのが大事だとわかっているけど、なかなか上手く進まない。。
という悩みを持っているとしたら、これからお話しする話はその困りごとの解決のヒントになるかもしれません。
分割したら大きくなるもの
タスクを分割すると、タスクが小さくなるので取り組みやすくなる感じがします。しかし、それと同時に大きくなっているものもあります。
それはタスクの数です。
当たり前ですが、1つのものを細かく分けるとその分だけ数が増えます。
もちろん、1つのタスクを分割して5つや6つに増えるくらいなら大したことではないかもしれません。
しかしながら、忙しい私たちは抱えているタスクが1つだけだという状況はとても稀です。何個も並行して持っていることが当たり前でしょう。
それぞれを細かく分割すると、それだけ子タスクがどんどん増えていきます。あっという間に数十個、数百個と膨れ上がります。
そうするとどうでしょうか。小さく分割して手をつけやすくなったはずのタスクが、子タスクの数に圧倒されて、タスクの山を目の前に思えてむしろ着手しにくくなってしまう気すらしてくることはないでしょうか。
1つ終えたとしてもまだまだたくさんのタスクがある。やらなきゃいけないことがたくさんあることを目の当たりにして、なかなか進んでいる感覚が得られないかもしれません。
一生懸命こなしているはずなのに、進んでいる感じがしないのは結構辛い。。
さらに、子タスクのそれぞれに締め切りを設けていたらもっと大変です。
それぞれの締め切りを管理しながら進めていかなければなりません。
締め切りがずっと変わらなければそこまで問題にはならないかもしれませんが、実際は状況に応じて早まったり遅くなってもよかったりと変動があるはずです。
それをその都度変えていたらそれだけで一苦労です。とはいえ「全部を管理するのは大変だから」と放置してしまっては元の木阿弥です。
つまり、タスクを分割してそれを管理すること自体、それだけで立派な1つのタスクだということです。困ったことにさらにタスクの数が増えてしまうことになってしまいます。
タスク管理に時間を費やしているときはなんとなく「仕事をしている感じ」が得られるのですが、
悲しいことに、実際のところはやるべきタスクは1ミリも進んでいないんですよね。。
まだ時間があるから後回し
子タスクそれぞれに締め切りを設けていると「まだ子タスク①の締切まで時間があるから今はやらなくてもいいや」という風に後回ししがちになってしまうこともあります。
あるいは、それぞれに締め切りを設けているはずなのに、頭の中では「子タスク③は実際はもう少し遅らせても大丈夫だから…」という不思議な辻褄合わせ(?)をしてしまうこともあったりすると思います。
半分無意識にこういうことをやってしまうのですが、これは頭の中で(自分に都合のいいように)子タスクの大きさを大きくしたり小さくしたりしているのかもしれません。
必要な日数を5日間設けているけど、本当はもっと単純なタスクで小さいはずだから、頑張れば1日くらいで終わるだろう、という具合に。
でも、それはあくまで頭の中での想像です。
実際に手をつけてみると、思ったよりもやることが多かったり、他の人に確認したりする必要があったりして、想定よりも長く時間がかかってしまう、という状態に陥ってしまうことも往々にしてあるのではないかと思います。
タスクを細かく分割するには子タスクを具体的で正確に知る必要があるわけですが、手をつけない以上その具体性には限界があるというジレンマがあるわけですね。
タスクは分割するのではなく「切り出す」
塊のままだと手がつけにくく、分割するとそれはそれで管理が大変。
子タスクが思ったよりも大きかった問題。
どうすればいいのでしょうか。
僕としては、タスクを分解することと分解しないことの両方をいいとこ取りするのがちょうどいいのではないかと思っています。
つまり、タスクを細かく分割するのではなく、ちょこっとだけ「切り出す」ということです。
イメージとしては、大きなボンレスハムや塊のバターを、食べる分、使う分だけを薄くきってすぐに消費しちゃう感じ。
CMで出てくるような映像をイメージしてもらえるといいんじゃないかと思います。
まずは大きな一部を切り出して、今すぐにできそうなことからちょっとでも進める。
最初から全部を食べようとする計画を立てるのではなく、まずはちょっと切り出して味見をする。
美味しいものが手に入ったとして、もったいないからと言ってちょっとずつ食べているつもりでも、毎日少しずつ食べていたらいつの間にかほぼなくなっていることがありますよね。
それに似た感じで、毎日タスクを少しずつ切り出して少しずつこなしていくことを繰り返していると、仕事はいつの間にか片付いていたりします。
こうすると、上で述べたようなタスクを細かく分割することの落とし穴にハマるのを避けられます。
タスクを小さく切り出して、切り出した分をまずはしっかりと実行する。切り出してまもないうちにさっと手をつけてしまえば、小さく切り出した分の締め切りは管理する必要がありません。
最終的に「親タスク」の締め切りに間に合いさえすればいいわけです。そして面白いことに、毎日少しずつ切り出しながら手をつけていれば「行き当たりぴったり」に締め切り直前に終わらせられます。
また、ほんの少しでもいいので切り出して実行していくことが習慣になると、少しずつでも着実に前に進んでいきます。後回しとは無縁になります。
後回しとは無縁になるので「これ意外と時間がかかるじゃん」という状況を避けやすくなります。
というよりは、まだ時間がある早いうちに「意外と時間がかかること」に出会えることになるので、焦ることなく落ち着いてそのことに向き合える、と表現する方が正しいかもしれません。
タスクを小さく切り出して実行していくやり方は、タスクを細かく分解して管理するよりずっと簡単で物事も進んでいきやすくなります。
最初から細かく分割しておくのではなく、まずは小さく切り出して実行する。このことだけ覚えて帰ってもらえると嬉しいです。
実行から始める
冒頭で述べたように、よく言われる「タスク管理」の実体は「タスク整理」だったりします。
もちろん、そのやり方を否定するつもりはありません。頭の中が整理されて、間に合わないかもしれない、どうしよう、という不安が解消されるのはタスク管理の大きなメリットです。
しかし、タスク管理はなかなかその実行まで後押ししてくれないのもまた事実でしょう。
整理した時に不安が解消されるのは事実かもしれませんが、それによってまた新しい不安や焦りが生まれてしまうことは見逃してはならない気がします。
ここまで述べてきたような落とし穴があるあるなのは、タスクを整理したあとの実行は別問題で、実行のやり方は各人に委ねられてしまうからだと思います。そして、実行こそなかなか難しい。
だから、まずは小さく実行することに重きをおく。
「整理→実行」から「実行→整理」と順番をひっくり返す。
そのために、まずはタスクを小さく切り出して、始められることから早速手をつけてしまう。
そうすると、タスク管理で困っていたことがいつの間にか解消されているかもしれません。
もしもしかめよ かめりんでした。
本記事はタスクシュート協会メンバーが運営する「ユタカジン」への寄稿記事です。
ユタカジンとは「自分らしい時間的豊かさを追求する」をテーマとして、時間や習慣、タスクシュートなどなどにまつわるお話が連載されていくマガジンです。
自分なりの豊かな時間の使い方に関するヒントがたくさん詰まっています。
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