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かめれもんのうたまとめ

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これまでnoteに公開してきた詩群をここに紹介しておきます。
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2019年7月の記事一覧

ひょっとこの お面被った男の子 炎天下 隠しカメラを飛び越えて 砂ぼこりに星屑 映画館のとある脇役男性B のように 何かを求めて立ち去った しかしこれはスクリーン外の出来事 物語はそこで途切れている やがて冬空の下 隠しカメラが捉える一人 女性Aが語り出す 沈黙の白銀 揺れている

僕・私は、否定されて その後その後 かもめは高く舞い上がり 潮風のナイフが傷刻み ほとばしる血 欲しい新しい海が やんちゃな若者たちが崖に 立ちすくみその身を 投げる 僕・私は 息を呑む 静かに 加速度的に海の底へ その 瞬間 かもめの鳴き声が 高く 高く 永遠の果て 消滅して

世界の中にいると わたしたちが産まれたとき 気づきましたか 最初から世界はそこに あったのです 夏の大空が窓の外に ひろがっています 自然の中に広々と あなたが産まれたとき あなたの産まれた世界を 目を開けて ありのままに見つめることを だれかと 約束したような 気がするのです

美しい勘違いをした あれはバナナの木じゃないんだよ どう見てもバナナにしか 見えないよ そういう夢もあったのだ 幼き頃あの木にはバナナが芳醇 たわわに実ると一心不乱に 信じていたとき周りの大人たちの 声は爽やかな夏の風へと変化した あれはバナナの木 違いますなんて悲しい夢だな

幻想的な世界で 自らの死を厳しく無視する間 自然は自らの詩をのびのびと 歌っていることだろう 大夕焼け あれは虫が哀しみに暮れた色では ないのだ決して それを聴くとき 人はそれに何を求める? 感じるままに聴いて感じるままに 美しいと叫びたくなる哀しみに 暮れた藍色の空を見上げて