〈速報〉ネクタイを殺人未遂で逮捕
お金のない私はネクタイとシェアルームをしていた。間取りは8LDK。その部屋を半分に分けて生活している時の出来事。それは暑い夏の事だった。
「今日も締めないのね。」
ネクタイが突然悲しそうに言うから私は驚いた。確かに私はここ最近暑くてネクタイをしていない。ただ、ネクタイも何も言わなかったため締めなくても何も思わないのだろうと私は考えていた。だが違ったみたいだ。ネクタイは長く私が付けていないのを悩み、そして毎晩泣いていたみたいだ。「明日は締めていこう。」そう言って私は家を出た。
次の日になって私は久方ぶりにネクタイを締め、鏡で形を整え、そしてネクタイピンをした。久しぶりに締められるネクタイも「久しぶりだから張り切っちゃお!」と上機嫌に化粧をしていた。いつもよりも厚化粧で。
会社につき仕事を初めて4時間程が経った頃、昼休みになったため私は蕎麦を食べに出かけようとした。今日は今年最高気温の34度もあるらしい。地球温暖化が進んでいるなと毎年夏が来る度に感じる。
「ネクタイは暑いから外してラフに行こっと」
私はネクタイを外した。
蕎麦を食べ終わった私は会社に戻り、そしてまたネクタイを締めた。その時にネクタイが
「なんで一緒に行ってくれないのよ!!」
ネクタイは怒っていた。
(私)
「暑い時に大きい声をださないでくれ。頭に響く。」
(ネクタイ)
「なんなのよ!うちが蕎麦をゆらゆらしながら見るの好きなの知ってるじゃん!!??なんで暑いからって外していくのさ!アンタバカァ?」
(私)
「暑いから仕方ないじゃないか!俺だって人間だぞ!暑さを感じないネクタイとは違うんだよ」
私はハッとした。ネクタイ扱いされるのが死ぬほど嫌いな彼女に、言ってはいけない言葉だった。ネクタイは「あら、そう」
その一言だけだった。
家から帰るや否やすぐに謝った。ネクタイは許した様子だったものの、心の中では軽蔑していたと思う。そしてその日はもう寝た。
朝起きて私はネクタイをした。その時だった。ネクタイが私の事を殺そうとしてきたのである。
「ぐぐ、苦じい。」
私は必死の思いでネクタイを解いて外へ逃げた。すぐに警察を呼んだ。警察が来てネクタイは逮捕されたが、抵抗する気はなさそうだった。
「あなたが悪いのよ」
そう、私はネクタイを締めたのではなくネクタイに絞められたのである。
おわり
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