見出し画像

花弁が欠けても薔薇

 あるところに美しい女がいた。
 そうあれと生まれ、その願い通りに美しくに育った。
 しかし、誰もそれを喜ばなかった。
 女には左足がなかったからだ。
 女の周囲の人間は女が美しすぎたが故に、左足が欠けていることが許されざる汚点に思えたのだ。
 いっそ、醜くあったなら。
 身勝手な言葉が女を蝕むべく襲いかかった。
 しかし、女は。
 女はそのようなことは歯牙にもかけなかった。
 どうして、花が、人間の都合を考えるだろうか?
 花は美しく咲き誇るのだ。
 たとえそれを誰も望まなくても。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?