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ポケットにある会いたい。(超短編小説#18)

久しぶりにLINEをしてみたら
すぐ既読になったけれど
土曜日と日曜日を挟んで
月曜日にも返信はなくて
火曜日の夜にやっと返ってきた。


週末はなにをしていたのだろう。
誰と過ごしていたのだろう。


返信のこない不安をかき消す喜びが
あっという間にそんな不安に再び上塗りされて
胸のなかでザワザワと音がする。


いつ会えるのかな。


ポケットに手を入れると
週末は出張でまた忙しいんだ
とポケットに手を入れた姿を
見られたようなメッセージがくる。


今日もポケットから
『会いたい』を出させなかった。


そっか。分かった。


ポケットで『会いたい』から手を離すと
さっきよりもポケットが重たく感じた。


嫌われたくないという
自分のための自分の気持ち
『頑張ってね。』を
右手親指がサクサク打ち込んでいく。


送ったメッセージに
『既読』という二文字のカギがかけられると
こちらからまたしばらく
開けられなくなってしまった。



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