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想い出は温かいスープのように。(超短編小説#20)

夕方の恵比寿駅はにぎやかで
春が来たように華やかだった。

気温が20℃近くまで上がった今日は
心の体温も上がっているように感じる。


改札を出て飲食店が
軒を連ねる通りを抜ける。


恵比寿西一丁目の交差点を斜め左に進むと
案内にあったカフェはすぐだった。


白い壁に木目調の床。
オシャレという言葉が溶けるほどに
浸透しそうな場所だった。


会話を楽しむ人々を抜けると
友人たちがすでに1つのテーブルを埋めていた。


「お疲れー。」「元気?」
そんな言葉を浴びると
あのときの自分たちに戻ったような
懐かしくも嬉しい
そんな気持ちに包まれる。


「痩せた?」「彼女は?」
そんないつもと同じ聞き飽きたセリフも
あーここにいていいんだなと
お腹が温かくなって安心する。


きっと昔からの友人との空間は
温かいスープのように
安心を与えてくれ
まだまだ終われないという
なにかに対する勇気を与えてくれる。



「みなさま長らくお待たせしました。
会場後方にご注目ください。」


これから始まる華やかなお祝いも
また新しい想い出になる。



「すいません、写真お願いできますか?」



客観的に見れば全然若くない写真も
映っている本人たちは何らむかしと変わらず
同じ顔をしている。



この想い出もまた
温かいスープになっていく。





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