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【F1】コラム:明暗分かれた2強とお粗末なフェラーリ〈2021年第5戦モナコGP〉

ルクレールの悲運では済まされないチームエラーを犯したフェラーリ

第78回2021年第5戦モナコGP。これまで様々なドラマを生んできた伝統のドライバーズコースが2年ぶりに帰ってきました。そんなモナコで光る速さを見せたのがフェラーリ勢でした。特にシャルル・ルクレールにとっては地元レースです。しかしこれまで一度も完走したことなく、前回もチームのミスで予選Q1落ちを喫し、その結果決勝でアグレッシブに行かざるを得なくなって接触してリタイアとなっていました。そして今回も自身のクラッシュとチームの点検ミスが重なって決勝のグリッドに着くことさえも叶いませんでした。せっかくのポールポジションスタートで地元のファンも、そしてフェラーリファンも優勝を期待していたはずです。しかしギアボックス交換をせず、当たっていなかった左リアのドライブシャフトの損傷を見つけられなかったチームの責任はあまりに重いですし、長らく王者から遠ざかっている原因の一端を見た気がします。2台で上位入賞してコンストラクターズランキング3位浮上の機会だっただけに、あまりにもお粗末な結末でした。

これでマックス・フェルスタッペンにとってはモナコ初制覇とチャンピオンシップ争いにおいて最高の環境が整いました。ルイス・ハミルトンが予選7位に沈んだことでドライバーズランキングでも逆転の可能性が生まれたわけです。抜けないモナコにおいてスタート直後の1コーナーを首位で通過すれば、優勝の可能性はグッと高まります。ルクレールが不在のグリッドでレコードライン上奇数列3番手のバルテリ・ボッタスの方が蹴り出しはよかったものの、やはり150m加速で逆転は難しい。フェルスタッペンがホールショットを決めたことで勝利はほぼ手中にしました。

アンダーカット戦略失敗のメルセデス

珍しくクラッシュひとつなく、結果的には今季初めてSC(セーフティーカー)、VSC(ヴァーチャルセーフティーカー)が出ることなく終わりましたが、基本的にこのコースで順位変動が起こるタイミングはピットストップです。通常のコースでは前走車よりも早く新しいタイヤに履き替えて飛ばし、前走車のピットストップで順位を上げるアンダーカットがセオリーです。ところが今回はF2のレースを見ていてもタイヤの温まりに時間がかかってしまうんです。こうなると逆にピットストップを遅らせるオーバーカットのほうが有利になります。

上位勢で最初にピットインしたのはハミルトンでした。前を走るピエール・ガスリー(アルファタウリ)に対してアンダーカットを狙ったのですが、選んだのは最も硬いハードタイヤでした。メルセデス勢は今週末タイヤの熱入れにかなり苦労していましたので、アウトラップでタイヤを温められずにペースを上げられなかったのです。結果、翌周ピットインしたガスリーを抜けず、さらにピットを遅らせていたセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)とセルジオ・ペレス(レッドブル)にもオーバーカットされて先行を許してしまいました。スペインGPでは見事な戦略で勝利を飾ったメルセデスにしては珍しいミスでしたね。ハミルトンはピットインを遅らせることを主張したようですが、チームがピットインを指示してそれに従った結果順位を落とすことになりました。さらにメルセデスはボッタスのピットインでも右フロントタイヤが外れずにタイヤ交換ができないトラブルが発生。ボッタスはリタイアせざるを得ませんでした。今週末のメルセデスは最後まで踏んだり蹴ったりでしたね。

対照的にレッドブルはボッタスがいなくなったことで、フェルスタッペンにはさらに楽な展開となりました。ペレスもオーバーカットを成功させて予選9位から4位入賞。見事コンストラクターズランキングでも首位浮上に貢献してみせました。ライバルが自滅したのを横目に、今季2勝目&モナコ初勝利のフェルスタッペンはドライバーズランキングで初めて首位に浮上しました。初めて追われる立場となり次のグランプリウィークを迎えるアゼルバイジャンで彼がどんなレースを見せるのか。コース特性としてもレッドブルには合うサーキットと予想されるだけに自身初の連勝を狙ってハミルトンとの差を拡げてほしいですね。

安定感抜群のノリス、光ったベッテルの好走

ルクレールを失ったフェラーリですが、チームメイトのカルロス・サインツJr.が堅実に走り抜いて2位に入ったのはひとまず良かったですね。特別カラーリングのマクラーレンもランド・ノリスが3位に入り今季2度目の表彰台を獲得しました。マシンはコースに決して合っているとは言えなかったと思いますが、それでも予選で上位につけたことでフェラーリにコンストラクターズ3位の座を明け渡すことを阻止したのはさすがノリスですね。それからベッテルにも触れないわけにはいきません。ここまでチームメイトのランス・ストロールに後れをとっていましたが、モナコでは2勝している実力を示して移籍後初入賞となる5位を手に入れました。アストンマーティンは2台ともオーバーカットを成功させているのでチームの立てた戦略が素晴らしかったのですが、それでもドライバーがそれをきっちりと実行しなければ結果はついてきません。マシンの実力では6、7番目のアストンマーティンですし、今回のベッテルのドライバー・オブ・ザ・デイは納得の選出だと思います。また、週末を通して速さを見せたアントニオ・ジョビナッツィ(アルファロメオ)もマシンの実力以上の結果を出したのも印象的でした。


画像/動画:Formula 1 Official Twitter & Formula 1 Official Instagram

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