『14』をつけた魔法使い#11
パスを出さなかったケンゴのところに、
試合中なのに、ジュニが走って来て言いました。
「なんで前にパスを出さない!」
「だって、相手の選手がいたじゃないか。」
二人はそれぞれの国の言葉で言い合いました。
試合中だったので通訳の人が近くにいません。
通訳というのは、
違う国の人同士の話を分かりやすくしてくれる人です。
「前にパスを出さないと点は取れない!試合に勝てないぞ!」
強い調子で言うジュニに、
ケンゴも強い調子で言いました。
「分かったよ!どうなっても知らないぞ!」
ケンゴは気持ちを決めていました。
今度ジュニと目が合ったら、どんな時でもパスを出してやる。
そして、試合時間が少なくなっていた時、
ケンゴの足元にボールが来ました。
ケンゴはジュニの姿を探しました。
ジュニは、やはり相手の選手に囲まれていましたが、
ケンゴの事を見ていました。
「本当にどうなっても知らないぞ!」
ケンゴは前に強くボールを蹴り出しました。
ボールはどの選手にさわる事なく、
前に飛んで行きました。
ケンゴにはボールとジュニの姿が見えていました。
ジュニは相手の選手が邪魔をして動けないようでした。
でも、ジュニはケンゴがパスを出した瞬間、
相手の選手の間から走り出していたのです。
ジュニはあっという間に、ボールに追いつきました。
相手のゴールキーパーも慌てて出てきます。
でも、ジュニの方が早くボールに触りました。
そして、ボールがネットを揺らしました。
試合を観ていた人の誰もが、黙っていました。
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