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聖徳太子の三経義疏の価値


原文のテキストも大切ですが、中村元さんの監修による現代訳も重宝です。

さて、議論されるのは、三経義疏です。義疏、ぎしょ、とは注釈のこと。これが、聖徳太子の完全なオリジナルか否か。

中村先生は、思想史的にはどちらでも、その価値は変わらないという。聖徳太子が、テキストとして用いた中国の書であるとしても、日本人の仏教理解の記録としての価値はある。

としても、中国仏教にはない思想もたしかに見いだされる。

三経典の選択に意味がある。

推古女帝にあわせた、女性を主人公とする、勝鬘経。

自らが在俗の立場であるから、在俗信者が仏弟子たちを導く、維摩経。

日本仏教の主流経典となる壮大な世界を描く、法華経。


維摩経義疏の、乞食に布施するのも、如来に布施するのも、同じである、という一切平等の思想は、とりわけ大切です。

男女貴賤、差別なき敬愛と救済。四天王寺四箇院制に具現化する、医療と福祉、そのための学問、という聖徳太子の思想が、三経典の選択に示されています。


亀井水の源と語られてゆく無熱池も、勝鬘経義疏一乗章に語られています。四天王寺の龍神様は、ヒマラヤや崑崙山脈の西方の、無熱龍とつながっている。また、その水は世界の文明のみなもととも語られ、壮大な宇宙的イマジネーションを我々に教えてくれます。

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