「子どもからの介護」が受けられないのは悪いこと?人生の最後に「こうあるべき」で苦しまないために。
「孤独なのは、自業自得よ。若いときに子育てもせず、自由気ままに遊んでいたのだから」
これは、90代の女性に向けて、90代の同世代女性が向けた言葉。
誰しも必ず結婚するわけではないし、結婚したとしても、子どもを産むとは限りません。
「子どもや家族に介護をしてもらえない」のは、悪いこと何でしょうか?
子どもを産まず、働き続けた女性
冒頭の女性は結婚した後に病気をしたため、「子どもが産めなかったのよ」とわたしに話してくれました。
今から60年前の1960年代。まわりの同世代が育児や家事に専念する30代の時期を、彼女はフルタイムで仕事をし続け、定年退職するまで働きました。仕事の付き合いでよく、ゴルフや旅行にも出かけていたそうです。
夫が他界した後、自宅を売却。高齢者マンション(サービス付き高齢者向け住宅)に移り住みました。「まわりには迷惑をかけたくない」と、既にお墓も整理しています。
持ち前の明るさが彼女のチャームポイント。住人を部屋に呼んでは、茶話会を開いて楽しく過ごされています。
ただ、90代ですので、年齢を重ねるごとに当時の仕事仲間や家族親戚との交流も少なくなっていきます。免許証の返納もして、足腰も弱くなると外出も思うようにできなくなり、“孤独”だと感じることは少なからずあるようです。
そんな気持ちを、同じマンション住人へ話したときでしょうか。
若いときに子育てもせず遊び呆けていて、「孤独なのは、自業自得だ」と、同世代の女性から言われたそうです。
一人の人として自立し、働き続けた彼女の女性としての生き方は、当時まだ珍しかったかもしれません。ですが、自分で決めた人生の最後の過ごし方に対してまで「こうあるべき」という考えに苦しめられるなんて...と、なんだかとても悲しい気持ちになりました。
人生の最後を、誰とどう過ごすか。
わたし自身も振り返れば、「こうあるべき」の言葉を投げかけられたことは何度もありました。(まったく気にしない性格ですけどね)
二人の子どもを年少から預けたときは、「せめて年中からにしなさいよ」と親戚中から批判されました。
起業したときは「旦那さんの扶養の中で生活すれば幸せだっただろうに」と50代の女性から言われました。(この方とは、もう二度と会わないと心に決めています。笑)
世の中は代わりつつあるのに、「どうして、“こうあるべき”を押し付けるんだろう」という違和感をずっと感じていました。
つい先日、「おしん」や「渡る世間は鬼ばかり」などを手がけた脚本家の橋田 壽賀子さんがお亡くなりになりました。
誰にも迷惑をかけず、自分で決めた大往生だったと報じられていましたが、生前のインタビューでは、“終活”についてこう答えていました。
「私が積極的に”終活”に取り組むようになったのは、私は天涯孤独で、跡継ぎもいませんので。『立つ鳥跡を濁さず』で、私の死後、みなさんにご迷惑をかけたくないからです。
主人がなくなったときに、一人で生きるためにはどうしたらいいか考えました。『それにはまずお金だ』と思って、そこから一生懸命働きました。いま、うちには交代制ですけど、お手伝いさんが6人います。このほうが親族に面倒をみてもらうよりずっと心豊かでいられるし、私はいま、理想的な暮らしをしていると思いますね」
引用:https://jisin.jp/entertainment/entertainment-news/1612067/
多くの人は、ここまで周到に準備をすることは難しいかもしれません。
ですが、「最後は家族と過ごす。介護は家族がすべき」ではなく、人生の最後を誰とどう過ごすかは自由。その人自身の選択が尊重されてほしいと思います。
女性を苦しめる女性
子どもがいない高齢女性に対して、「老後の生活は大丈夫?」と忠告してくるのは、同性の女性たち。ジェンダー問題について盛り上がっているけれど、実は女性を苦しめているのは、女性であったりする。
自分たちが育児で忙しかった時期に、仕事や趣味などを優先できた。そのことについて、嫉妬もあるのかもしれません。
子どもがいない高齢女性は、これからもっと当たり前になります。
「結婚しない」という選択をする人
「結婚しても、子どもは産まない」という選択をする人
子どもがいたとしても、お互いに遠距離に住んでいれば、「老後はひとり」という状況も決して珍しくはなくなるはずです。
冒頭の彼女は、「わたしに子どもがいなくて遊び呆けていたと言っても、あなたの子どもも県外にいて、一人ぼっちでしょ?」とも言っていました。(打ち返すなんて、なんとたくましい)
「こうあるべき」なんてない
今の90代の女性が30代、40代だった頃と比べると、家族の形や人生の終え方の選択肢はずいぶんと広がったんじゃないかと思います。
でも、介護はまだまだ「これは家族がすべきだよね」と考える風潮が根強くあると感じています。
「介護は家族がするべき」と考えていると、家族からの介護を受けられない人は「罰当たりだ、自業自得だ」と、悲しいまなざしを向けてしまうことにもつながるのではないでしょうか。
あなたに子どもがいたとしても、その子どもが結婚するか、子どもを産むかも分からない。「こうあるべき」の選択肢に縛られる世の中では、「自業自得だ」という言葉は、あなたの子ども、孫、そのまた子ども...にまで受け継がれてしまいます。
嫁と姑、地域の中、職場の中。世代によって生きた時代が異なるので、何を大事にするか、どんな生き方が一般的だったかは違って当たり前です。選択肢が増えつつある今、変わる必要があるのはわたしたちの価値観や考え方。
「こうあるべき」なんてない。
あなたの生きたい最後で、いいじゃないか。
わたしは自分の人生を生きたいし、あなたの選択肢が尊重されるように、日々できることに向き合っていきます。
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